先行き不安ないまの時代に、いちばん重要な「○○力」って?

ビジネス

公開日:2016/11/29

『考える力をつける本(講談社α新書)』(畑村洋太郎/講談社)

 ネットの発達、環境問題、世界情勢――いま、私たちを取り巻く世界は、過去に経験したことのない、さまざまな新しい問題に直面している。「正解のない問題に対し、そのたびに自分たちが最善と考える答えを出していくこと」が求められている時代なのだと『考える力をつける本(講談社α新書)』(畑村洋太郎/講談社)の著者は言う。そして、そんな時代を生きる私たちに、いまいちばん需要な『力』は、「考える力」だと断言する。

 本書は、そんな「考える力」=「まわりの状況を自分なりに分析して、進むべき方向を自分の頭で考え、自分で決める力」をつけるため一冊。「考える」とはどういうことか、から始まり、考える力をつける準備、訓練、実践、力を高める方法まで、企画や問題解決など、仕事や人生のさまざまな場面で使える「考える力」のつけ方を具体的に教えてくれる。

 「考える」とは「考えをつくる」作業であると著者は言う。その作業はまず、必要な要素(タネ)を自分の頭の中から出してみることから始まる。これを「要素の摘出」という。次にこれらの要素を組み合わせて、ある構造をつくる。このときにつくられる構造はひとつではなく複数で、この複数の構造をさらにつなげて、それらを包含する全体構造をつくりあげる。詳しくは本書をお読みいただくとして、これが「考えをつくる」作業の流れで、ここでいう、要素(タネ)は、いわゆる知識やデータを指す。タネはすべての源である。

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 著者自身も実践している「考えをつくる」ためのタネの入手方法を、本書からひとつ紹介しよう。

 それは、「三現」を大切にすること。三現とは「現地」「現物」「現人」のことで、意味は、自分で現地まで足を運び、現物を直接見て触れて、現場にいる人から話を聞くことだ。いまはネットをはじめとするメディアで、どんな情報も手に入るし、それらの情報も考えるタネのひとつとしては有効だが、実感を伴ったネタには及ばない。

 つまり、目的意識を持って行動し、実際に体験しながら自分の頭で考えることが重要で、考えるだけでなく、そのときに感じたこと、湧き上がってきた感情も大切にする。そうすることで、タネはより自分の中に取り込めるようになって、必要なときに引き出せるようになる。すべての事象を「三現」にあてはめるのは不可能だが、メディアの発信する情報をタネとして利用する場合でも、受け身にならず、自分からタネを引き出す意識で情報に接するのが重要だ。

 「考えをつくる力」は、正解のない問題にぶつかり、仮説検証を繰り返し、自力で答えを見つける中で培っていくしかない。地道な努力の繰り返しだが、実践してみる価値はある。本書の手法で考える力をつけ、自分の頭で悩み考えることで、あなたの人生や仕事が大きく変わるかもしれないのだから。

文=波多野公美