15歳が大きな壁!? 発達障害の子どもを大きく伸ばす適切な「言葉かけ」とは?

更新日:2019/2/28

15歳が大きな壁。それまでに身につけさせたい「ライフスキル」

 3冊目に紹介したいのは『15歳までに始めたい! 発達障害の子のライフスキル・トレーニング』(梅永雄二/講談社)だ。発達障害の子どもが社会で自立して生きていくためには、正しい生活習慣や一般常識の「ライフスキル」が必要になる。小・中学生の頃までは保護者や先生のサポートでなんとかなっていたことも、高校に入ると行動範囲が広がり主体的な行動が一気に増える。そのため、ライフスキルが身についていない子どもは周りに迷惑をかけたりトラブルに遭いやすくなったりするからだ。

 たとえば身だしなみを整える、部屋の片付けや持ち物の管理をする、金銭管理をする、自分に合った進路選択をする、外出した時は予定の場所に時間通りに移動する、対人関係の基本を身につける、法的トラブルや危険を避けるといったことができなければ、トレーニングする必要がある。「ライフスキル・チェックリスト」もあるので、事前にチェックするとやるべきことが明確になるだろう。

 本書では10種類のライフスキルのトレーニング法を、ASD、ADHD、LDそれぞれのタイプ別対策法もまじえて順序立てて説明しているためわかりやすい。部屋の片付け方ひとつとっても、LDの子で読み書きが苦手なら写真や絵や色で分類する、ASDの子は視覚的な情報が有効で文字情報も役立つ、ADHDの子には分類を示すだけでなくこまめに声かけする、といった具合である。ひとつ注意したいのは、完璧を目指さずにできることからひとつずつ取り組んで、最低限できればいいと親が割り切ること。そして困った時は家族や友人や先生など、人に頼ることも覚えさせることだ。

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 長年、発達障害の人の就労支援活動を続けてきた著者の梅永雄二氏によると、「仕事がうまくいかない」という相談よりも多いのが「仕事以外の部分で困っている」という声だという。遅刻が多く服装も乱れがちで、体調不良を上司に伝えることもできないといった生活面での悩みをうまく解決できずに、安定して働けなくなる人が多いのだ。

 ライフスキルのトレーニングは、子どもが小さいうちからできるものもある。生活面での悩みが少なければ少ないほど、高校、大学、社会人へと成長していく過程で起こる問題も少なくなる。

 ここで紹介した3冊はどれもすべての子どもたちに応用できるものばかりだ。発達障害の子どもを持つ親だけでなく、子育ての仕方や親子関係に悩んでいる人、子どもの生活習慣や対人関係で悩んでいる人にもきっと参考になるだろう。

文=樺山美夏