あの夏になくした夢を、もう一度取り戻すんだ――。胸が熱くなる、青春小説『トリプルエース』

文芸・カルチャー

2016/7/11


『トリプルエース 君のいない夏に、なくしたものを探して』(汐見舜一/KADOKAWA)

何かに夢中になっていたあの頃。全力でぶつかり合ってわかり合えたあの頃。『トリプルエース 君のいない夏に、なくしたものを探して』(汐見舜一/KADOKAWA)は、そんな青春を思い出させてくれる物語だ。

高校入学を控えた春休み、主人公の東風慎一郎(こち しんいちろう)の持つ卒業アルバムに、事故で死んだ親友の西之園夕(にしのその ゆう)からのメッセージが現れる。

「コッチ、オレの代わりにインターハイに出場してほしい」

一緒に高校生になることなく死んでしまった心優しい夕。その夕が自分に託した願いだと感じた慎一郎は、親友のために素人からテニスを始め、インターハイを目指そうとする。

かつて夕とダブルスを組んでいた夏目竜輝(なつめ りゅうき)を見つけた慎一郎は、竜輝をテニス部に誘うのだか、彼はテニスを辞めてしまっていた。
夕の夢を一緒に叶えてほしいと説得する慎一郎に、竜輝は冷たくこう言い放つ。

「西之園の思いを汲んだからこそ、辞めたんだ。西之園は殺されたのさ、この僕にね」

夕と竜輝の間に何があったのか?
夕の死は事故ではなかったのか?

慎一郎は、自分の知らない親友の姿を見つけることになる――。

本作は、明朗快活で真っ直ぐな慎一郎と、何かを内に秘め陰のある一匹狼・竜輝のぶつかり合いと、2人にかかわる夕の死を軸に進んでいく。
さらに、慎一郎が入部したテニス部は廃部寸前ときている。竜輝を入部させられるかどうかも、部の存続の鍵を握っているのだ。

夕のメッセージから死の謎を追い、竜輝に隠された過去に心を痛め、一生懸命な慎一郎を応援したくなる。そして、青春ストーリーらしい2人の真剣勝負に胸が熱くなる。
テニスのルールなんてわからなくても、読んでいると、一緒にドキドキできるのだ。

最後に、それぞれの謎が繋がるとき――奇跡は起こる。
感動のラストまで、いっきに読んでほしい。

七里ケ浜の風を感じたくなる、『トリプルエース 君のいない夏に、なくしたものを探して』は、この夏に読みたい青春度100%の物語だ。

文=雨野裾