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「どんな映画にも忘れがたいシーンとセリフが登場する」――名作映画100作品の心を打つシーン&セリフが目白押し!

『みんなの映画100選―あのシーンあのセリフ』(長場雄:絵、鍵和田啓介:文/オークラ出版)

 小学生のころ、CGアニメ映画『モンスターズ・インク』を映画館で観て泣いた。映画に泣かされたのは初めてだったから、心底戸惑ったのをよく覚えている。なぜ泣いたのかいまでもわからないし、話の内容はよく覚えていない(キャラクターが怖くて泣くほど幼くはなかった)。しかし、クライマックスの「別れ」のシーンで自分でも信じられないくらい感情が高ぶり、涙が止まらなくなった。

 名作と呼ばれる映画をどう定義するかは、人によってさまざまだろう。興行収入でもいいし、観客動員数でもいい、自分だけがいいと感じたものでも名作は名作である。

 本書『みんなの映画100選―あのシーンあのセリフ』(長場雄:絵、鍵和田啓介:文/オークラ出版)は、「どんな映画にも忘れがたいシーンとセリフが登場する」という精神のもと、計100作品を選出。イラストレーター・長場雄氏の情感あふれるシンプルな挿絵と、ライターの鍵和田啓介氏が選んだ好きなセリフ+自由奔放な解説で、「名作映画」が紹介されている。

 この本の冒頭で語られているとおり、作品のチョイスは必ずしも完璧ではない。超有名な定番映画からマニアックすぎる「迷作」まで――強く同意できるものがあれば、まるでピンとこないものもある。「あれが入っていないとは、わかってないな!」とお門違いな憤りを覚えたり、「あ、でもこのチョイスは渋いね」なんて溜飲を下げたり……。私が本書を読んで感じたのは、同じ趣味を持った違う世代の人たちが平行線の討論を繰り広げるような、幾分オタク気質な熱っぽさだ。

 挿絵の説得力もさることながら、解説の“あてにならなさ”も、本書の素晴らしいところ。ここでいう「あてにならない」は、すなわち物語の内容がさっぱりわからないということである。余計な解説は一切なし。著者の感じたことや言いたいことがストレートに表現されている。おかげで観たことがある作品ではニヤリとさせられ、タイトルだけ聞いたことがあるものは内容が気になり、まったく知らなかったものはチンプンカンプン……。

 とはいえ、本書の目玉のひとつは「名ゼリフ」である。作品を観たことがない人には意味不明な解説でも、読み進めると心の琴線に触れる言葉がいくつも見つかるはずだ。たとえば、個人的に大ヒットのアメリカ映画『ドラッグストア・カウボーイ』では、次のセリフがピックアップされている。

「普通の暮らしは退屈だけど悪くない」

 作中の序盤から中盤まで、ラリってばかりいる主人公とその仲間たちだが、終盤で主人公だけがクスリを断つことに成功する。一見ありきたりな言葉ではあるものの、クスリにハマり、そこから脱した人間のセリフだからこそ、どこか真に迫るものを感じさせる名シーン・名ゼリフだ。本作にチラッと出演しているアメリカの作家、ウィリアム・バロウズの登場シーンを採り上げた挿絵も秀逸。

 ほかにも紹介したい作品がたくさんあるのだが、ここはその衝動をグッとこらえ、あえて本書で採り上げられていない映画の名ゼリフを紹介したい。というのも、本書の冒頭に、「足りない101作品目については、あなた自身どこかに書き足してくれることを作り手たちは願っている」という記述があるから。私はここに「足りない101作品目」のひとつを書き足して、本稿を締め括りたいと思う。

「何も創造するな 誤解される その誤解は一生付きまとう 決して解けない」

 2016年のノーベル文学賞の受賞が決まり、大きな話題となったボブ・ディランの半生を描いたアメリカ映画『アイム・ノット・ゼア』。その中盤で、熱狂的なファンたちから裏切り者呼ばわりされるディランの混乱や孤独感を凝縮したような独白がこれだ。

 6人の俳優が幼少期から往年までのディランを演じ分けるという表現方法にまず驚かされる。また、ディラン本人が初めて公認した映画というだけあって、時代とともに変化するディラン像への造詣の深さは、ほかのディラン映画と一線を画す。俳優陣の豪華さも目を引くが、中でもハリウッド女優のケイト・ブランシェット演じるディランの立ち居振る舞いは、もはや芸術。

 ノーベル賞受賞の知らせを受け取っているはずなのに、一切反応がないディランの心情も、この映画には描かれている……。

文=上原純(Office Ti+)

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