赤い口紅、オーガニック…。憧れと自意識の間で揺れ動く女心とは? 『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』

恋愛・結婚

公開日:2016/6/29


『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(ジェーン・スー/文藝春秋)

 日本人でありながらカタカナ名を名乗り、いつの間にかラジオ・雑誌を中心に大活躍しているコラムニストのジェーン・スー。『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)で未婚女性の心をつかみ、TBSラジオ『ジェーン・スー生活は踊る』でラジオリスナーの味方となった彼女が、新刊『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』(ジェーン・スー/文藝春秋)
を上梓した。

自意識と憧れの間で揺れ動く女心

 雑誌やウェブニュースに溢れる「愛されメイク」「モテ服」の文字。休日の情報番組でも「トレンドアイテムはコレ!」と、消費社会に従順な女子を作りあげようとする情報が常に流れてくる。そこで提案される紋切り型の「女子」像に違和感を覚えても、やっぱり愛されたいし、憧れる気持ちがないわけでもない。ジェーン・スーは、そんな戸惑う女子の肩を叩き「気持ちわかるよ」と言わんばかりに、もやもやした気持ちを言語化する。

「記号的な女性性を他人から押し着せられたら猛反発するくせに、自分から纏おうとした記号的な色に拒絶されると気持ちが落ち込む。(中略)たかが赤い口紅ひとつに一喜一憂し過ぎなのもわかってる。でも……」

 かつて今井美樹に憧れ、赤い口紅を手にとるも挫折。しかし化粧品会社が毎年提案する赤に今年こそはと挑み続け、ついに自分なりの付き合い方を見つけるまでを綴る「赤い口紅」。また「オーガニック」の章では、上質なライフスタイルを表現するためのファッションに過ぎないと言い切ってみたものの、オーガニックカフェの新鮮野菜の美味しさに撃沈。「いまさらどのツラ下げて輪の中に入っていけばいいのかわかりません」と自意識との間で葛藤する。

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 面倒くさい女というなかれ。女性たちは些細なことで葛藤するほどに、自らを女性たらしめる重い「甲冑」を毎日身にまとっているのだ。

真木蔵人の前妻HARUKOから学ぶこと

“あるある”満載の本書の中で、とくに注目したいのは「山田明子について」の章だ。この名前にピンとこないという人も少なくないだろう。彼女は真木蔵人と結婚し真木明子として活動していた元JJモデルの山田明子(離婚し、現在はHARUKO名義)。お嬢様モデルだった彼女が人生の紆余曲折を経験し、変化したものとそれによって得た輝きについて、同世代のジェーンが語る。また「トップ・オブ・ザ・女子」では華原朋美について考察。同世代として20年近く見守った彼女たちの生き様から、学び共感することは何か。輝く同級生を憧れ混じりに、でも冷静に眺めるジェーン・スーの視線には、シスターフッドのような戦い続ける同志への賛辞も込められている。

文=松田美保