脱・野菜不足! フランス人から学ぶ、いつもの野菜料理がグンと美味しくなる簡単コツ

食・料理

公開日:2016/11/23

『フランス人は、3つの調理法で野菜を食べる。』(上田淳子/誠文堂新光社)

 現代を生きる我々にとって、「どうやって十分な量の野菜を食べるか」というのはかなり重要な問題だ。「健康のためには野菜をたくさん食べた方がいい」というのは分かってはいるものの、統計を見る限り、多くの日本人は野菜不足に陥っている。

 もっとも忙しい現代人にとって、日常的に野菜をたくさん食べるのは難しい。外食先での補給は期待できないし、生野菜のサラダや煮物など市販の惣菜は手軽で便利ではあるけれど、いちいち買うのは高いし、第一飽きてしまう。コストの良さ、毎日食べても食べ飽きない味を求めるならば、やはり自炊がベストだ。ただ調理に時間はかけられないし、手間のかかるものは面倒で作りたくない……。

 ならば、テクニックなしでさっと作れて、しかも美味しい! そんな素敵なレシピがたくさんあれば、毎日の野菜とのお付き合いももっと気楽なものになるのではないか。そこでおすすめしたいのが、本書『フランス人は、3つの調理法で野菜を食べる。』(上田淳子/誠文堂新光社)だ。フランス家庭料理の特徴といえば、素材の持ち味を生かしたシンプル調理。野菜料理もその例外ではない。著者によると、フランス料理における野菜の主な調理法は3つしかないらしい。それが、サラダ、エチュベ、オーブンである。

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 1つ目のサラダは、野菜などの具材にドレッシングをからめて作る、いわば「和え物」だ。日本の「サラダ」と違って、野菜に均等に調味料が馴染むのが魅力。またドレッシングを後からかけない分、ドレッシングをかけすぎないで済むのもいい。肉や魚などを合わせた「ボリュームサラダ」なら軽めの主菜にもなる。1種類の野菜を使って作る「シンプルサラダ」はサイドメニューに最適だ。

 2つ目のエチュベはフランス独特の調理法で、オイルを使った「蒸し煮」のことを指す。野菜の旨味を引き出すために、くたくたになるまで火を通すのがフランス流だ。それでも10分以内で火が通る野菜がほとんどなので、意外に時間はかからない。しかも少量の水分で蒸し上げるため、野菜の旨みが逃げずに済む。野菜のスープに使う野菜をこの方法で火を通し、あとでだしを入れて伸ばしてやると、素材の甘みが活きた美味しいスープができる。日本とは違い、フランスでは水が貴重品であったため、少量の水で野菜を調理するのが一般的になったのではないか……というのが著者の推論だ。

 3つ目のオーブンは、オーブンを使って野菜をローストないし蒸し焼きにする調理方法。野菜を切って調味料やソースをかけたら、あとはオーブンにお任せ。肉や魚を一緒に焼けば、主菜も同時に完成する。

 つまりフランス人にとって野菜とは、和えるか、蒸すか、オーブンに放り込むか、のいずれかの手段で食べるものということになる。生で食べるものは和えるだけ。火を通すものは、火にかけたりオーブンに入れたりしたあとは基本的に放置である。実際に手を動かす時間が、少なめなのが嬉しい。

 実際に、本に載っていた人参のエチュベを作ってみた。人参をバターと少量の水で蒸し煮にし、塩胡椒で味つけしただけのシンプルレシピだ。人参を切って鍋に放り込むまでが、約3分。火をつけてしばらくすると、クッキーを焼いているような甘い匂いがキッチンに漂ってきた。人参が柔らかくなったタイミングで蓋を開け、余計な水分を飛ばす。最後に人参を焼き付けて焦げ目をつけ、塩と胡椒を適当に振ったら完成だ。

 甘さ控えめの人参グラッセのような、優しい味わいの一皿ができた。バターのまろやかな風味が人参に絡み、人参特有のクセを和らげる。そして砂糖を入れなくても十分甘い。調理時間は15分ほど。これなら主菜を含めて30分以内にご飯の準備が終わりそうだ。

 同じ素材でも、生で食べるか、もしくはどんな風に火を通すかで味わいはまったく変わる。最小限の手間と調味料で、野菜の旨味を最大限に引き出すのがフランス流。日本の家庭料理、炒め物や煮物もいいけれど、簡単で美味しいを目指すなら大いに参考になりそうだ。しかも、おもてなし料理にも使えそうなおしゃれ感も漂う。料理ビギナーから料理好きまで幅広い人におすすめしたい1冊だ。

文=遠野莉子