マッドな錬金術師が異世界で暴虐の限りを尽くす『ウロボロス・レコード』

マンガ・アニメ

2016/7/1


『ウロボロス・レコード』(山下湊/主婦の友社)

 現代日本から剣と魔法が支配する異世界へ転生した錬金術師の生き様と、その悪逆非道ぶりを描くダークファンタジー『ウロボロス・レコード』(山下湊/主婦の友社)の最新刊が発売された。

 本作の主人公トゥリウスの願いは一つ、不老不死を手に入れること。現代日本で死を迎え貴族の子どもに転生したトゥリウスは、死の恐怖をまざまざと経験したことで極度に死を恐れていた。そんな彼が没頭するのは不老不死の実現が可能かもしれないという錬金術。物心がつくとすぐさま研究を始め、奴隷を使って洗脳、解剖、改造といったあらゆる人体実験を繰り返していく。彼の研究と“殺戮”を支えるメイド姿の少女ユニもまた、錬金術をほどこされた奴隷だ。トゥリウスは彼女とともに、ユニのような高性能の『作品』を作っていき、『作品』の量産型である『製品』を揃え、自らの研究所を拡大していくのだった。

 一言で言えば、無慈悲で不気味な作品だ。物腰が柔らかく温和な主人公だが、人を殺すことや陥れることになんら躊躇がない。家族だろうと友人だろうと、自らの生存の前にはただの“駒”であるか“敵”であるのかの二択しかないのだ。彼の中に倫理などというものは存在せず、どこまでも残虐になれる。その描写もグロテスクで痛々しいものばかりだが、人を弄ぶ背徳感を味わってみたいという人にはまさにうってつけの作品ではないだろうか。

 さて、そんな本作の第3巻だが、冒頭にトゥリウスが登場したのち視点はエルフの里に切り替わる。その中心となるのが狩猟の得意なエルフの少女バーチェと、力はないが彼女の役に立ちたいと願う少年チャーガだ。二人は好意を寄せ合っているが、わずかな意見の相違ですれ違ってしまう。正直、この二人の描写だけを抜き取れば、エルフ世界の甘酸っぱい青春小説のようにも読めるのだが……まぁ、そうは問屋が卸さないわけで。淡い期待は一瞬にして崩れ去ってしまう。

 エルフの里に突如として現れたのは巨大なサイクロプス。その後も続々とエルフを狩る人外どもがなだれ込み、物語は一転してパニック小説に早変わりする。もちろんその元凶はトゥリウスなのだが、視点がエルフ側にあるため絶望感もひとしお。エルフを応援したくなりながらも、敵の活躍にも期待してしまうという複雑な感情を抱いてしまうはず。また、本シリーズではあまり見られなかったアクションシーンも本作ではたっぷり描かれるので、『作品』とエルフたちの派手な戦いぶりも堪能してほしい。

 もちろん、本作の目玉であるトゥリウスと『作品』たちの掛け合いも健在だ。忠実なメイドのユニのほか、蠱惑的なダークエルフのドライに饒舌なヴァンパイアのシャールなど、個性豊かな面々が漫才のような掛け合いをしながら暴虐の限りを尽くす。なんとも常軌を逸した世界だが、その狂気こそがゾクゾクするほど面白いのだ。

文=岩倉大輔