「恋を求めて同窓会に行く人はいないと思うんですが」…40代半ばに多い“帰省不倫”の実態

恋愛・結婚

公開日:2016/8/17


 8月も半ばとなると、帰省する人も多くなる季節だ。この時期、久しぶりに地元の同級生と会って不倫が始まってしまうケースも少なくない。

 昨年夏、ひとりで帰省して中学時代の同窓会に出席、そこで再会した男性と今もつきあっているというのは、タエコさん(45歳)だ。

「うーん、どうしてこういうことになったのか自分でもよくわからないんです。ただ、彼と再会できてよかった。忙しくて、気持ちもすり減るような日常の中で、彼と会える時間が今は唯一の癒やしです」

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 タエコさんには、高校生の息子と中学生の娘がいる。ふたりとも部活に夢中で、親より友だちが大事な年齢。夫は多忙で、平日、家族で食卓を囲める日はほとんどない。

「子どもたちが大きくなり、夫も部署が変わったりして家族のありようも変化していくんですよね。わかってはいるけど、私の役割はごはんを作って家庭を調えて、家計の足しになるようパートで働いて……。それだけなんだろうか、とときどき虚しくなっていたんです。去年の夏は、まさにそれがピークで、そこで彼と再会してしまった」

 同窓会でたまたま隣に座ったのが彼だった。中学時代、陸上部で活躍していた彼とは、特に仲がよかったわけでもないが、運動会のとき彼が転んだことはよく覚えていた。彼もタエコさんと同じく住まいは東京で、話を聞くと現在働いている営業所がタエコさんの自宅から15分程度のところだった。

「昔の話ですっかり盛り上がって。東京でも近くにいるなら会おうということになりました。昔の同級生って、気心が知れているからふたりで会うのも抵抗がないんですよね。何度か会っているうちに、お互いに家庭がうまくいっていないわけではないけど、なんとなく日常的に気分が落ちることがあるよね、という話で親密になって……」

 子どもが大きくなって手がかからなくなる半面、寂しくなる。気力はあっても体力がついていかない。40代半ばになると男女とも「老いと年齢」を意識するようになる。自分がまだ男として、女として異性を惹きつける魅力があるのかどうかも気になるのかもしれない。

 そしてタエコさんは恋に落ちた。友だちから恋人へと、心の中で彼の存在が占める割合が日に日に大きくなっていった。

「ふたりで会うようになって3ヶ月くらいたったころでしょうか。彼が『もう我慢できない。好きなんだ』と言ってくれて。私も同じ気持ちだったから、そのままホテルへ行きました。お互い、家庭には絶対にバレないようにと気をつけながら、毎日連絡をとりあって月に2回くらいは会っています」

 恋したことで日常生活に張りが出てきた。つい最近、夫に「なんだか生き生きしてるな」と言われたそうだ。

「心は痛みますけど、私を女としてよみがえらせてくれたのは彼。夫とはこのまま穏やかに暮らしていければいいと思っています」

 まさか不倫が始まるなどと思いもせずに、人は気軽に同窓会に出席する。だが、子どものとき、あるいは青春時代を共に過ごした人に会うと当時の感覚に戻ってしまうものだ。そして、「あの頃は何も考えずに、毎日が楽しかった」と感慨に浸る。翻って、現状はどうなのか。あの頃の夢は実現できたのか、充実した日々を送っているのか。そんな自問自答が心にわき起こってくる。そんな心の隙間に、恋がするりと入り込んでくる。相手は同級生、気軽に会える。だが、気持ちはいつしか恋愛にはまっていく。

「恋を求めて同窓会に行く人はいないと思うんですが、結果的に懐かしさや気軽さからすぐに打ち解けられる、相手の素性がわかっているから安心ということもあって、恋愛しやすいんじゃないでしょうか」

 自らも、同窓会で再会した男性と3年越しの恋愛を続けているミユキさん(50歳)はそう言う。

「友だちの延長線上の恋愛って、なかなか冷めないんですよね。一時的な情熱ではなくて、人間性から入っているから、お互いへの思いやりもあるし。だから3年続いてしまったんだと思います」

 ただし、同窓会不倫で気をつけなければいけないことがあるとミユキさんは言う。

「お互いの過去を知っているから、どうしても昔の話に終始する時期はあると思うんです。でもずっとそうだときっと飽きる。友人で、やはり同窓会で再会した人とつきあい始めたけど、時間が過去で止まるような気がすると別れた人がいます。今の時代を生きているのだから、過去にすがりついたり過去をともにした相手に依存したりすると、それは恋愛とは言えない。私も、仕事に趣味にと日常を充実させる努力をしています。そのほうが彼との関係もうまくいく。結果、なんとなく夫に対しても許容量が広がったのか、あまりやいやい文句を言わなくなって、夫との関係も少し改善されたような気がします」

 良し悪しの問題ではなく、機会があれば人は恋をしてしまう。いけないと思っていても、恋に落ちることはある。だが、そこからどう振る舞うかが大人として問われるのかもしれない。

文=citrus亀山早苗