ものは言いよう! 相手の心に刺さる「つよい言葉」を生み出すために必要な4つのステップ

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更新日:2016/10/17

『ずるい日本語』(内田伸哉/東洋経済新報社)

 突然だが、あなたは「疲れたなぁ」と感じた時に「タウリン1g配合」という栄養剤と「タウリン1000mg配合」という栄養剤と、どちらに手が伸びるだろうか。「今日はパーッと飲みに行こうぜ」となったときに「飲み放題2000円」の看板と「お店のビール飲み尽くしても2000円」と書かれた垂れ幕、どちらに目が奪われるだろうか。

 人間とは非常にあいまいな生き物で同じ事実に対しても、その時の感じ方や気分次第で考えが変わってしまったりするものだ。「呑気に生きていたら人生損しますよ」と言ったら大げさかもしれないが、言葉の使い方ひとつでしなくてもいい損をしてしまったり、言い方ひとつ変えるだけで想定外にうまくいったりといったシーンは意外と人生の中であるもの。たった25のコツを知っておくだけで仕事や人間関係をより上手に立ち回ることができるかもしれないとしたら、知っておいて損はないと思わないか。

「コツをつかめば、言葉は10秒で強くなる」という言葉とともに、少しだけずる賢く言葉を利用して人の心を動かすための手法を紹介している本がある。『ずるい日本語』(内田伸哉/東洋経済新報社)だ。「土日くらい家事をやれ」と怒る妻を「土日は休むべきよ」と言わせたい日常、自分の考えや企画を通したいのに通らない仕事、話に乗ってもらえず輪の中に入れない友達関係など、話し下手で真っ正直であるがゆえに悩みを抱える人におすすめの1冊である。

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 著者は、コピーライターがまず目指すと言われるTCCの新人賞や世界のクリエイターが憧れるOne Showのインタラクティブ部門のSilver、文化庁メディア芸術祭の文部科学大臣奨励賞など数々の賞を受章し、TEDxOsakaにも出演したというメディアと言葉のプロ。電通でコピーライターとして、現在はヤフーでブランドマネジメント室室長として勤務しながらサラリーマンマジシャンとしても活動している異色の経歴の持ち主だ。「あまちゃん」で演技指導をしたり、石田純一・理子夫妻の結婚パーティーに出演したりするなど多彩な活躍でエンタテインメント力も発揮している。そんなメディアやマジックで言葉巧みに立ち回っている内田伸哉氏から伝授されるテクニックとなったら読まずにはいられないことだろう。

 誰かに想いを伝える場合、4つの段階を踏むことが必要だ。まず第1ステップとして相手の気持ちを推測し、第2ステップで相手にどんな気持ちになってもらいたいか決定する。第3に「What to say(何をいうか)」を決め、最後に「How to say(どういうか)」を決める。本書では第4ステップの伝えたい想いを「どのように伝えるか」についての手法が5つの章に分けられ、わかりやすい事例や用例とともに25のポイントに沿って解説されている。

 第1章のテーマは「IMPACT」。興味がない相手に興味を持たせ振り向かせる工夫について教えてくれる。第2章は「FUN」がテーマ。会話やコミュニケーションの中で相手を楽しませるためのユニークさの必要性と方法が綴られている。「SYMPATHY」と題された第3章では相手を共感させる言い回しや言葉の使い方が書かれ、「SPEED」がテーマの第4章では相手の記憶に残るコミュニケーションスキルが学べる。そして最後の第5章では4章までで培った心の動かし方からさらに一歩進んで相手に行動を起こさせる術を知ることができるのだ。

「10点入荷」よりも「残り10点」の方が、さらに「限定10点」と言われた方が買いたくなる“印象操作”。「君が好きだ」とストレートに言わず「君が好きじゃない。大好きなんだ」と言葉の反転でアピールをする“文脈反転”。「ダイエットをしたいあなたに」というフレーズよりも「人から注意されないと、つい食べてしまうあなたに」というダイエット特集記事の方に魅力を感じてしまうような、相手も薄々思っていることで口に出していなかった本音を言葉にすることにより共感を覚えさせる“本音暴露”。第3ステップの「What to say」で伝えたい事柄をこのような25の手法に順次に当てはめていくだけで、そのシーンにぴったりの言葉に出会えたり、アイデアの原点となったりする。

 平成26年3月に全国16歳以上の男女を対象に行われた文化庁の「国語に関する世論調査」では、言葉の使い方に対する社会全体の関心が以前より低くなっていると考える人が多い結果が見られた。こんな時代だからこそ日本語に興味を持ち、人を楽しませ、人と差をつけられる言葉の使い方を知って、ちょっとお得にずる賢く生きてみてはどうだろうか。

文=Chika Samon