70年代の少女マンガは、恐怖の作品ばかり……!? 真夏の夜は、オカルト・怪奇マンガを集めた一冊をおともに

公開日:2016/8/17

『大人の少女マンガ手帖 オカルト・怪奇ロマン』(『このマンガがすごい!』編集部/宝島社)

 寝苦しい真夏の夜に読みたいものといえば、やはりホラーマンガ。あの手この手で読者を震え上がらせる作品は、暑い夜をひんやりさせる清涼剤だ。とはいえ、最近のホラーマンガの定番は、デスゲーム系やパニックサスペンスモノ。もちろん、それらの作品もおもしろいけれど、ここは王道のオカルト・怪奇マンガをオススメしたい。そこで参考になりそうなのが、『大人の少女マンガ手帖 オカルト・怪奇ロマン』(『このマンガがすごい!』編集部/宝島社)だ。

 本書は、毎年「すごい!」マンガをランキング形式で発表している『このマンガがすごい!』編集部が、70年代に流行ったオカルト・怪奇少女マンガをまとめた一冊。美内すずえさん、高階良子さん、曽祢まさこさんといった、少女マンガの巨匠たちが描いたホラー作品を一挙に解説している。

 巻頭ではカラーイラストとともに、ゾクッとした名シーンの数々を紹介。『13月の悲劇』(美内すずえ/集英社)に登場する無残な首なし遺体、『赤い沼』(高階良子/講談社)に出てくる「ザクロは血の味」というセリフ、『聖ロザリンド』(わたなべ雅子/講談社)の主人公・ロザリンドが愛らしい表情で残酷な殺人を犯す様子……。そのどれもが、今読んでもゾワゾワするイヤ~な感じとともに迫ってくる。

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 そしてなによりも注目すべきは、『このマンガがすごい!』編集部ならではの、ランキング。忘れたいのに忘れられない、恐怖の作品をベスト10で紹介している。いったいどの作品が第1位に選ばれたのかは本書をチェックしてもらいたいところだが、その概要だけでもちょっとだけ紹介しよう。

 1位に選ばれたのは、トラウママンガとして真っ先に名前が挙がる作品。主人公は平凡な女子高生で、転入した学校に棲みついていた少女の霊に取り憑かれてしまう、というのがおおまかなストーリーだ。コックリさん、ラップ音、心霊写真といった、当時ブームを巻き起こしていたオカルト要素が盛り込まれているところも評価を集めたポイントで、そしてなによりも怖いのが、少女マンガ史に残ると言われているトラウマシーン。主人公の前に現れた少女の霊の表情は、一度見たら忘れられないだろう……。ちなみに、本書にもバッチリ掲載されているので、読む際には覚悟しておくことを勧める。

 さらに本書では、「トラウマ原画館」と題し、数あるオカルト・怪奇少女マンガ作品の中から、選りすぐりのホラーシーンを原画で紹介。原画に書き込まれた編集者の朱や、テープの痕跡すら、なんだか怖いものに見えてくるから不思議である。

 その他、当時を振り返るインタビューや、巻末特別マンガも掲載。まさに読み応えたっぷりな一冊になっている。本書を参考に、真夏の清涼剤をぜひ探してみてほしい。ただし、眠れなくなってしまっても、そこは自己責任で……。

文=五十嵐 大