村上春樹が海外で受ける理由

村上春樹

2012/1/5

 ダ・ヴィンチ1月号の「海外出版レポートNEO」という企画で、筆者の新元良一は、村上春樹の海外人気について下記のように記している。

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 2カ月ほど前、アメリカの大手ネット書店から、新刊案内のEメールが送られてきた。書籍リストには、10月末に出版予定の村上春樹の『1Q84』も入っていた。

 90年代より村上の小説はファン層を大幅に拡大してきたが、リストのトップに上げられる目立つ位置であると同時に、「今秋の話題書」的な扱いで、あたかも、アメリカの大物作家が待望の新作を発表したかのような印象さえ受けた。
 欧米での出版日が近づき、各国のマスメディアで『1Q84』出版関連のニュースが出たが、最もインパクトがあったのが10月23日付のNYタイムズ・マガジンに掲載された記事だろう。
 一般読者向けの同雑誌で、しかも第一特集(表紙には、村上の超クローズアップ写真!)という扱いから、外国文学の枠を越え、『1Q84』とその著者がいかに注目されているかが証明される。
 特集記事を書いたサン・アンダーソンは、同誌専属の書き手の中でも、かなり上のポジションにいる批評家だ。

 そんな彼が今年、出版前の『1Q84』を読んだ上で、村上春樹へのインタヴューへと日本に向かった。
 村上と数日間行動を共にするアンダーソンは、「ムラカミの描く東京に比べ、現実の東京は自分にとってあまり居心地がよくない」のに気づく。すなわち、村上が創造する不思議さが彼を魅了していたのだ。

 「もし不思議な状況、不思議な事を見たいなら、自分の内面に深く入っていかなくてはならない」、そうつぶやく村上。そしてアンダーソンは東京郊外にある作家の家に招かれ、揺れるように飛翔し、まるで共存するような摩訶不思議な動きの、2羽の大きな黒い蝶を見た。

「蝶なんて、日本にはたくさんいる。見かけるのは珍しくない」。
 記事の最後に記される村上の言葉は、筆者が日本の、日本人の不可思議さにようやく気づいたことを示唆する。

(ダ・ヴィンチ1月号 海外出版レポートNEOより)