嫌いな人との人間関係が好転!自分も成長できる!一石二鳥な「人生の解釈力」をみがく方法とは?

社会

公開日:2016/7/12

 「人間を磨く」とは、欠点のない完璧な人になること、ではない──。本書『人間を磨く 人間関係が好転する「こころの技法」』(光文社)の冒頭で著者の田坂広志氏は、こう読者を安心させてくれる。「非も欠点もある未熟な自分」を抱えて生きながらも、人間は磨けるし、人間関係は好転させられるというのである。

 それが著者の指南する「こころの技法」だ。こころの技法とは、すなわち「こころの鏡磨き」である。具体的には、人間関係をつくるうえで他者や自分自身と向き合う際に、「持つべき視点」が提示される。そのため、本書には漠とした精神論はない。本書の特徴は、読者がすぐに日常に活用できる、実践的な技法の紹介に著者自身がこだわっている点だ。

 これまで一般企業、シンクタンク、大学、国際会議、内閣府など、著者が活躍してきた様々な場面において、多様な人たちと人間関係を築く中で体得した、実践的な「こころの技法」は大きく7つある。

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1.「心の中で自分の非を認める」
2.「自分から声をかけ、目を合わせる」
3.「心の中の『小さなエゴ』を見つめる」
4.「その相手を好きになろうと思う」
5.「言葉の怖さを知り、言葉の力を活かす」
6.「別れても心の関係を絶たない」
7.「その出会いの意味を深く考える」

 各技法では、さらに細かくいくつかの「持つべき視点」が示される。例えば、4.「その相手を好きになろうと思う」に記された、ひとつの視点を紹介しよう。

 プライベートでは人間関係は選べても、会社などでは、嫌い・苦手と感じる人ともかかわらなければならない。そんな人間関係を好転させるために著者がすすめるのが、「本来、人には欠点などなく、個性があるだけ」という視点を持つことである。

彼は、おっとりとした性格なので、一緒にいると、気持ちが安らぐんですね

彼は、とろいところがあるので、急ぎの仕事などを頼むときは、いらいらしますね

 

 著者は上記のような例文を他にもあげ、こう説明する。

このように一人の人物の性格は、それを見る立場と置かれた状況によって、「長所」にもなれば、「欠点」にもなる。
 (中略)
存在するのは、その人間の「個性」だけである。

 苦手意識のある相手の気になる性格に対して、それを欠点だと決め込まずに、長所もしくは個性としてとらえてみる視点を持ってはどうか、というわけである。

 

 もうひとつ紹介したいのが、7.「その出会いの意味を深く考える」だ。まずは次の著者の言葉を紹介しよう。

人生には、過去の「不幸な出会い」と思えるものが、「意味のある出会い」だったことに気づき、「有り難い出会い」であったことに気づくときがある。

 多くの人が、「許せない相手との出会いの経験があるだろう」と著者はいう。そうした場合、相手を「許せるか、許せないか」という視点で考えるのではなく、「なぜ、自分の人生においてその人と出会ったのか?」という視点を持つこと。そして、その出会いの意味を深く考え、問うことが必要だと著者は記す。その考察を通して、心から湧き上がってくる力を「人生の解釈力」と著者は呼ぶ。

「人生の解釈力」とは、人生で起こった出来事や、人生で与えられた出会いの「意味」を解釈する力のことである。

 人生とは不思議なもので、その問いに正しく答えを出し、出会いの意味、出来事の意味を、正しく解釈すると、なぜか、自然に目の前の問題が解決していく。

「人生の解釈力」を深めるためのステップも詳細に記されているので、熟読して身につけてみてはいかがだろうか。不幸な出会いを、ただ忘却の彼方に追いやるのではなく、そこに意味を見出すことに大きな価値があることもわかるだろう。

 本書にはこのように、人間関係を好転させると同時に、自分の成長につながる珠玉ともいえるアドバイスが多く記されている。人間関係に疲れてしまう前に、ぜひ、手に取ってほしい一冊だ。

文=町田光