「見つけてもらいたい」という欲求!? 東京に憧れる少女、葛藤の青春小説『ラジオラジオラジオ!』

文芸・カルチャー

2016/7/7

「ラジオの前のみなさん、そして、インターネットでこちらの放送をお聴きのみなさん、こんばんは。今週も始まりました、カナアンドトモの、ラジオラジオラジオ!」

ラジオラジオラジオ!』(加藤千恵/河出書房新社)は、高校三年生の華菜(かな)がパーソナリティーを務める地方ラジオ局の、オープニングコメントから始まる。

華菜は地方都市に住む、東京に憧れる女子高生だ。彼女は、フリーペーパーでラジオパーソナリティー募集の広告を見つけ、友人の智香(ともか)を誘い面接を受ける。合格した彼女たちは自分の日々感じたこと、考えていることを、誰が聴いているか分からない公共の電波に向けて、話している。

しかし、反応はほぼ、皆無。毎回募集しているお便りも来なければ、番組内で紹介している自分のHPへのアクセスもない。

華菜はそれに不満を覚えながらも、「いつか、誰かが自分を見つけてくれるかもしれない」と望みをかけて、自分なりに試行錯誤しながら、毎週のラジオを収録していた。

ある日、相棒の智香が「パーソナリティーを辞めたい」と言い出したことから、2人の未来は少しずつ食い違い始める。智香は「お休み」という形になり、暫くの間、一人でラジオの収録を行うことになった華菜。

だが、ある時、友人のアヤが彼氏と別れたという話題をラジオで取り上げたことで、華菜の「考え方」を変える事件が起こる。それは彼女の「水槽」を揺るがす、静かなる大事件だった。

本作はキラキラ青春小説ではない。もし、女子高生同士の輝くような友情小説が読みたいのなら、オススメはしない。けれど、きっと、本作は多くの人が求めている物語なのではないだろうか。

華菜は東京に憧れる少女だ。一刻も早く田舎を出て、テレビ局に勤めたいと考えている。ラジオのパーソナリティーを始めたのも、特にラジオが好きだからというわけではなく、東京でマスコミ関係の仕事に就きやすいよう、経験を積むためだった。

しかしだからといって、華菜は芸能人に憧れ、華々しい業界が大好きなミーハー女子というわけでもないように感じる。

彼女の根幹にあるのは「見つけてもらいたい」という欲求だ。

自分という存在を、誰かに、「本物の場所にいる本物の人に」認められたい。「何を」「どうやって」という具体的な考えすらない。ただ、東京に行けば、その願いが叶うような気持ちにさえなっている。彼女にとって東京は、無限の可能性が秘められ、地方都市に住む女子高生という「現状」より、ずっと現実的な世界なのだ。

華菜の行動は、読者の誰もが胸の奥に沈めた「諦めたこと」や「諦められないこと」をかき乱し、思い出させてくれる。

そんな華菜が、どのように変わっていくのか。大人になっていく少女の、その一歩をじんわりと感じることができる。切なさしみる、葛藤の青春小説だった。

文=雨野裾