いま注目の女性作家対談! 芥川賞作家・村田沙耶香דSF×不倫”で話題『あげくの果てのカノン』マンガ家・米代恭/「異様なくらい健全な人が好き」村田が明かした、意外な恋愛観とは? 【後編】

文芸・カルチャー

2016/8/27

 先日、下北沢「B&B」で、注目の女性作家ふたりを招いた対談イベントが開催された。登壇したのは、SFと不倫を掛けあわせた異色のラブストーリー『あげくの果てのカノン』(小学館)の作者・米代恭さんと、『コンビニ人間』(文藝春秋)で第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香さん。果たしてふたりはどんなトークを繰り広げたのか。前編に引き続き、後編では村田さんの意外な素顔が明らかになった瞬間をピックアップします!

偶像崇拝的な恋愛は誠実なのか

村田沙耶香さん(以下、村田):私は恋愛を描写するにあたって、肉体感覚を重点的に書いているんですが、米代さんは『カノン』を描くにあたって、どんなことを意識されていますか?

米代恭さん(以下、米代):私、人と付き合ったことがないんです。だから経験不足でわからない部分はあります。でも、だからこそ、相手の人格とか、憧れそのものに恋をしてしまう状態が描けるのかもしれません。

村田:だから、かのんちゃんは純粋無垢な感じがするのかも。かのんちゃんが先輩とセックスしているところが想像できないんです。ズタズタになってしまった先輩の血を舐めているところは想像つくんですけどね(笑)。不思議で素敵な恋愛ですね。

米代:かのんからすると、先輩は人間であってほしくないんです。ある種、偶像崇拝的で、自分と同じであってほしくないという思いが根底にある。でも、それって先輩に対して誠実になれていないということ。だから今後は、ちゃんとそういうことに向き合っていく話になると思います。

世間の恋愛観によって裁かれる、当人同士の恋愛

米代:私、恋愛の経験数をもって、人間性がマウンティングされてしまう風潮に疑問を持っているんです。特に男性なんかは『だからお前は童貞なんだよ』なんて言われてしまいますが、どうしようもないことなのに、それを基準にダメというレッテルを貼られるのが嫌。勉強ができる・できない、運動ができる・できないと一緒で、恋愛だって人それぞれじゃないですか。

村田:当人同士の問題に外から干渉すること、“世界がこうだから”といって裁くこと、これってすごく怖いことですよね。私は、恋愛って基本的になんでもありだと思っているんです。本人同士が話し合ってお互いに納得した結果であれば、既婚者だって外に恋人を作っても良いと思いますし。本人たちの話し合いの中で解決していることに対して、周囲が声を上げるのってグロテスクなことですよね。

米代:かのんのように、“相手がいる人”を好きになることって、どう思いますか?

村田:私自身は、相手がいる人を好きになったことがあまりないんです。バカがつくくらい真面目だったり、異様なくらい倫理観を守っていたりする人が好みで。自分が小説を書く上で、不健全なことばかり考えているからだと思うんですけど、健全な人が好きなんです。だから、もしも相手がいるのに私に振り向いてくれたとしたら、その時点でその人は健全じゃなくなっちゃう。つまり、好みのタイプじゃないってことですよね(笑)。

 後編で明らかになった、ふたりの作家の恋愛観。この他にもイベントでは、作品を生み出す姿勢、恐怖の対象、嫉妬心の有無など他では聞けないような話が次々と繰り広げられた。

前編はこちら

本屋B&B(下北沢)http://bookandbeer.com/

構成=五十嵐 大