『3月のライオン』最新刊は、新たな恋の予感? 西尾維新のコラボ小説収録の特装版も発売!

マンガ

更新日:2017/6/4


『3月のライオン』(羽海野チカ/白泉社)

 ついに10月8日(土)よりTVアニメ放送が開始する『3月のライオン』(羽海野チカ/白泉社)。『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之が監督を務め、アニメ制作会社シャフトによる久しぶりの連続アニメ放送であり、原作ファン・アニメファン双方の期待を呼んでいる。来春公開の実写映画のビジュアルが解禁され、神木隆之介扮する桐山零のあまりに忠実な再現度も話題となり、ますます盛り上がりを見せる本作、待望の最新12巻がこのたび発売された。また、作家・西尾維新が書き下ろしたコラボ小説を収録した特装版も同時発売される。

 もはや説明する必要もないかもしれないが、本作は15歳にしてプロ棋士となった桐山零が、棋士としても一人の少年としても殻を破って成長していく物語。……にとどまらず、努力して、努力して、血反吐を吐くほど限界に挑んで、それでも辿りつけないかもしれない高みに挑んでいく棋士たちや、ときに不条理で理不尽が襲いかかってくる現実に懸命に立ち向かう周囲の人々を描いた、戦いの物語でもある。

 11巻では、零を暗闇からひっぱりだしてくれた筆頭であり優しさと強さの象徴でもある川本3姉妹、その父親がついに登場し、あまりのモンスターぶりが読者をどよめかせた。妻子捨男と呼ばれた彼を、ひとまわりもふたまわりも大きくなった零の機転と暴走で、どうにか撃退することができたが、浮き彫りになったのが、母親がわりに妹たちを育てて苦労を背負い込む長女・あかりの幸せのゆくえ。持ち前の集中力をフル回転させて零がたどりついた結論が「川本家に必要なのは、あかりさんを支えてくれる人生の伴侶!」。それをなぜ高校生のきみが探そうとするのかね、という気がしないでもないが、12巻冒頭で零はさっそく、思いつくかぎりの知人をデータ化してあかりのパートナーとしてジャッジしはじめるのである。

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 行動が合理的であるだけに、真剣すぎる零の面持ちと発想には、ツッコミたくなる気持ちもやはり少々生まれないでもないのだが、“守るべきもの”を見つけた彼は強い。いつのまにこんなに明るい場所に出てきていたのだろう、と涙を流していた彼の、かつての孤独を思うとその強さには尊ささえ感じられる。零の世界は、開かれている。だからこそ12巻で対戦する死神・滑川にも臆することなく、立ち向かえるのだ。勝負のゆくえとともに、零の意図とは離れたところではじまりそうなあかりをめぐるロマンスの気配が最新刊の読みどころだ。……そんなところで終わらされたらまたじりじりと新刊を待つしかないではないか! と地団駄を踏みたくなる読者が続出することうけあいだが、こらえきれないその想いはぜひともアニメ放送を堪能しながらあたためてほしい。

 それでも足りない! という読者には、12月23日から博多阪急で開催予定の『羽海野チカの世界展~ハチミツとライオンと~』展がおすすめだ。『3月のライオン』だけでなく、『ハチミツとクローバー』とあわせた150点もの原画や、羽海野チカをかたちづくるすべてを公開し、東京で大好評を博した同展。今後、広島、大阪、札幌での巡回も予定している。年が明ければ実写映画の公開も間近。羽海野チカの世界を存分に楽しめる、来年もスペシャルイヤーになりそうだ。

文=立花もも