「神経質な人には、怪異が近寄ってくる…」ホラーマンガ家・洋介犬×怪談家・ありがとうぁみのホラートークショーで会場が凍りついたワケ

アニメ・マンガ

2016/12/2

『外れたみんなの頭のネジ』(発売元:泰文堂 発行元:アース・スター エンターテイメント)

 先日、レビューしたホラーマンガ家・洋介犬さんの新刊『外れたみんなの頭のネジ』(発売元:泰文堂 発行元:アース・スター エンターテイメント)。11月27日(日)、本作の発売を記念し、TSUTAYA三軒茶屋店にて“怪談トークイベント”が開催された。対談相手を務めたのは、お笑いコンビ「ありがとう」のぁみさん。実は、ぁみさんも怪談家として活動しており、9月に自身の体験談をまとめた『怪談日記~恐い体験をしすぎて怪談家になってしまった芸人~』(イカロス出版)を上梓したばかり。ホラー界隈で活躍する2人のイベント、はたしてどんな内容になるのだろうか……。

 イベント会場へ突撃したところ、スタートを前に少し緊張した面持ちの2人を発見。そこで、イベント前に少しだけお話を伺ってみた。

 まず取材に応じてくれたのは、洋介犬さん。サイコな人ばかりが登場する本作を執筆するきっかけとなったのは、「よりリアルな作品を描いてみたかったから」だという。

「最近、よく『生きている人間の方が怖い』と言われますよね。隣人やすれ違う人が怖いって。それって、恐怖との距離がより縮まってきているということだと思うんです。だからこそ、そこに焦点を当てた作品の方が、より身近に感じられるリアルな作品にできるんじゃないかな、と」

 確かに、『外れたみんなの頭のネジ』に登場する“サイコな人々”は、身近にいないとは言い切れないリアルさを持っている。それは、洋介犬さんが実際の事件からインスピレーションを得て作品に活かしていることも大いに関係しているだろう。

「ぶっちゃけ、いくつかのエピソードは実際に起きた事件の起承転結のうち、“起”だけを拝借して、僕なりの味付けをして描いているんです。第15話、16話でモチーフにした“自殺実況ビデオ”もそうです。実際にそういう動画があるという都市伝説を調べていく中で生まれた話でした」

 次に、今回のイベントで対談相手となるぁみさんへのインタビューを敢行。『怪談日記~恐い体験をしすぎて怪談家になってしまった芸人~』でまとめた話はすべて実体験というぁみさん。どうしてそんなに怪異に遭遇するのだろうか。

「最近、周囲でもよく議論になるんです。『ぁみの怪異遭遇率が高すぎる』って(笑)。先日、島根県と鳥取県で3daysの怪談ライブを開催したんですけど、3日間連続で心霊現象が起きちゃって。もはやみんな笑うしかなかったんですよ」

 そんなぁみさんも、実はかなりの“ビビリ”なんだとか。

「心霊現象はそりゃ怖いですよ! 僕はとにかくビビリなんで(笑)。だけど、自分が怖いと感じたことをそのままのテンションで伝えるから、聞いている人たちも怖がってくれるんでしょうね。とはいえ、僕の体験談の中には、ちょっと笑えるようなものや心温まるようなエピソードもあるんです。ぜひ多くの方に読んでいただきたいです」

 非常に興味深いホラー観をお話してくれた2人。ここでイベント開始時間が迫り、会場にはホラー好きのお客さんが集まりだした。

 本イベントでは、洋介犬さんとぁみさんがとっておきのホラー話を3本ずつ披露してくるとのこと。さて、いったいどんな話が聞けるのだろうか。まず口を開いたのはぁみさんだった。

 ぁみさんが1本目に披露したのは、若手の頃に芸人仲間とルームシェアをしていた“事故物件”での怪談。その物件では数え切れないくらいの怪異に遭遇したとのことで、次々と不可解な現象を語りだした。次第に会場の温度も下がる。そして最後に、思わず物件がある場所を漏らしてしまう一コマも。そう、その事故物件はいまだにあるという。

 続いて洋介犬さんが話してくれたのは、サイコな人間が登場するホラー。自身が運営するブログに寄せられた読者の体験とのことで、実にリアル。義理の両親に育てられた投稿者が体験したエピソードは、最後の最後で人間の恐ろしさを感じさせるものだった。

 その後も交互に怪談を披露する2人。そして、最後に洋介犬さんが話してくれたエピソードに会場は凍りつくことになる。

 専門学生時代、洋介犬さんにはJくんという友人がいた。彼は非常に穏やかな性格で、決して他人と口論しない。洋介犬さんには、それが度を越しているようにも見えた。そこで「どうして自分の意見を主張しないのか」と尋ねた洋介犬さん。するとJくんはこう口を開いた。「僕と口論した相手は、みんな死ぬんだ」。詳しく聞いてみると、過去にJくんと口論した人間は、みな不可解な死に方をしているというのだ。得体の知れない恐怖を感じた洋介犬さんは、それ以来、Jくんとも疎遠になってしまったそう。

 しかし、この話はここでは終わらない。次の洋介犬さんの言葉に、会場は戦慄した。

「実はですね、Jくんと同じことが、最近僕の周りでも起きているんです」

 洋介犬さんはまだ30代。にもかかわらず、同級生が何人も亡くなっているという。しかも、その相手とは過去に口論したことがあったそう。つまり、Jくんの身に起きていたことが、洋介犬さんに“感染”しているのだ。

「もしかしたら、この話はここに集まってくれたお客さんにも感染するかもしれません……」

 まさかの展開に耳を疑いつつも、怪談トークイベントは幕を下ろした。

 その後、サイン会が行われ、一人ひとりのお客さんに笑顔を向ける洋介犬さんとぁみさん。ホラー界で活躍する2人を前に、みんな嬉しそうだったのが印象的だ。中には、恐怖と嬉しさが入り混じった表情を浮かべているファンの人もいたが。

 ちなみに、わずか1時間ほどのイベント中にも、不可解なことが起きた。マイクの電源を切っているにもかかわらずハウリングが発生、進行中なのに不自然に途切れてしまうマイク、そして、誰もいない本棚から突如落下する書籍……。怖い話をしていると霊が寄ってくるとはよく言ったもの。もしかすると、会場に怪異が引き寄せられていたのだろうか。

 イベント終了後の帰り道、洋介犬さんが教えてくれた怪異との向き合い方がふとよぎった。

「“鈍感”であることが、怪異に対する最大の防御策なんです。たとえば、何か変な物音がしたとき、『今の音は何だろう?』と気にする人と、『風の音でしょ』と気にせず寝ちゃう人とわかれる。前者のように神経質に反応してしまう人は、怪異に遭遇しやすいんです。怖い目に遭いたくなければ、鈍感でいることが重要だと思います」

 帰り道、何だかやけに寒さを感じたが、それはきっと冬のせい。“鈍感力”を磨こう。そう決意を新たにさせられるイベントだった。

取材・文=五十嵐 大

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