「びるびるびるびる むるむるむるむる」人気絵本作家・ミロコマチコ最新刊は、不思議な語感と力強い筆づかいで、獣としての本能を呼び覚まされる!

文芸・カルチャー

2016/11/29

『けもののにおいがしてきたぞ』
(ミロコマチコ/岩崎書店)

 「ここは けものみち むにむに じょわじょわ くさばなたちがさわいでる」――不思議な語感の一文ではじまる絵本『けもののにおいがしてきたぞ』(ミロコマチコ/岩崎書店)。デビュー作『オオカミがとぶひ』で日本絵本大賞を受賞し、その後、あさのあつこ『バッテリー』にも授与された小学館児童出版文化賞などを受賞し精力的に作品を発表している、注目の絵本作家の最新刊だ。

びるびるびるびる むるむるむるむる
ペテペテペテペテ ザーゾーザーゾー
あめ あおい

 ミロコマチコの描く世界は独特だ。薄暗いジャングルとおぼしき場所にうねる、けものみち。その情景からたちこめるにおい、音、てざわりや空気、そのすべてを短い言葉と力強い筆遣いで表現する。そこで何が起こっているのか、どんなけものが潜んでいるのか、くわしい説明はほとんどない。ほとんどないのに、なぜかわかる。ゆらりと現れる大きな影が放つ獰猛さも、雨うつジャングルに充満するたくさんのいのちの気配も。そう、ミロコマチコが描いているのは“いのち”そのものだ。

 動植物の圧倒的な存在感がどのページにもあふれているから、読者はついページをめくってしまう。気圧されるように、引きずり込まれるように。そして時折書かれる「けもののにおいがしてきたぞ」の一文に、ついどきりとしてしまうのだ。まるでページから獣が飛び出してくるのではないかという迫力が、読む者の心をつかんで離さない。

 だが描かれるけものみちは、ただ怖いだけじゃない。獣が獰猛なだけではないように。なかには優しく、安らかな生き物もいるだろう。けものみちは誰だって――人間だって通過することができるのだから。ページをめくりながら読者はときに、はっとその静けさに心奪われる。美しい光景に見とれることもあるかもしれない。すべては表裏なのだ。ミロコマチコの荒々しく力強い筆致は、ときに風が凪ぐような静けさに変わる。カラフルな色遣いをほんの少し変えるだけで、空気が一変してしまう。その変化もまたいのちそのものに感じられるのが、ミロコマチコのすごいところなのだ。

 そしてほっと和んだ次の瞬間、やはりあれがやってくる。――けもののにおいがしてきたぞ。そうして読者は再び、ジャングルの緊張感に包まれてしまう。

 ただならぬ緊張感と、いのちのにおいが凝縮された本作を読むことは、まさに“体験”だ。人が本能的にそなえている、大地への、生き物への想像力と直感をかきたてられる。感性の敏い子供たちは隅々に至るまでの描写に息をのむだろうし、日々に忙殺されがちな大人たちは自分たちが置き去りにしてきた何かを思い出し、はっとさせられるはずだ。自分の内側に潜むいのちを揺り起こされる、迫力に満ちた一冊だ。

文=立花もも