安楽死事件で心を失った女医に光を与えたものとは? 直木賞作家・桜木紫乃『ワン・モア』のスピンオフは本編の7年後を描く。

文芸・カルチャー

2016/12/6

 直木賞作家・桜木紫乃さんの『ワン・モア』のスピンオフ作品「ワン・モア・ステップ」(全5話)が無料公開される。

 JTが運営するWEBサイト「ちょっと一服ひろば」での公開となるが、第1話だけは雑誌『ダ・ヴィンチ』1月号と「ダ・ヴィンチニュース」の特設ページでも公開される。

 本編の『ワン・モア』に収録された「十六夜(いざよい)」は、患者の孫娘の懇願から安楽死事件を起こし、離島に飛ばされた女医・柿崎美和の物語。人間不信に陥っていた美和は、傷の手当のために病院を訪れた漁師・昴といつしかカラダを重ねあうようになる。

 昴はかつて天才スイマーと呼ばれていたが、オリンピック予選でドーピングが発覚し失脚、心に深い傷を負っていた。彼は既婚者であり周囲にも二人の関係は知られていたが、あえてそうした状況からは目を逸していた美和だった。

 そんな寄る辺ない日常を送る美和のもとに、ある日、高校時代の友人・滝澤鈴音から連絡が入る。鈴音はがんの余命宣告を受けていた。

「うちの病院を頼みたいの」
 彼女に残された時間は思った以上に少ないようだった。

 今回のスピンオフ『ワン・モア・ステップ』で描かれたのは、本作から7年後。友人・鈴音から滝澤医院を託された美和は果たしてどんな日々を生きているのか―。

 高校の同級生・八木浩一と北海道のゲレンデに立つ美和。鈴音が逝ってから、すでに2年が経とうとしていた。美和と鈴音と八木、彼らは同じ高校、同じクラス、同じ志望校の仲間だったが、八木だけは経済的な理由で医学部を諦め、放射線技師となった。

 鈴音を亡くして以来、自宅に引きこもりがちな美和を連れ出したのは、そんな八木だった。

「ひとりで抱えるの、もうやめろよ」
「なんも抱えてないよ。抱えるもんがないから、周囲があんたと一緒にさせようと躍起になってるんじゃないの」

「本当にわかってんなら、月に一回くらい外に出ろ」」

 美和とともに、この男も長年の友を失ったのだ。高校時代から憧れ続けた鈴音の隣には、いつも夫がいた。最期まで彼女は夫から心を逸らさなかったし、誰もがそんな彼女を愛したのだ。

⇒「ワン・モア・ステップ(第1話)」(ダ・ヴィンチニュース)
⇒JT「ちょっと一服ひろば」