行き当たりばったりで「ワーホリでフランスに1年移住」を決めた、アラサー女子の顛末とは?

コミックエッセイ

更新日:2016/7/5


『フランスはとにっき』(藤田里奈/徳間書店)

 花の都・パリ――。オシャレで優雅なイメージを持つ、その街並みに憧れを持つ日本人女性は多いことだろう。けれど、そんな従来のイメージを根底から覆す、衝撃的で爆笑必至な本『フランスはとにっき』(藤田里奈/徳間書店)が登場した。本作は、千葉県で無職のアラサーニートをしていた藤田さんが、何の因果かフランス・パリへと渡り、1年間を過ごすことになった顛末をまとめた一冊。現在、「COMICリュウ」のwebページにて、毎週木曜日に更新中。一度にアップされるのは4~5ページと短いものの、非常に濃い内容からじわじわと人気が広がり、毎週木曜日を楽しみにしているファンが増えているという。

 就活も婚活もうまくいかず、「人生詰んでない?」と思った藤田さん。そんな彼女がなぜパリへと飛んだのか。その突拍子もない理由は、無料で公開されている第1話を読んでみてほしい。なんとなくハードルが高いように思われる海外移住だが、藤田さんの奮闘ぶりを見るにつけ、「もしかして自分でも行ける……!?」と勇気がもらえるかもしれない。

 本作が、よくあるフランスエッセイ本と圧倒的に異なる点。それは、藤田さんならではの“素直で正直な視点”によって描かれているところだろう。パリのオジサン、オバサンとの一悶着に憤慨したり、ルームメイト・チナツちゃんのやさしさに涙したり、やたらかわいらしい日本人医師に胸キュンしたり……。喜怒哀楽をそのまま表現しているため、まるでジェットコースタに乗っているかのような読み心地なのだ。しかも、藤田さんは、必要以上に自分を良く見せようとはしていない。失敗も挫折も悔しい思いも、そのすべてをさらけ出しているため、読者からすると非常に親しみが感じられる。たとえるならば、仲の良い友人が綴る旅日記を読んでいるかのような印象だ。だからこそ、藤田さんが少しずつ成長していく姿に励まされるし、応援もしたくなってしまう。

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 また、その絵柄のかわいさも注目すべき点だろう。理由は不明だが、藤田さん自身は“真っ白なはと”の姿で描かれているため、どんなに理不尽な目にあっているシーンも、コメディタッチなニュアンスに包まれており、気軽な気持ちで読むことができる。海外移住エッセイとしてはもちろん、純粋なギャグマンガとしても楽しめ、一粒で二度美味しい作品と言えそうだ。

 ちなみに、本作は書籍化にあたり、描きおろしエピソードが20ページも追加されている。Web連載をずっと追いかけていた人も、書籍を手に入れて損はない仕上がりだ。

 そして最後に、藤田さんからの宣伝マンガをお届けしよう。こちらからも、藤田さんのドタバタっぷりが伝わってくるはず。これを機に、一風変わったパリ移住エッセイを読んでみてほしい。もしかしたら、明日にでもすぐ、パリへと飛びたくなってしまうかも……!

文=五十嵐 大

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