誕生40周年! 80年代の少女たちのハートをわしづかみにした「オサムグッズ」たちを集めた完全保存版

エンタメ

2016/10/31

『OSAMU GOODS CATALOG』(原田治:監修/宝島社)

 おそらく80年代から90年代にかけて、女子中高生が「真似して描いたイラスト」のもっともメジャーなうちのひとつが、オサムグッズだと思われる。

 男の子の「ジャック」と女の子の「ジル」、ネコやイヌ、そして卵がアメコミ風に描かれていたが、モチーフはイギリス生まれの『マザーグース』で、卵はハンプティ・ダンプティだったのだ。英米折衷(?)の不思議な世界観ながら理屈抜きにカワイイと言えるキャラクターは、瞬く間に全国の少女たちのハートをわしづかみにした。

 オサムグッズ40周年を記念して刊行された『OSAMU GOODS CATALOG』(原田治:監修/宝島社)によると、オサムグッズのコンセプトは「失われた古きよき時代のアメリカ」だという。

 作者の原田治氏は1946年の、ちょうど戦後すぐ生まれ。原田氏が青春時代に追いかけた「50~60年代のアメリカ文化へのエキゾチシズムとノスタルジーがOSAMU GOODSのベース」になっていて、デザインには当時日比谷にあった輸入専門のドラッグストア・アメリカンファーマシーに通いつめたり洋画を積極的に見ていたりしたことなどが、大いに影響しているそうだ。

 オサムグッズのあれこれがわかるこの本は、帯に「どれもこれもなつかしい。」と書かれているとおり、ページを開くと筆者自身も約25年前に持っていた・欲しかったグッズがずらりと並んでいる。ノートやペンケース、お弁当箱は学校生活のお供だったし、マグカップや缶ケースは、友人への誕生日プレゼントの定番だった。「これ持ってた!」の思い出とともに、お揃いで使っていた友人の顔が浮かんでくる。当時の自分は常備薬なんかないのにタブレットケースを持ち歩いたり、髪はブラシでとかす派なのに、コームを制服の胸ポケットに入れたりしていた。どれもこれも皆、オサムグッズのキャラクターが描かれていたからだ。

 このような各自の記憶がよみがえるだけではなく「表紙にも使われている、目に切れ込みが入っているイラストは『スライスド・アイ(パイを一切れ切ったようなかたちの目)』と呼ばれる、古いアメリカのアニメーションに見られる技法を取り入れたもので、初期のデザイン」などのうんちくもわかり、眺めているだけで楽しい気持ちにさせてくれる。

 1990年代半ば頃まではインターネットが普及していなかったため、地方に住む少女たちの中には近所でグッズが手に入らず、悲しい思いをしていた人もいた。でも彼女らには、ミスタードーナツが強い味方となっていた。なぜなら1984年から2000年代初頭まで、ミスタードーナツのキャンペーン商品にオサムグッズが使われていたからだ。カードの点数を集めるともらえるお皿やカフェオレボウル、スポーツタオルなどは、いずれも「オサムグッズ欲しい熱」と小腹を満たしてくれる反面、体重増加とおこづかい減少にも一役買う悩ましい存在だった(「グッズが手に入るお店もミスタードーナツも、どっちも近くになかったんだよ!」という方もいらっしゃるかと思いますが、そこはすいません……)。

 しかし残念ながら今回の本には、ミスタードーナツのグッズについては収録されていない。構成上あえてなのか、商品の手配ができなかったからなのかは測りかねるが、こちらも掲載されていれば一層なつかしさがよみがえってきたはずなので、少し残念に思う(ミスタードーナツのサイトの「グッズ&キャンペーン」にある「なつかしのオリジナルグッズ」で、解説とともに画像を見ることができるけれど、できれば一緒に収めてほしかった……)。

 オサムグッズが一世を風靡していた当時、すでにキティやマイメロなどは定着していたけれど、まだ「ゆるキャラ」なんて言葉はなく「ご当地キャラ」に至っては発想すらなかった。文房具メーカーなどがキャラクターを生み出すことに必死になっていたこの頃、少女たちはキャラクターそのものに飢えていたのだ。

 アラフォーにとっては「かわいかった」「欲しかった」オサムグッズだが、キャラが蔓延する現代を生きるイマドキの少女たちには、どのように映るのだろうか?

 そういう意味で同書は、日本に暮らす少女たちのキャラクター観の変遷を知る上でも、意義深い一冊だと言えるかもしれない。

文=今井順梨