山本弘 “怪獣がいる世界”をリアルに描いた短編集

公開日:2012/1/2

 “アニメ”と並ぶ、日本ならではのエンターテインメント、それが“怪獣”。かつて『ゴジラ』や『ウルトラQ』などの映画やテレビ番組で次々と新しい怪獣たちが登場し、“怪獣ブーム”なる社会現象を引き起こした。現在活躍するクリエイターには、そのブームの影響を受けた人は少なくない。怪獣小説『MM9』の作者・山本弘さんもその一人だ。

 「『ウルトラQ』がはじまったとき、僕は9歳。そのころから怪獣が大好きで、それがSF作家を目指すきっかけなんです。なので、怪獣小説を書くことは、恩返しの意味もあるんですよ」(山本さん)

 映画やテレビ作品では怪獣モノがたくさんあるのに、怪獣をメインとした小説が少ないことに、かねてから不満を抱いていたという山本さん。その欲求不満を解消すべく取り組んだのが、2007年刊行の『MM9』だった。怪獣の実在が前提となった世界。怪獣は台風や地震と同じように自然災害の一種とされ、主人公である気象庁特異生物対策部のメンバーが、自衛隊などの協力を得て怪獣に立ち向かう──というのが主なストーリー。

 「もともとは、怪獣好きの仲間との冗談から出てきた発想なんです。『ウルトラマン』のシリーズで毎週違う怪獣が出てくるけど、そういう怪獣たちに名前をつけているのは、誰なんだという話になって。そのとき、台風のように気象庁がつけているんだなんて、冗談をいいあっていたんですね。その年の最初に出現した怪獣は怪獣1号だとか。怪獣が頻繁に出現する世界では、そういう対応が自然だろうという発想が、最初にあったんです」

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 今回刊行された『トワイライト・テールズ』(角川書店)は、『MM9』の番外編のような位置づけで、4話からなるオムニバス作品。気象庁特異生物対策部のメンバーも登場するが、ここでは脇役でしかない。そして、物語は怪獣メインというよりは、人間の生き様に重きが置かれている。

 また、作品の随所に過去の特撮作品へのオマージュが散りばめられており、ウルトラマンや怪獣に熱中した世代は、思わずニヤリとさせられる。たとえば4話目のタイトルは、『ウルトラマン』の第8話「怪獣無法地帯」と同じタイトルになっていたりする。

 「タイトルは『怪獣無法地帯』ですけど、実は同じ『ウルトラマン』の話でも、別のエピソードへのオマージュなんです。(中略)ほかにも、巨大なゴリラと女ターザンみたいなキャラクターが一緒に行動するというのは、『北京原人の逆襲』とか『猿人ジョー・ヤング』という海外の特撮映画がモデル。怪獣好きなら分かるような、いろんなモチーフが混ざっているんです」

ここまで元ネタを明らかにするのはまずいような気もしてくるのだが、山本さんが過去の特撮作品をモデルとして怪獣小説に登場さ
せるのには、然るべき理由がある。しかし、ネタバラシにもなるので、ここでその理由を開陳するわけにはいかない。
気になる方には、『トワイライト・テールズ』の前に、『MM9』を読むことを強くおすすめする。

(ダ・ヴィンチ1月号 今月のブックマークEXより)