【閲覧注意】見なければ良かった…現代の“人間の怖さ”を描いた渾身の一作『外れたみんなの頭のネジ』

マンガ

更新日:2020/9/9

『外れたみんなの頭のネジ』(洋介犬/泰文堂)

 わずか30秒で背筋を凍らせるようなホラーを量産するマンガ家がいる。洋介犬(ようすけん)という奇妙なペンネームで活躍するこの作家は、ブログ「イヌギキ」でホラーテイストのショートショートを発表。幽霊、サイコ、不条理、創作、実話とジャンルを問わずに生み出される作品はネット上でも話題を集めている。

 そんな洋介犬さんの新作が、11月12日(土)に発売された。それが『外れたみんなの頭のネジ』(洋介犬/泰文堂)。タイトルからして、なんとも不穏な気配を漂わせている。本作には、連載型新作マンガ配信サービス「GANMA!」にて発表されたさまざまなショートストーリーが収められているため、洋介犬さんの世界観を思う存分に堪能できる一冊だ。

 本作の語り手は、女子中学生・ミサキ。あるとき、街中の人が少しずつ狂ってしまった彼女は、その謎を解き明かそうとする。そこへ現れたのが、執事の格好をした不可思議な悪魔。彼はミサキに、「狂っているのはお前じゃないのか?」と告げる。狂っているのは自分か、周りか。ミサキはおかしくなってしまった世界を元に戻すため、悪魔に街で起こった事件を一つひとつ語りだす。

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 自分のストレスを肩代わりしてくれるぬいぐるみと登校する少女、決して口にしてはいけない「ビクの生首」という怪談、子どもの写真を舐め回し「食人欲求」を抑える女性、自殺の実況動画が収められたビデオテープ……。ミサキが見聞きし、ときに巻き込まれてしまうこともあるのはこういったおぞましい事件ばかりである。サイコな人々が見せる表情は、思わず鳥肌が立つくらい不気味。幽霊よりも人間が怖い。本作はそう実感させられるストーリーの宝庫だ。

 そして、本作は連載モノの体を成しているため、これまでに洋介犬さんが発表してきたショートショートよりもさらに奥行きを増している。毎回提示される恐怖のほか、「世界はどうして狂ってしまったのか」という軸となる謎があり、読み進めるごとに背中に冷たいものが走るだろう。もちろん、一話で魅せる手腕は相変わらずなのでどこから読んでも楽しめるが、せっかくならば第1話から読み、ミサキとともに不可解な街の秘密を追いかけてもらいたい。

 ちなみに、11月27日(日)、TSUTAYA三軒茶屋店にて本作発売を記念したトークイベントが開催される。怪談家としても知られる、お笑いコンビ「ありがとう」のぁみさんと洋介犬さんが対談するとのことで、どんな怖い話が聞けるのか楽しみだ。後日、イベントレポートをお届けするので、ホラー好きの方々はお楽しみに……!

文=五十嵐 大

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