今日からあなたも自宅ミュージシャン! マンガで身につく「自宅でレコーディングする方法」

エンタメ

公開日:2016/7/14


『たくろくガールズ』(ノッツ/サウンド・デザイナー)

「宅録」という言葉をご存じだろうか。これは「自宅で録音」の略語であり、文字通り自宅で音楽をレコーディングする行為のことである。「DTM(デスクトップミュージック)」とも呼ばれ、パソコンに機材を繋いで作曲や演奏を行なっていくのだ。レコーディングと聞くと、防音の利いたスタジオで大掛かりな機材と共に行なうイメージが強いが、現在は机とその周辺くらいがあればできてしまうという。にわかには信じがたいが、実際どのように製作しているかを『たくろくガールズ』(ノッツ/サウンド・デザイナー)では、漫画で分かりやすく解説している。

 まず「宅録」を始めるためには何が必要なのか。必須なのはパソコンと「DAW(デジタルオーディオワークステーション)」と呼ばれる録音や編集などを行なうソフトウェア。これだけで最低限の作業はできる。入門版のフリーソフトもあるので、最初はその辺りから試してみるのがよさそう。また楽器から直接演奏を録音したいという人は「オーディオインターフェイス」、歌を取り込みたいなら「マイク」というように必要に応じた機材を揃えればよい。本書ではフォトやイラストなどで機材のアドバイスもしてあるので、非常にありがたいところだ。

 メインの漫画は4コマ形式で、主人公のモヨを中心とした4人の「たくろくガールズ」たちが「宅録」での悲喜こもごもをユーモラスに展開。基本的には1ページごとにお題が設定され、4コマとお題の解説という流れで構成されている。楽器を弾くのが得意ではない人のために「鼻歌」でメロディを打ち込める「作曲支援ソフト」の紹介や、音にさまざまな変化を与える「エフェクト」など、幅広い状況に対応したお題が用意されているので、まさに宅録初心者にはオススメだ。

advertisement

 音楽を製作すれば、それを聴いてほしいという欲求は当然出てくるだろう。そういう時はインターネットの音楽配信サービスを利用すればよい。インターネット環境が整っていることが前提だが、無料で楽曲を配信し、不特定多数の人に聴いてもらうことが可能だ。本書によれば多くのDAWソフトに直接ファイルをアップロードする機能が備わっているということなので、初心者でも分かりやすいはず。

 このように「宅録」に関して非常に分かりやすく解説してある本書だが、漫画としても非常に楽しいものになっている。例えば本気で製作して配信した音楽より、ネタで配信した音楽の再生数が多くガチでヘコんだ話とか、作者の実体験であろう「あるある話」もふんだんに盛り込まれ、実際に宅録体験をした人なら思わず納得のエピソードが満載だ。

 作者のノッツ氏は巻中のインタビューで「たとえヘタで自信がなかったとしても、外に出してみるのが大事」と語っている。氏にしても漫画をきっかけに音楽のアップを始めて、ついには自らのCDを製作するまでになったのだ。

 本書を読んで「音楽を作りたいな」と思った諸氏は、臆せず挑戦してそれをアップロードしてみるのもいいだろう。しかしカラオケで歌うのはともかく譜面どころか縦笛も満足に吹けなかった私なんぞは、そもそもスタートラインにすら立てていない気がするのだが……。

文=木谷誠