東出昌大の妻として、双子の母として、女優・モデルとして…杏の多忙な3年半の日々

芸能

2016/11/26

『杏の気分ほろほろ』(杏/朝日新聞出版)

 モデルとして、女優として、妻として、双子の母として、多忙な日々を送る、杏。そんな彼女が2013年1月から朝日新聞のデジタル版限定で連載していたエッセイの待望の書籍版『杏の気分ほろほろ』(朝日新聞出版)が今大きな人気を集めている。朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』から日テレ系ドラマ『花咲舞が黙ってない』、フジテレビ系ドラマ『デート』、さらには2016年11月に公開された映画『オケ老人!』の撮影秘話まで女優として駆け抜けた3年半の日々が綴られたこの作品は、とてもみずみずしくのびやかな文体で当時のことを掲載。さらに連載での内容に加えて、今だからこそ記せる「その後の話」を大幅加筆。3年半のなかで、俳優・東出昌大との結婚、双子の母となるなど、プライベートでも大きな変化を経験した杏が日々の生活を丁寧に描き出しており、多くの読者がその内容にあたたか な気持ちにさせられている。

 杏は、元々はモデルとしてこの世界にデビューした。今や女優としても順調なキャリアを歩む彼女だが、当初は、モデルをしながら女優として仕事をすることに悩んでいたという。初めてドラマの仕事が舞い込んできた時には、「覚悟のないままモデルをしながら簡単にお芝居の世界に足を踏み入れて良いわけがない」と感じ、ためらいを感じていた。しかし、その転機となったのは、福山雅治からの言葉だったという。

「でもさ、自分の元に仕事が来たってことは、自分と仕事してみたいっていう想いを持った人がいるってことだよね」

「だから、その仕事をくれた人の想いにまず応えるというのは、一つの答えなんじゃないかな」

 その時はまだ、自分が女優としてやっていきたいのか、という気持ちはわからなかったし、言い切ることができなかった。だが、福山からの言葉は、杏にとって、目からうろこが落ちる思いがし、「一つひとつ、想いに応えながら精一杯いただいたことに挑戦してみよう!」と思えたのだという。

 そんな福山の言葉もあり、杏は着々と女優としてキャリアを順調に積みあげていく。朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』では、ヒロイン「め以子」に抜擢され、食を中心に紡がれる物語を好演した。め以子は、いつも美味しいものを食べるにはどうしたらいいか、大切な人たちに美味しいものを食べさせるにはどうしたらいいかばかりを考えている女性だが、杏自身にもそういう側面があったらしい。『ごちそうさん』はNHK大阪放送局制作であったため、スタッフには関西出身者が多く、作品内で登場する納豆を受け付けないという人が多かった。そこで杏は、大正時代を舞台にする物語のなかで登場した納豆巾着揚げのレシピに、現代の世で手に入るようになった調味料や具を加えて「平成の納豆揚げ」を作って食べてもらおうと画策。杏の手作り料理にスタッフたちは「……これならまぁ、食べられる」という少し地味な感想だったというが、食べてもらえた時 は、とてつもなく感動したという。

 時折登場する、夫・東出昌大とのエピソードも微笑ましい。『ごちそうさん』の撮影の合間に、淀川に鰻釣りに出掛けたこと。結婚前に2人で出掛けたベトナムの旅。仕事について夫と語り合う何気ない会話。子どもをあやす時 に2人で歌う謎の歌…。仕事もプライベートも丁寧に時を過ごしていく杏の姿勢に、ほっこりとする。見習いたいなとすら思う。激動の日々を描いているのにもかかわらず、あたたか な気持ちにさせられるこのエッセイ、ぜひあなたも手にとってみてほしい。

文=アサトーミナミ