「少ハリ」「ぜんハリ」プロデューサー・橋口いくよインタビュー!才色兼備の小説家が、男性アイドルグループをプロデュースすることになったわけ【前編】

芸能

2016/7/10

 作家・橋口いくよ氏が、ジャンルを超えて、八面六臂の活躍をみせている。
小説家、アニメの脚本・シリーズ構成、作詞家、フジテレビ『とくダネ!』のコメンテイター、ハワイのエッセイ、美容ブロガー、男性アイドルグループ・全日本愛$劇団『ZEN THE HOLLYWOOD』(ぜんにっぽんあいどるげきだん ぜんざはりうっど。以下、ぜんハリ)のプロデューサー。さらに、この7月には『ハリウッドファクトリー』を設立。社長に就任した。

 ダ・ヴィンチ連載を書籍化した『本当の仕事の作法』ほか2冊の書籍では、共著者で思想家・内田樹氏、精神科医・名越康文氏にも一目置かれる気鋭の作家でもあり、中森明菜の『北ウイング』ほか数々のヒット曲を手がけ『少年ハリウッド』の楽曲も多数手掛けている作曲家の林哲司氏からは、作詞家としての才能を絶賛される橋口いくよ。彼女にいま何が起こっているのか?

 橋口氏に、プロデューサーとして関わり、今現在ターニングポイントを迎えているというアイドル「ぜんハリ」を中心に、ロングインタビューでじっくり話を伺った。

中途半端な関わり方では、誰も本気にならない

 アイドルを題材に初めて哲学の領域まで踏み込んだと言われる『少年ハリウッド』という作品からは、小説、マンガ、舞台、アニメ、そしてZEN THE HOLLYWOOD(通称ぜんハリ)という男性アイドルグループまで誕生する展開で、大規模なメディアミックスとなっている。中でもアニメでは「少年ハリウッドはすべてのアニメを過去にした」「人類には早すぎたアニメ」とも言われている話題作だ。

 橋口氏は、その原作にとどまらず、シリーズ構成に脚本、歌になれば作詞をし、約1年で7タイトルをリリースしているアイドルユニット「ぜんハリ」のプロデューサーまで担当。『少年ハリウッド』プロジェクトを成功させるため、全力を注いできた。

――アニメ『少年ハリウッド』では、脚本、シリーズ構成、作詞を担当されましたが、アイドルユニット「ぜんハリ」のプロデュースは、具体的にどんなお仕事なのでしょうか。

橋口 物理的な部分から一部言えば、楽曲まわりなどですと、曲のイメージを固めてから作曲家の方々と共有したり、レコーディングに立ち会ってディレクションに加わったり、ダンスの先生との細かいやりとりなどですかね。

――かなり具体的にやられるとか。

橋口 そうですね。楽曲は、ある意味ぜんハリの根幹なので作曲家の方々や楽曲制作陣と直接お話ししたり、ダンスもとても大切な部分なので、ダンスの先生ともやりとりをしつつ「このあたりにはインドのクマリをイメージした振り付けを入れて欲しい」みたいな要望がある時は、クマリの写真を探してきてイメージを共有したり、そういうちょっとしたことでも細かくやりとりしながら具体的に詰めていきます。あとは、スタイリストさんやデザイナーさんと、たくさん話しながら、衣装やジャケットまわりの打ち合わせをします。ぜんハリは楽曲だけではなく、CDのパッケージにもすごくこだわっているので大切な作業です。クリエーターのみなさん、とても愛情を持って、ぜんハリに関わって下さっているので、彼らは、堂々とした笑顔でステージに立っていられるんですよね。

――ライブや撮影現場にも足を運ばれているんですよね。

橋口 はい。撮影や取材にもすべて立ち会っています。ライブは、イベントやインストアをあわせると、1年ほどで約150ステージ近くやっていたと思うんですが、リリース時期の神戸大阪名古屋などのインストアライブも含めてほとんどの現場に立ち会ってきました。基本的には、どのライブでもインストアでも彼らが入るのとだいたい同じ時間に入って、撤収までいることが多いです。ステージは試合だとメンバーによく言うのですが、自分はセコンドだと思っています。ステージに上ったら、我々が助けられる部分はわずかなので、それまでにできる限りの武器を持たせなければといつも思って現場にいます。もともとアイドルを目指していたわけではないメンバーもいるので、彼らそれぞれの適正を見て、本人らしく活躍できる居場所をステージに作ることも大切な仕事です。

――それだけ同行するのは、スケジュール的に大変だったりはしないのでしょうか? 橋口さんご自身のTV出演や他のお仕事などもありますし、アニメの作業と並行している時期もありましたよね。

橋口 少ハリの活動記録(TVアニメ)の脚本や作詞作業と、ぜんハリの現場や、お芝居の脚本、楽曲制作やその他もろもろなどが同時進行だと、単純に時間が足りないな……という部分はありましたけど、それを理由にしては絶対にダメですから。プロジェクトがスタートした当初は、こんなに続くことが想定されていたわけではなかったので、とにかく人手が足りない時期もあり、スタッフの方々、みなさん自らの気持ちの持ち出しで色んなことを全力でやってくださっていた。だから、それぞれやれることは全部やっていたという状況でも、まだまだやることはありました。大変なのは私だけじゃないし、誰もが自分の持ち回りを越えて動いていましたね。

――どんなに人手が足りなくても、簡単にできることではないと思いますが、それは好きだからこそできることというお気持ちですか?

橋口 正直に言えば、最初はただ必死なだけでした。アイドルは好きですけど、いわゆる「男子」というやんちゃなものが、子供のころから苦手で、それだけで女子校を選んだくらいだったので、あえて避けてきたんです。だから男性アイドルを担当することすら最初はすごく抵抗がありました。好きだったのは女の子のアイドルばっかりでしたしね。でも、そんなのメンバーには関係ありませんし、ぬるいことは言っていられません。彼らの人生がかかっていますし、メンバーもスタッフも、私が中途半端な関わり方をしていたら、誰も本気になれないだろうなと思ったんです。だから、自分がまずは本気になって関わろうと覚悟を決めました。

――そこまで真剣に関わられていても、それをご存知ない方からは、女性がプロデューサーであることや、その容姿から橋口さん自身が様々な誤解をされることは怖くなかったですか? 男の子と仕事をして楽しんでるっていうような……。

橋口 ああ、浮かれてるとかみたいなことですよね。そういう気持ちがあまりにもないから、言われても最初はピンとこなかったんですけど、それも今はもう慣れました。ついてまわることなんだろうなあと。私、見た目のわりにけっこう年齢がいっているのですが、年のくせにとか、おばさんのくせにってつっこまれたりみたいな、変更できないものを指摘されるのもどうにもできないです(笑) ファッションもそうですが、誰かの基準の年相応の動きで動くつもりもありませんし。あとは、テレビなどの表に出る仕事もしているので、そのことで「そんなに目立ちたがらずに、裏方に徹すればいいのに」というご指摘を頂くこともあります。不思議なもので、表に出る仕事をしていると、出たがりだと思われるものなんです。「人前に出てみたいなー」なんて浮かれた考えなんて、もう20代前半ぐらいでとっくに終わってます(笑)この時代、名前を出して顔を出して仕事をすれば、何か言われることはつきものだし、私も仕事なので働かせてねっていう感覚ですかね。

――お仕事ぶりを拝見したり、直接お話すると、ほんと微塵も感じないことだらけなんですが、一部の方からとはいえそこには、かなりの誤解がありますよね。

橋口 誤解にお互い真実はないからうらみっこなしって思ってます。人にはどうしたって好き嫌いがありますし、しかたないですよね。私としては、いただいた自分の仕事を淡々とさせてもらって、それが表であろうと裏であろうと、できるだけのことをしようと思っているだけなんです。その中にぜんハリをプロデュースするという役割も入っている。そして、やるからには全力でやる。それだけなんです。何を言われても、真実は自分の中にあるし、そこで静かに自分自身に勝ち続ける力が、人の役に立つことや役割を全うすることにつながればそれでいいかなって。

誰かがやらなきゃいけないことを、やってきただけ

――全力と言っても、橋口さんの全力は本当に全力で、メンバーと一緒の時間に現場に入られて、すべてのリハーサルに立ち会うだけではなく、実は、衣装の用意を手伝ったり、楽屋の片付けもされるし、洗濯までされていたことがあったとスタッフの方から伺いました。

橋口 今は、お洗濯をしてくださったり、衣装を管理して下さるスタッフさんがいます。私がお洗濯していたのは、去年の夏ぐらいでしたか。ただ、ほんとお洗濯はたまたまその時期だけですよ。暑い時期に連日公演が続いていましたから。ダンスも激しいし、汗だくになる中、クリーニングでは衣装が間に合わないから、持ち帰ってお洗濯が朝までかかったり(笑)。衣装だから、普通のお洗濯と同じようにはいかないんですよ。素材とかデザインとか元々細かく打ち合わせしているので、どう扱えばいいのかっていうのをわかってる人間が洗ったほうがいいってだけの話でしたし、誰もが手一杯でしたから使える人手は使わないと。その頃は、お裁縫なんかもしょっちゅうやってました。今も手があけば手伝いますよ。スタッフさんがやりづらくない範疇であればやれることはなんでも。

――そこまでできる原動力は何なのでしょう? 通常、プロデューサーはそこまで手伝ってくれないですよね。

橋口 ちゃんと役割を考えて手伝わないことも才能っていうところもあると思いますよ。手伝うことで、スタッフの手をわずらわせたり、仕事をしづらくさせたりっていう部分も、場合によってはありますしね。ただ、私の場合は、当初、物書きで、決して、プロデュースのプロではありませんでした。だから、私の言葉は簡単には届かないかもしれないと思ったんです。『少年ハリウッド』の原作者という立場はあるけれど、そこを利用してぜんハリの現場で言葉を伝えるのはズルい。中途半端に、たまにリハだけ見てアドバイスしたり、会議だけ出て、という関わりでは、たぶん誰のことも説得できないし、誰も一緒に一生懸命やっていこうと思わないだろうと。だから時間をかけて理解してもらおうと思っていました。

――ひとつひとつ丁寧に、愚直に……。

橋口 現場に行って、ちゃんと見習いから、じゃないけれど(笑)、ゼロから始めるつもりでやっていたらこそ、越えられた壁もたくさんあります。最初は、なぜあの人はいつもいるんだろう、と思われた方もいただろうと思います。

――メンバーの皆さんとスタッフさんは、橋口さんがいないと回らないということを理解していても、外から来る方には、なんでプロデューサーが縫い物をしているんだと(笑)

橋口 本番直前とかに衣装に不具合が出た時、手が空いていて、縫える人間が縫ったほうがいいだろうっていうだけなんですけどね。あと、現場にそうやって居続ける理由が、実はもうひとつあって。スタッフさんに対して裏表があるぜんハリにはしたくなかったんです。私がいるからちゃんとしとこうっていうより、いつもちゃんとしようよっていう。私だけじゃなくて、それは誰に対してもそうで、だから楽屋のドアも誰でも入れるように、できる限り開けておく。スタッフさんが来て雑談をしたり、行ったり来たりの風通しを絶対に良くしておきたかった。そこはずっと大切にしたいと思っているし、スタッフが来たからこういう態度を取ろう、というユニットにはしたくなかった。そこを意識的にやってきたところはあります。

――楽屋やスタジオに何度かお邪魔させていただいていますが、ぜんハリのメンバーは本当に性格がいいですよね。礼儀正しいですし。

橋口 そう思っていただけたなら、メンバーもスタッフも喜ぶと思います。裏表があれば、必ずステージに出てしまうし、見る人が見ればわかります。性格を偽りながらだと、ぜんハリというユニットは続けられないと思います。それに、スタッフさんに愛されなければ、助けて頂かなければ、最高のPLAYはできませんから。いいスタッフさんに恵まれて、ぜんハリの現場の雰囲気は、おかげさまですごくいいですし、それがステージにも出ていれば嬉しいです。

ぜんハリの為に、運動もはじめました

――これまでプロデューサー業についてのインタビューをあまり受けていらっしゃいませんよね。

橋口 ぜんハリは好きでも、私個人は苦手っていう方も中にはいらっしゃると思うんですよ。なので、あえて言う必要はないと思っていました。

――ただ、橋口さんが表に出る仕事をされていることで、彼らのことを取り上げてもらえるチャンスも増えるわけですから、そこは葛藤ですね。

橋口 そのうち、私がこうして出なくても大丈夫になるんじゃないですかね。それが理想です。あと、自分の役割を伝えるタイミングを逸したことも大きいです。やることが一つ一つ増えていって気づいたらこうなっていたので。

――秋元康さん、つんくさんなど、アイドルはプロデューサーありきでスタートしているイメージですからね。でもぜんハリでは、流れの中で、橋口さんがならざるを得なかった。まきこまれ型プロデューサーですね(笑)

橋口 気づけば(笑) 

――まきこまれてプロデューサーになられた結果、橋口さん自身が変化してきた部分はありますか?

橋口 自分がブレてはいけないので、意識的に変化させてきたというのはありますね。この3年の中で、まきこまれていったその速度はとても早かったので、しっかり立っていられるようメンタルと肉体の強化も含めて、体を作り始めたり(笑)。クロスフィットという、走るし、ウェイトもやるし、棒にぶら下がって懸垂もするし、年中筋肉痛になるハードな鬼トレなんですけど、そんなことしている私の変化に、身内も含めてまわりが驚いています。運動神経の悪さと、動かなさには定評がありましたから。昔から体もそんなに強いほうではなかったんですけど、1年以上やっていると、さすがに今は、心身ともにかなりいろんな部分が強化されて、ムキムキになってきました! 最近服の肩幅があわなくて困っています。

取材・文=波多野公美

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