パワハラ、セクハラ、サービス残業当たり前! 社員はクセモノばかり! 入社した会社がブラック企業だったら、あなたはどうしますか?

文芸・カルチャー

2016/12/6


『ブラック企業に勤めております。』(要はる/集英社)

 連日深夜、朝まで及ぶ残業に度重なるセクハラやパワハラ…

 世間でこれだけ問題視されようとも、過重労働や違法労働が当たり前という企業は後を絶たない。就活でいくら気をつけていても、「実はブラック企業だった」と入社してからでないと気が付かないケースも少なくはない。

 『ブラック企業に勤めております。』(要はる/集英社)は、タウン情報誌を発行する企業に採用された25歳OLの奮闘ストーリー。営業部隊の補佐をする事務員として働き始めた彼女が目の当たりにしたのは、面接18社目にしてようやく採用されたこの会社の超絶ブラックな姿だった。

 物語の始まりからして、この本は衝撃的だ。毎朝定時前から始まる朝礼では、支店長がゴミ箱を蹴り飛ばし、契約件数の少なさをなじり続ける。1時間近く続いた支店長の不毛な演説がようやく終わるかと思えば、今度は、社員全員を立ち上がらせて、「会社は社会の反対です!」と声高に叫ぶことを強要する。

「漢字の会社を引っ繰り返すと社会になるだろ? 会社は社会の逆。つまり、社会では是とされていることが、会社では非……かもしれない。あるいは社会ではダメなことが、会社ではOKになることもある……かもな」

「社会の常識になんか、とらわれるな。人がやらないことをやれ! 何回も訪問して、何時間でも粘れ! 土下座してでも契約とってこい!」

 理不尽な説教。支払われない残業代。すぐに辞めていく新入社員。度重なるセクハラやパワハラ…ああ、こんな会社は、頼むから物語のなかだけにしてほしいと心から願ってしまう。

 そして、この会社の一番の問題点は、社員たちが揃いも揃ってクセモノばかりであることだ。三白眼で左頬に古傷のある一見ヤクザにしか見えないセクハラ&モラハラ支店長・川原。子泣き爺のような独特な顔つきのため、行く先々で不審者に間違われてしまう支店長代理・母良田。女はすべて自分に興味があると勘違いしているナルシスト主任・木村。忘れ物が多く、いつもどこか抜けている森永。得意技は「丸投げと逃走」で、どんなに注意をしても反省しない新入社員・柚木…。そんな彼らをサポートしなくてはならない立場の夏実の毎日は戦争そのもの。1日が恐ろしいほど、瞬く間に過ぎていき、事件も度重なっていく。

 もしも、何かの間違いでブラック企業に入ってしまったら…。気づいた段階で、すぐにでも辞めるのが一番真っ当な道だろう。だが、夏実は、その道は選ばない。現実世界では、それは正しい道ではないのかもしれないが、劣悪な環境のなかで悩みながらも強く生きる彼女の姿は勇ましく目に映る。彼女は、逆境をまっすぐにはねのけ、時には、おかしいことをおかしいとしっかりと主張し、ブラック企業のなかで生き延びようとする。何だかんだ気が利く優秀な彼女は次第に他の社員たちから慕われていくのだが…。彼女が頑張れば頑張るほど、慕われれば慕われるほど、どうしてか少し心配になってしまうのはなぜだろう。

 仕事に思い悩んでいる人はぜひともこの本を読んで自分の働き方、仕事への取り組み方を見直してほしい。人は何のために働くのか。何を大切に働くべきなのか。ブラック企業のなかで奮闘する彼女の姿を見ていると、その答えが見えてくる気がする。

文=アサトーミナミ