知っているようで知らなかった、日本の縁起物「招き猫」のヒミツ

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/14


『招き猫百科』(日本招猫倶楽部:編集/インプレス)

昨今の猫ブームで招き猫も注目されているようだ。しかし、招き猫が生まれた歴史的な背景は知らないという人も多いだろう。招き猫は表情が1匹1匹違うのはもちろん、上げている手 や持ち物も違う。色の違いでご利益に違いがあるのも興味深い点だ。そこで、奥が深い招き猫のことをわかりやすく解説してくれる本『招き猫百科』(日本招猫倶楽部:編集/インプレス)を紹介する。

昔から言われていた「猫が福を招く」

全国各地の郷土玩具にもなっている招き猫が現在のような形になったのは江戸時代末期。浅草の今戸焼の「丸〆猫」が元祖だと言われている。ただし、浅草寺以外にも豪徳寺や西方寺など招き猫伝説が残る寺社は数多く 、本当のルーツがどこなのかははっきりしていない。しかも、現在のような招き猫の形になるずっと前から、猫が福やお客を呼ぶという言い伝えは全国各地であった。古くは9世紀ごろの中国の古典『西陽雑俎』に「猫洗面過耳、則客至」つまり「猫が顔を洗って、その手が耳より高い位置に上がるとお客が来る」という記載が見られる。前足を高く上げた猫が幸運を呼ぶという話はかなり前からあったことがよくわかる。

招き猫は右利きと左利きがいる?

招き猫には見た目だけでもかなり違うものがたくさんある。右手を上げて いるものと左手を上げているもの、手を高く上げているものと低く控えめに上げているもの、前垂れのあるものと鈴だけのもの、小判を持っているものと持っていないものなどパッと見ただけでもかなり違う。一般的に右手を上げているものはお金を招き、左手を上げているものは人を招くとされていて、手を高く上げているものほど大きな福を手繰り寄せられるといわれている。そのため、「人もお金も両方とも招きたい」と欲張って両手を高く上げている招き猫も作られているが、「お手上げ」という意味で縁起が悪いともいわれる。

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また、小判を持っている招き猫の場合、抱えている小判の金額が昔と比べるとかなり大きくなっている。「千両」「万両」だったものがいつの間にか「百万両」「千万両」となり、ついには「億万両」にまで跳ね上がっている。猫に小判のことわざから来ているのだろうが、猫は小判の価値がわからないのだから、猫に持たせる金額はあまり欲張らない方がよいかもしれない。

招き猫にはいろいろなご利益がある!

かつては白と黒ぐらいしかなかった招き猫も、風水ブームに乗ってカラフルになった。そして、それぞれの色でご利益が決められている。白は「開運招福」、黒は「厄除安全」、金色と黄色はどちらも「金運」、赤は「健康長寿」、ピンクは「恋愛成就」というのだが、他にも「家内安全」や「交通安全」、「子孫繁栄」「無病息災」「芸道精進」「道中安穏」など、昔ながらの白い招き猫にはさまざまなご利益があるとされている。ルーツとなった「丸〆猫」が民間信仰の対象だったためかもしれないが、どんな四字熟語も当てはまるのではないかと思うほどいろいろなご利益を持っている万能お守りのような猫なのだ。

招き猫は奥が深い!

全国各地の郷土玩具として片方の前足を上げた猫の土人形や張子人形があるのだが、今では、さまざまな素材や形、表情のものが多く作られている。それは、招き猫が信仰の対象というよりもアート作品として扱われることが多くなったからかもしれない。輸出用の工芸品として瀬戸焼や九谷焼の招き猫が作られるようになると、招き猫の色や形はかなり自由になり、外国人にも親しまれるようになった。「大事なことは見逃さない大きな目」と、「何事も聞き逃さない大きな耳」「お客さんやお金を招き入れる手」という3つの特徴さえあれば、どんな形をしていても今は招き猫として受け入れられるのかもしれない。

たくさんの招き猫の写真と解説がプレゼントにぴったり!

お祝いに招き猫をプレゼントするときには、この本も一緒にプレゼントするとよいかもしれない。たくさんのカラー写真が載っているから、見るだけでも楽しめるし、巻末には、日本語のほか、英語、中国語でも招き猫の特徴が説明されている。日本の縁起物として外国人にプレゼントすると喜ばれそうだ。

文=大石みずき