『信長の忍び』アニメ放送開始迫る!おとぼけ忍者の少女が信長のために命を懸ける!浅井長政といよいよ決着の時!

マンガ

公開日:2016/9/29


『信長の忍』(重野なおき/白泉社)

 今年3月、愛知県の忍者募集に外国人200人の応募が殺到し、お台場で開催された「忍者ってナンジャ!?」展の来場者は10万人を突破するなど、いま巷はひそかな忍者ブーム。その盛り上がりを後押しするように、10月よりTVアニメが放送開始するのが『ヤングアニマル』で連載中の『信長の忍び』(重野なおき/白泉社)だ。その名のとおり、戦国の乱世を革新させた武将・織田信長に仕える忍びの少女・千鳥を主人公に描いた4コママンガで9月29日に最新10巻が発売された。

 4コマといっても本作はただのギャグマンガにとどまらない。「ワシの夢はただひとつ この日本(ひのもと)の乱世を終わらせる事だ!!」――幼き日、溺れているところを信長に助けられた千鳥は、信長の意志が天下獲りよりももっと大きなところにあるのを知る。いつか一人前になったら信長のための忍びになりたい、そう思い続けた千鳥は、5年後、伊賀の里の長が一流と認めるほどの実力をそなえ、念願かなって信長のもとに馳せ参じるのである。

 1巻冒頭で「ワシの為に死ね」と信長に言われ、千鳥が「何があっても生きて生きて生きぬいて味方に情報を伝えるのが忍び」と応えるシーンがある。「それでもよければおやといください」と。それを聞いた信長はこう言うのだ。「言い改めよう ワシの為に生きろ!!」と。その命令を誓いとかえて、千鳥は忍者の技をくりだして、ときに己の血を流しながら戦地に向かう。つまり本作で描かれるのは、熱い主従の絆と戦国のバトル。そのかわいらしい絵柄からは想像もつかない、重厚な歴史絵巻なのである。

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 とはいえ、絵柄から想像されるかわいらしいユーモアとキャラクター性が強いのも本作の魅力のひとつ。下戸で甘いもの好きといわれていた信長の、普段はいかめしいくせにときどき見せるギャップにはおそらく千鳥だけでなく読者も悩殺されることだろうが、そんな彼を支えるド天然な美女妻・帰蝶、勢いだけで突っ走る見た目も中身もおサル……だけどもなんだかんだと頼りになる秀吉、そしてもちろん、ちょっぴりおとぼけで計算するのも苦手な千鳥。

 信長陣営がのどかにわいわいと日常を送るさまは笑いを誘い、読んでいてほっこりした気分にさせられる。それは敵陣営に対しても同じで、本作には過度な緊張感と殺伐とした空気はない。だが、だからこそひとたび戦がはじまったあとの無情さが際立ち、その先行きから目が離せなくなってしまうのだ。

 今川義元との戦いから始まった本作は、9巻で室町幕府将軍・足利義昭と対峙するに至り、最新10巻ではとうとう信長の妹・お市の嫁ぎ先・浅井長政との戦いにたどりついた。睦まじい夫婦の仲を引き裂く、どころか夫の命を実の兄が奪ってしまう悲劇。史実だけ見ても切ないこの展開を、信長の忍びとして千鳥はどう見るか。命を奪い合うことの悲劇、けれどもそれ以上に生き抜くことの覚悟を描く本作。アニメ放送を楽しみに待ちながら、何度でもコミックスを1巻から読み返したい。

文=立花もも

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