プレゼン前の不安や緊張も怖くない! あがりやすい人に教えたいメントレ術

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公開日:2016/11/25

『本番に強くなる 演奏者の必勝メンタルトレーニング』(ドン・グリーン:著、岩木貴子:訳/ヤマハミュージックメディア)

 誰かの前に立って、何かを発表するのが苦手な人は多いのではないか。いわゆる“あがり症”の話だが、とはいえ、仕事をする中では会議やプレゼンの場において、報告する機会というのはけっこう付きまとってくる。

 そんなことを思い浮かべながら、手に取ったのが『本番に強くなる 演奏者の必勝メンタルトレーニング』(ドン・グリーン:著、岩木貴子:訳/ヤマハミュージックメディア)という書籍である。タイトルからも分かるとおり、本来は音大生やオーケストラの演奏者向けに書かれた本である。

 しかし、米国陸軍特殊部隊を経た……という経歴はさておき、メンタルトレーニング術を編み出したという著者の方法は、ビジネスパーソンにも応用できる部分もある。

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発表前のリラックスには“左脳”から“右脳”へ意識を傾けるのが重要

 演奏を前提に、音楽家向けに“本番”へ向けた内容を解説する本書。しかしながら、視点を変えればどの人にも当てはまりそうな情報がそこかしこにちりばめられている。

 例えば、誰かの前に立つ上でのストレスはそのひとつだ。本書では、ストレスとはそもそも「余計なプレッシャー」をかけるものであり、その原因は人それぞれの「想像上の恐れ、怯え、危険、驚き、ショック」などにあると解説している。

 それを緩和してくれる方法のひとつが、本書の提示する「センタリング」と呼ばれるストレス対策である。人間は、左脳が働いていると「恐れや心配、疑念」をよりいっそう自覚するというのが本書の見解である。したがって、静かに集中した状態を取り戻すためには、左脳に偏ってしまった意識を右脳へ切り替えることが必要になってくる。

 これを実行するには、まず、椅子に座り手の力を抜きひざの上に置く。そして、首を地面を見るようにかしげたのちに、腕と手を体の両側にやりだらんと下に下ろす。椅子がなければ、足を肩幅に開いて立った状態でもよいので、過度な緊張を感じる場合には、発表前にやってみるのもきっと有効である。

発表中の失敗には“ミスを受け入れる覚悟”で対処する

 発表がしくじってしまった。そんなときは、発表中にもかかわらずしどろもどろになってしまったり、終わった後に何日にもわたって落ち込んでしまったりしてしまう。はたまた、その日の夜に失敗の恥ずかしさから、やけ酒に走ってしまうなんて人もいるのではないだろうか。

 しかし、そんなときはまず「ミスに対してどんな反応をしているか」と自分のパターンを振り返り、失敗した場合に備えて「素早く効率的に調子を取り戻すこと」が必要だと本書は唱える。

 そこで提示されているのが、以下のような方法である。

1)ミスを受け入れる
間違いを犯したのは事実であるため、事態を悪化させないために受け入れる。

2)今この瞬間に戻る
ミスした原因を探ろうとすると集中力が低下するため、ひとまず集中する。

3)「キーとなる筋肉」をリラックスさせる
間違えると人は筋肉が硬直するため、体を和らげようと意識してみる。

4)緊急時のプロセス・キューを使う
万が一に備えて落ち着く言葉を書いておき、自分の手元に置いておく。

5)妥当なレベルのパフォーマンスを心がける
失敗の被害を最小限に食い止めるため「そこそこうまくやろう」と意識する。

 初めから怖気付かない性格ならまだしも、多くの人たちは何かを発表する場において、不安や緊張に悩まされることも少なくないだろう。そんなとき、対処法があると知っているだけでも、気持ちがわずかでも落ち着くのではないだろうか。あがりやすいと自覚している方には、きっと役立つはずである。

文=カネコシュウヘイ