飲食店の「こだわりの◯◯」、大学の「世界にはばたく」、自治体の「ふれあい」…常套句まみれの”ダメコピー”とは?

仕事術

2016/8/22

『こだわりバカ』(川上徹也/KADOKAWA)

 以前、先輩のライターに「『こだわりの~』という言葉をむやみに使うな!」と怒られたことがある。「何に・どうこだわっているのか調べたり聞き出したりして、具体的に書くのがライターの仕事でしょ!」と言われ、なるほど確かに……と思ったし、今でも「こだわりの~」という言葉は使わないようにしている。

こだわりバカ』(川上徹也/KADOKAWA)の著者はコピーライター。「こだわりの~」を筆頭に、安易にコピーに使われる言葉を取り上げた一冊であり、自分が先輩ライターに言われたことと重なる内容が多く書かれていた。

「こだわり」という言葉を使わないほうが、受け手には『こだわり』を感じてもらえるようになる

「こだわり」というような常套句を使う前に、それが本来どういう意味なのかを考えてみる習慣をつけましょう。一度違う言葉に置き換えてみると、より強く「こだわり」を感じてもらえる言葉に遭遇する可能性が高まります

 などの指摘は、コピーライター以外でも、仕事や趣味で文章を扱う人にはとても参考になるだろう。

 また本書では、「こだわりの~」という言葉が多用される飲食業界のほか、大学や自治体、企業のコピーも俎上に載せられている。

 そして著者は、コピーの常套句でありながら空気のように効果のない言葉を“空気コピー”と命名。具体例として挙げられるのは、食を扱う業界の「厳選した」「旬の」「伝統の」「極上の」、大学の「未来」「はばたく」「グローバル」、自治体の「ふれあい」「ぬくもり」「やすらぎ」「集う」「育む」などだ。このような“それっぽい言葉”を使わないことが、印象に残るコピーを作るためには必要になるわけだ。

 もちろん本書には、良いコピーの例も、多くの人に刺さるコピーを作るためのポイントも書かれている。そのアドバイスは「圧縮して言い切る」「言葉の化学反応を考える」「合わない言葉や概念を組み合わせる」など様々だ。

 そんなコピー作りのテクニックを結集したのが、本書の書名「こだわりバカ」ではないだろうか。「こだわりの~」というコピーに溢れた世の中を短い言葉で表現しつつ、つい手に取りたくなるような刺激的な雰囲気が、この書名にはある。

文=古澤誠一郎