食後すぐの歯みがきは“歯”を溶かす! 歯ブラシよりも、歯みがき粉よりも大事な「フロス」と「舌回し」のやりかたとは?

健康

更新日:2016/9/27

 子供の頃、「食後はすぐ歯を磨く」と教わらなかっただろうか。昔ながらのその考えがあなたの口を蝕んでいるかもしれない。あなたの歯と口は健康だろうか? 次のうちいくつ当てはまるかチェックしてみよう。

毎食後10分以内に歯みがきをしている
いま使っている歯ブラシは、いつから使っているかわからない(毛先が乱れて、歯ぐきが痛くなったら交換している)
デンタルフロスや歯間ブラシは使っていない
市販の歯みがき剤をたっぷりつけている
歯科医院には虫歯になってから治療に行く

 さていくつ当てはまっただろうか。残念ながらひとつでも当てはまった人、あなたの歯みがき習慣は間違っている。このままでは歯周病を引き起こし、将来自分の歯が残らないかもしれない…。

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 このように警鐘を鳴らすのは、森昭氏。長年、歯と唾液の研究を行ってきた臨床歯科医だ。この度、『歯はみがいてはいけない』(講談社)を上梓し、その刺激的な内容から話題となっている。

食べてすぐの歯みがきは“歯”を溶かす

 本のタイトルにある、「歯をみがいてはいけない」とは、ふたつの意味を指している。

 まずチェックリスト最初にある、「食事の直後」のことである。子どもの頃から歯みがきは「食後」と教えられた人は多いだろう。だがそれは間違いであった。食後すぐの歯はもろいのだ。

糖質を含む飲食をしたあと、口の中は酸性に傾き、歯の表面のカルシウムやリンが溶け出します。
石のように見える歯ですが、飲食後の歯の表面は非常に傷つきやすく、柔らかい状態。そこで歯みがきをすると、歯ブラシで機械的に傷つけられ、研磨剤や発泡剤の入った磨き粉でさらにダメージを与えられます

 なんと、食後の歯みがきは、歯を傷つける行為だったのだ。だから食後は、歯の硬さを元に戻すちからのある、唾液に働いてもらうのがいい。

 だがこう思った人もいるだろう。食後に歯みがきをしないのなら、歯に挟まったカスをそのままにしていてもいいのだろうか、と。

 それが「歯をみがいてはいけない」の2番目の意味とも繋がってくる。

歯ブラシよりも“フロス”を重視せよ

 唾液には、食べカスを押し流し、細菌の塊である「歯垢=プラーク」の増殖を抑える働きがある。だがいくら唾液の力をもってしてでも、歯に挟まったカスは取れない。

 そこで利用したいのが、「デンタルフロス」である。

 食後にデンタルフロスで歯間を掃除することは、多いに効果がある。歯に詰まった食べカスを取ると、「唾液の通り道」をつくることになる。だから食後に挟まった青ネギも放置することなく落としてよいのだ。

 唾液の力を最大限に利用しつつ口内の健康を保つには、歯ブラシよりも「デンタルフロス」を主眼に手入れをすると良いという。決して、歯ブラシを否定しているわけではない。

 では、食後はフロスのみのお手入れとして、歯ブラシはいつ使うのか。それは「起床直後」「就寝前」である。

ダイエットにもなる舌回し運動

 体が持っている本来の力を最大限発揮させる歯と口のお手入れ方法をここでご紹介しよう。まずお手入れ時間や種類を分けて考えること。「食後」と「寝る前・起きた後」だ。
 それぞれ次のことを行ってみよう。

「食後」は唾液の通り道の確保を目的に次のことを行う。
・デンタルフロス(歯間ブラシ)で掃除
・舌回しで唾液分泌を促進

〈舌回しのやりかた〉
(1)口を閉じて舌を、歯と唇の間に置く。
(2)舌先を右上のいちばん奥の歯ぐきと頬の間に置く
(3)歯の外側をなぞるように、右上奥から左上奥へ
(4)左上奥から左下の奥歯へ移動。同様に左下奥から右下奥へ
(5)円を描くように舌を回す動きを10回
(6)同様に、舌を反対回りに10回まわす

 この舌回し運動。実際にやってみると、後頭部が痛くなってくるだろう。舌は首の後ろの筋肉と繋がっているからだ。この運動は食前に行うと唾液分泌で消化を助けるほか、食べ過ぎの予防になり、ダイエット効果もあるそうだ。

「寝る前・起きた後」
・デンタルフロス(歯間ブラシ)で掃除
・歯ブラシで歯の付け根を狙いみがく
・歯みがき粉は使用しない

 歯みがき粉を使用しないと、爽快感が足りないと思う人もいるだろう。このミントの「爽快感」で「磨いた気」になるのがもっとも良くないことだという。残念ながら歯みがき粉には歯垢を取る力はない。歯垢はフロスやブラシで掻き出さないと取れない。

 ただし、歯の着色が気になる。また歯ぐきの調子が良くない。その場合は歯磨き粉をたまに利用しても良いそうだ。

 歯の磨き方は、一回間違ったくらいでは、大きな影響はない。けれど毎日間違った歯のみがき方をすると、虫歯や歯周病を引き起こす。これらは大したことがないと思えるかもしれない。だが、虫歯や歯周病を放っておくと、歯が抜けるだけではない。最新の研究で、歯周病の影響は全身におよび、糖尿病や高血圧、心筋梗塞、果ては寝たきりになるという結果が出ている。

 歯の不具合は口だけに留まらず全身を蝕むという。その理由はなぜか。詳しい方法は書籍に記してある。成人病が気になるならぜひ手に取って見てほしい。

文=武藤徉子