目指せ、全国お雑煮コンプリート!? 全国のお雑煮を集めた、お雑煮好きにオススメの一冊【作ってみた】

食・料理

公開日:2016/12/12

『お雑煮マニアックス』(粕谷浩子/プレジデント社)

 お正月の定番メニュー、お雑煮。全国各地で具材や味付けが違うことは有名だが、どの地域のお雑煮がどんな具材を使っていてどんな味付けなのか、意外と細かくは知らない。そして様々な文化が混じり合い、各家庭によっても具材や味付けは変わってくる。

 先日、そんな47都道府県のお雑煮を80種類も集めた、『お雑煮マニアックス』(粕谷浩子/プレジデント社)という本が出版された。著者は、お雑煮の魅力に取りつかれ、日本各地のお雑煮情報を収集して会社まで立ち上げたというお雑煮のプロ。レシピだけではなく、その背景にある物語まで書かれている。

 お餅もお雑煮も大好きな筆者としては、これはぜひとも食べてみたい……! そこで、インパクトのある、それでいて地域を選ばずに作れそうなものを、実際にいくつか作ってみた。

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1、北海道「揚げ餅玉ねぎ雑煮」(P.4~P.5)


 1つめは、北海道のお雑煮。水、スルメでとった出汁、麺つゆで玉ねぎを煮込み、砂糖を加えて味を調える。餅は2つに切り、油で揚げて加える。北海道では、本来「めんみ」といわれる調味料を加えるそうだが、北海道でしか手に入らないため、本書に沿って麺つゆとスルメ(貝柱でも可)で代用した。

 一見オニオンスープのような見た目でお雑煮に見えないが、甘い汁物が好まれる北海道ではメジャーなのだろうか。煮るか焼くかで分かれる中、揚げ餅というのも斬新だ。玉ねぎの甘みと餅を揚げることで出るコクは相性が良く、シンプルながら濃厚な味わいとなっていた。

2、三重県「味噌凝縮雑煮」(P.54~P.55)


 2つめは、三重県のお雑煮。鍋に出汁と大根、里芋、みりんを入れて20分煮込み、赤味噌を加えて3分の2くらいの量になるまで煮込む。これが「濃縮味噌汁」と呼ばれるお雑煮の素となる。これを具ごと食べる分だけ別の鍋に入れ、水を加えて加熱し、焼いた餅を加えれば完成。

 赤味噌なので名古屋かと思いきや、まさかの三重県。大晦日のうちに煮詰めておき、水で薄めて温めて食べる、という調理法はインパクト大。大根の出汁で赤味噌特有の酸味が和らいでいて、赤味噌のお雑煮も意外とありだと感じた。ちなみに、名古屋のお雑煮はすまし仕立てだそう。

3、岡山県「スルメブリ雑煮」(P.72~P.73)


 3つめは、岡山県。ほうれん草を茹で、ブリは塩をふって焼く。大根をスルメ出汁で煮た後、薄口醤油、塩、餅を入れ、餅が柔らかくなるまで煮る。お椀に盛り、ほうれん草、かまぼこ、ブリ、出汁をとったあとのスルメを飾れば完成。

 スルメ出汁とは、鍋に細かく切ったスルメを加えて一晩置き、火にかけてひと煮たちさせて漉したもの。スルメを出汁に使ったことはなかったが、使っている地域が意外に多いことに驚いた。簡単だが風味がすごくよくなるので、普段の汁物でもぜひとも活用したい。出汁をとったあとは具として活用できるのも便利だ。

4、香川県「白味噌あん餅雑煮」(P.82~P.83)


 最後は香川県。出汁で里芋、金時にんじん、大根を煮て、あん餅を加えて柔らかくなるまでさらに煮る。器に盛り付け、最後にアオサを飾れば出来上がり。

「味噌味の汁物にあんこ!?」と衝撃的な組み合わせ。だが食べてみると、その相性の良さに驚く。白味噌にあんこが溶け出し、甘みにより深みが増す。それでいて、根菜類とも合っている。大分県もあん餅を入れるそうだが、大分県は醤油ベースだそう。

 ちなみに両親が九州出身である筆者の実家は醤油ベースで、白菜、にんじん、大根、鶏肉と餅で作っていた。白菜は入っているのが当たり前だと思っていたが、本書を見る限り、白菜を入れているのは九州地方がメインの様子。他の地域ではほぼ入っていないことに衝撃を受けた。各家庭の当たり前を集めるだけでこんなにも違ったお雑煮が登場するのだから、料理というのは奥深い。

 また、お雑煮というとお正月のメニューという認識だが、基本はスープにおもちを入れるだけなので、日常的に使える簡単レシピでもある。この『お雑煮マニアックス』で、ぜひ全国のお雑煮をコンプリートしてほしい。

文=月乃雫