中川翔子「愛を与えるのも命を奪うのも同じ人間」空前の猫ブームに一石を投じる猫文学の新たな傑作誕生

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/14

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 公園で産まれた6匹のねことその家族が奏でる“命”の物語『ねこのおうち』が、2016年6月17日(金)に発売された。

 猫との生活を通じて、生きることの哀しみ、そしてきらめきを描きながらも、昨今の猫ブームに加熱する社会に一石を投じる同作。ブームの裏側で人間の手により捨てられ、その命を失うたくさんの猫たち…。そんな猫たちと幸運にも出会った人々との間で奏でられる命の物語は、読後、私たちの胸にこれまでと違った「猫との世界」を広げてくれるはず。

執筆開始30周年を迎えた芥川賞作家が正面から「命」と向き合った小説『ねこのおうち』。猫好きは必読の感動作に対して、猫好きで有名なタレント・中川翔子からもコメントが届いている。

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私は、物心つく頃から今も、沢山の猫に囲まれ共に生きています。『ねこのおうち』の中でおばあさんが病気になるまで愛され飼われていたニーコは、雑種だという理由で公園に捨てられたキジ虎です。ある理由でおばあさんとも別れることになったニーコは、子猫たちを産んだあと、公園に撒かれた毒団子を食べて苦しみながら息絶えます。 残され、ノラとなった6匹の子猫たちと、彼らと出会った人々との心の触れ合いと再生……。哀しみの中に救いと愛を、柳美里さんは描かれました。愛を与えるのも、命を奪うのも同じ人間。何度も読み返したい、大切な本に出会えたことに感謝して、これからも不幸なねこたちの「おうち」を見つけるお手伝いをしていきたいと思います。中川翔子

『ねこのおうち』あらすじ
生まれてすぐに、臍の尾がついたまま「ひかり公園」に捨てられたキジ虎猫のニーコ。幸運にもおばあさんに助けられ一緒に暮らすことになったニーコは、幸せな日々を送っていた。しかし、ニーコが生まれて三度目の春のこと。おばあさんが体調を崩し、突然の別れがやってくる。はじめてひとりで過ごすこととなった外の世界。そして、6 匹の子供の誕生。子育てに奔走するニーコだが、しかし……ある日、草むらに落ちていた肉団子を口にした後、突然の激しい痛みが襲ったかと思うと、二度と子供たちのもとへ戻ることはできなかった。果たして、残された子猫たちの運命は……。

 おばあさん、小学生の留香と姉のかすみ、フリーライターのひかる、留香の同級生の正樹、今井さんと奥さん、カモメ動物病院の港先生、捨て猫の世話をする田中さん―残された6匹(ぼんぼり尾の茶虎、キジ猫、カギ尻尾の茶白、真っ白な長毛、真っ黒な長毛、サビの長毛)が、拾われ、触れ合う人々と奏でる命の物語が、今、幕を開ける!

『ねこのおうち』に登場する猫たち

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ニーコ。短毛のキジ虎。6匹のねこのお母さん。ひかり公園に捨てられる。

~ひかり公園で産まれた6匹のねこたち~

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スワン。真っ白な長毛。小学生の留香と姉のかすみの家族になる。

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サンタ。ぼんぼり尾の茶虎。小学生の正樹とお母さんの家族になる。

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アルミ。サビ色の長毛。フリーライター光の家族になる。

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ゲンゴロウ。真っ黒な長毛。今井さん夫妻の家族になる。

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ラテ。カギ尻尾の茶白。ゲンゴロウと一緒に今井さん夫妻の家族になる。

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母ねこにそっくりな短毛のキジ虎。ひかり公園にいる。

■『ねこのおうち
著:柳美里
ブックデザイン:鈴木成一デザイン室
イラスト:千海博美
価格:1,500円(+税)
発売日:2016年6月17日(金)
出版社:河出書房新社

柳美里(ゆう・みり)
1968年生まれ。高校中退後、東由多加率いる「東京キッドブラザース」に入団。役者、演出助手を経て、86年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。93年『魚の祭』で岸田國士戯曲賞を最年少で受賞。97年『家族シネマ』で芥川賞を受賞。著書に『フルハウス』、『ゴールド ラッシュ』、『命』、『8月の果て』、『雨と夢のあとに』、『グッドバイ・ママ』、『自殺の国』、『JR上野駅公園口』他多数。

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