ネット検索だけで満足してしまっている!? 若者の消費行動の実態

社会

公開日:2016/10/20

『若者はなぜモノを買わないのか「シミュレーション消費」という落とし穴』(堀好伸/青春出版社)

 マーケティング担当者から見れば、今の若者は、どういう風にモノを売ればいいのかわからない不可解な存在らしい。上の世代に比べれば、今の若者には欲がないように見える。一体どうすれば、若者たちにモノを買わせることができるのだろう。

 株式会社リサーチ・アンド・ディベロプメントの堀好伸著『若者はなぜモノを買わないのか「シミュレーション消費」という落とし穴』(青春出版社)では、若者の購買意欲に関する実態を分析している。堀氏は、首都圏在住の平成生まれ(20歳以上)独身男性のコミュニティ「U26平成男子コミュニティ」を結成し、若者たちのマーケティング調査を行っており、この本はその調査結果である。

 例えば、ある20代の青年が、会社の先輩の結婚式に呼ばれているので、ブルー系のスーツを買いたいとする。今までならば、まずスーツ専門店やデパートの紳士服コーナーに足を運んでみる…という人が多かっただろう。しかし、今の若者は、リアルはもちろん、ネット上でも直接「お店」には向かわない。まず、スマホを使い、検索サイトでダイレクトに「画像検索」をし、スーツの画像を探す。そして、たくさんの画像の中からお気に入りのものを探し、それを売っているショップなどの情報へ向かう。画像検索はイメージが掴みやすくて、瞬間的に欲しい情報へとたどりつくことができるため、若い世代はそのメリットに気づき、いち早く活用しているようだ。

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 若者の間ではSNSでも、画像が優位。写真共有アプリ「Instagram(インスタグラム)」のアクティブユーザー数やアクティブ率が急上昇しており、アメリカでは20代のユーザーが半数を占めているというデータもある。写真共有はもちろんのこと、画像加工、ハッシュタグ付きの投稿、「いいね!」やコメント投稿など、これまでのSNSと同じ機能が「見る/見せる/見られるの」の関係の中で利用できるので、いちばん親近感のあるネットワークになっている。

 しかし、平成生まれの男性に「欲しいものは?」と聞くと、4人に1人は「別に欲しいものはない」と答えるという。たまに「やっぱり車、女、金ですかね」というメンバーがいても、「じゃあ車買えば?」と水を向ければ、「ローンだと月々の支払いに追われている感じがしてイヤなんですよ。そこまでして欲しいなとは思いません。お金が貯まってから考えます」との返答。彼らの欲望はあくまで控えめ。払い続けている間中、「欲しい」という気持ちを維持できる自信がないから、基本的にはローンは苦手だという。だが、欲望の本気度次第で、消費の仕方はガラリと変わる。例えば、本気で車が趣味だというメンバーは、ローンで買うことをいとわない。「貯めているより3年間払うほうが楽しめる時間が長くなるからいい」という。だが、そこまで欲しくない人は「貯まったら買うかも」とは言うが、いろいろと調べているうちに欲しさのピークがすぎて結局買わないことのほうが多いらしい。

 今の若者たちの生活は、仲間とのコミュニケーションも情報収集もスマホで事足りてしまう。実際に商品に触れなくても、手のひらのスマホの中で、それらしいだいたいの体験ができてしまう。リアリティある情報に触れ、バーチャルでモノを体験して「シミュレーション(擬似)消費」しているうちに、最終的には欲しくなくなってしまう。選んでいる時点で情報の波に疲れてしまい、「本当に必要なのか」と自問自答してしまう。その結果、「買わなくてもいいや」となってしまうのだ。例えば、いろいろな旅行サイトのレビューを見たり、ホテルや名所のガイドを見たりと情報を集めていくうちに、なんとなく旅先の様子がわかったので行く気がなくなってしまう、ということも決して珍しくはない。

 では、若者にモノを買わせるにはどうしたらいいのだろうか。彼らは、右にならえではモノを買わないが、シミュレーションして納得できるものならそれほど財布のヒモも固くないと堀氏はいう。例えば、気の置けない友人たちとの飲み会に出て、帰りにみんなでドン・キホーテをうろうろして話のネタにとわけのわからないものを買って楽しんでいる人もいるだろう。情報よりも体感。コスパよりも楽しさ。若者たちに消費させる鍵はそこにありそうだ。

 消費に消極的と見られる若者にも必ず、消費行動に向かわせるツボがある。この本を元に若者の実態を知って、彼らの心を掴むヒントとしてみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ