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第22回「M-1グランプリと風俗業界の密接な関係」/森田哲矢(さらば青春の光)連載

森田哲矢(さらば青春の光)「煙だけでいい…… あとはオレが火を起こす!」

都知事選、リオオリンピック、アメリカ大統領選など、例年よりも色々と大きな出来事があった2016年。
そんな2016年もそろそろ終わりを告げようとしています。

 

広島カープの『神ってる』が大賞を受賞し幕を閉じた新語・流行語大賞。
ゴシップ業界からは『文春砲』や『ゲス不倫』などがあと一歩及ばず涙を飲みました。

 

このコラム内で今年一番好評を博した『ヤリマン2万7千円事件』や『岸畑任三郎』はノミネートされる気配など1ミリたりともなく、泡のように消えていきました。

 

そんな中、昨年から復活した年末の風物詩、M-1グランプリ。
そのM-1グランプリ2016の決勝戦に、我々さらば青春の光も出場することが出来ました。

 

思えば4年連続決勝に進出していたキングオブコントというコントの大会で、今年まさかの2回戦敗退という大しくじりをかまし、決して得意ではないはずの漫才の大会でまさかの決勝進出。振り幅がえぐい2016年。

 

しかし、稀に見るハイレベルな大会に参加させていただき、しかも自分たちがネタの中で使った『能やん』というフレーズがネットを中心に広がりを見せ、

 

「おい、お前のぬるい自慢話はどうでもいい。そして別に『能やん』はさほど流行ってない。そんなことよりさっさとよだれが出るようなお前のゲスい醜態をここに晒せ」

 

底辺から聞こえてくるどす黒い声。

 

お笑いファンなら絶対に聞きたいであろうM-1の裏話などはここでは全く意味をなさず、ファイナリストとしての価値をグングン下げるような下品な話のみが求められる場所だということを僕は完全に忘れていました。

 

しかしながらM-1に関する話もこのタイミング以外では書けない。
となるとM-1に関する下世話な話を書くしかない。
そんな都合よくM-1と下世話が重なるような話……

 

 

一つだけありました。

 

しかもお笑いファンだけではなく、来年M-1に挑戦しようと思っている漫才師の方々も読んどいて損はない話。

 

 

M-1グランプリとは、1回戦、2回戦、3回戦、準々決勝、準決勝、決勝、と恐ろしく過酷な予選を勝ち抜いていかなければいけない大会です。
僕らは昨年も準決勝までは行かせてもらってますが、キングオブコントと同じく、昨年までの実績なんて全く意味を成さない、正直どこで足元をすくわれてもおかしくない、そんな大会です。

 

そして鬼門でもある2回戦当日、前々回のコラムで登場したバースからいただいた戒めパンティを御守りとして鞄に忍ばせ僕は家を出ました。
目的を達成できるのならばどんな験でも担ぎたくなるのがこの世界で生きる人間の性。

 

無事2回戦通過。ありがとう、バース様。

 

そして3回戦。
ここからは多少名の知れたコンビでもその日の出来が悪ければ容赦無く落とされます。

 

僕らは3回戦の舞台を終え、芸人仲間数人で飲みに行くことに。3回戦の結果が出るのは2日後。
ネタの精度やウケ具合的に恐らく大丈夫だろうと思って烏龍茶を啜っている僕に、一人の後輩が喋りかけてきました。

 

「森田さんって風俗好きなんすよね?」

 

僕が「めっちゃ好き。その為に五反田住んでるようなもんやもん。五反田に住む人ってそういう人しかおらんからな」
という全五反田住民を敵に回しかねない返答をすると、その後輩は、

 

「今日行きませんか? なんか結果出るまでソワソワするんすよ」

 

と言ってきました。

 

 

愚問。

 

 

なぜ愚問かと言うと、この世界の人間は大事な勝負事の前に女性とエッチなことをするのは御法度だというのが定説だからです。
彼女や奥さんならまだしも、勝負事の前にその日会ったばかりのよく分からない女性とそういうエッチなことをすると、勝負の運気を全て女性に吸い取られ、結果良くない方向に転ぶと言われているのです。

 

だから合コンが好きで好きで仕方ない芸人達も勝負事の前には絶対に合コンの予定は立てません。
もし仮に勝負事の前日にイレギュラーな合コンが入り、奇跡的にお持ち帰りできそうな空気になっても、そこはグッと堪え、家に帰り歯を食いしばって床につく。売れてる先輩達はみんなそうして勝負に勝ってきたのです。

 

かく言う僕もそんな戒律も知らない5年ほど前、関西のお笑いの大会の決勝戦の前日にイレギュラーな合コンが入り、メンタル童貞野郎に訪れた10年に1回あるかないかの奇跡のお持ち帰りに成功し、翌日ウハウハでネタをやり、ウケもクオリティも申し分無く、間違いなく優勝賞金300万を手中に収めたと思ったら、審査員の一人の点数が尋常じゃないぐらい低く、結果準優勝で賞金を逃すという大惨事を身をもって経験しています。

 

打ち上げで優勝した芸人さんから「前日にそんなことしたら絶対あかんぞ!」と、こんこんと説教を受けたのを今でも忘れません。

 

そんな体験談も含め、その後輩に芸人界に伝わる鉄の掟をしっかりと説明しました。
するとその後輩は、

 

「プロなんでいいっしょ?」

 

え?

 

「今言ったのって全部素人の女性とエッチなことした場合でしょ?」

 

う、うん、まあ一応……

 

「風俗はプロなんで関係ないっしょ? プロなら問題ないっすよ!」

 

僕が長々と説明した鉄の掟を一瞬で蹴散らしてくる後輩。

 

何の理論もなく、何のとんちも利いてないくせに一休さんぐらいのスタンスで喋ってくる。
『このはし渡るべからず』の看板を引っこ抜いて川に捨て、橋を渡る奴。

 

「ねえ? ほんまに行きません? プロやったら大丈夫ですって。プロは無効ですって。だってプロですもん。ねえ? 将軍様~?」

 

ただただ風俗に行きたいという願望だけがダダ漏れしているクソ一休。

 

「森田さん、こいつ今日楽屋でもずっと風俗行きたいって言ってたんすよ。一緒に言ったってくださいよ。僕も今日彼女抱きますし」

 

後ろから援護射撃をしてくるクソ新右衛門。

 

僕は、こんな奴らに準々決勝進出を阻まれたくないと強く思い、
「黙れ!だからお前らはあかんねん!そんなことしてる暇あんねやったらネタ考えろぼけ!」
と先輩特有の一方的な罵声を浴びせました。

 

そしてすぐさま得意のゴシップで話を逸らし何とかその場を乗り切ったのでした。
お会計を済ませ、解散する間際にクソ一休と、
「森田さん、ほんまにいいんすね? ほんまに行かないんすね?」
「だから行かへんわぼけー!!」
という会話だけをして、新宿駅に向かいました。

 

すると山手線のホームで人目もはばからず堂々とお互いを求め合う熱いキッスを繰り広げているカップルが。
最近本当にこういう光景を目にするようになりました。
その場にいる人間全員が、

 

「よくもこんなに人が見てるのに堂々とキスできるな。親が知ったら泣くで」

 

の目をそのカップルに向けています。
僕もみんなと同じ目をカップルに向けながらも心の中では、

 

「べ、べ、ベベベ、べロチューやー!!! しかもこんな大勢の人の前で!! すげー!! すげーよ!! むちゃくちゃ舌と舌が絡まり合ってるー!!!」

 

さすがメンタル童貞。
人のベロチューを目の当たりにして脳内で興奮が爆発しています。

 

興奮冷めやらぬ中、品川方面行きの電車がホームに到着し、僕は電車に乗り込みました。
そして込み上げてくる感情。

 

「オレもベロチューしてぇー!!!!」

 

そう、実は駅のホームでベロチューしてるカップルを何回も見たことはありますが、その度に僕の中にはこの感情が押し寄せてくるのです。

 

僕だけではない筈です。サラリーマンのおっさんも、クールを気取った大学生も、駅の係員も、怪訝そうな顔でベロチューを見ている全員が心の中で、

 

「オレもベロチューしてぇー!!!!」

 

と思ってる筈なんです。
僕はすぐさま贔屓にしてるヤリマンに連絡をしようと思い、携帯のLINEを開きました。
しかしすぐに思いとどまります。
なぜなら芸人界の鉄の掟があるからです。
自分自身、この鉄の掟に逆らって痛い目にあった身です。そうそう簡単に破ることは出来ません。
しかし僕の下半身は既に漫才マイクの如くそびえ立っています。

 

「鉄の掟を破るわけには絶対いかん。けどこのズボンの中の漫才マイクはどうしたらええねん?」

 

そんな葛藤を繰り返してるうちに、電車は渋谷駅に到着しました。
次々に乗り込んでくる少しほろ酔いの若い女性達。
その女性達の艶っぽさが僕の漫才マイクをどんどん上に上げていく。

 

「いやいや、これはもうブラマヨさんとかスリムクラブさんが漫才やる時の高さやから! こんな高くされてもオレには鉄の掟があるから!」

 

とか思いながら艶っぽい女性達を見つめていたその瞬間、あいつのあの言葉が急に僕の脳内に飛び込んできました。

 

「風俗はプロなんで関係ないっしょ?」

 

え?

 

「プロなら問題ないっすよ!」

 

クソ一休の悪魔の言葉が僕の脳内を蝕んでいく。
そうこうしてるうちに電車は恵比寿駅に到着。
するとまた、

 

「プロやったら大丈夫ですって」

 

やめろ

 

必死で振り払おうとする僕をよそに、電車は目黒駅へ。

 

「プロは無効っすよ」

 

うるさい、黙れ

 

そして五反田駅到着。

 

「だってプロですもん」

 

やめろ! 本当にやめてくれ!
もはや車内アナウンスで言ってるんじゃないかという錯覚に陥るぐらいはっきりと聞こえてくるクソ一休の声。

 

プロならいいっしょ?
プロなら問題ないっすよ!
プロだったら大丈夫っすよ!
プロは無効!
だってプロやもん!
プロプロプロプロプロプロプロプロプロプロプロプロプロプロプロプロプロプロプロプロ

 

 

脳内がプロ一色で覆い尽くされる。
漫才マイクがさらにせり上がってくる。
M-1の出囃子がかかる。
そして電車の扉が開く。

 

「はいどうも~!」

 

気がつくと僕は電車を飛び降り、かしわ手を打ちながら五反田の風俗街へ一直線に飛び出していたのでした。

 

すまん、クソ一休。
お前のクソとんちに一本取られたよ。
確かにプロなら問題ないよな?
プロは無効やんな?
だってプロやもんな?

 

僕はM性感というジャンルの行きつけの風俗店のサービスを受けました。
射精後、冷静になった僕を強烈な罪悪感が襲う。
ほんまにこれで良かったんか?
家帰ってオナニーしてるほうが良かったんちゃうか?
これでもし落ちたら相方に申し訳なさすぎる。
ほんでそもそもベロチューしたい言うて来た筈やのにベロチューのサービスない店来てもうてるし。

 

そして後日、結果が届く。
準々決勝進出。

 

「やった! やっぱりプロは関係なかったんや! プロは無効やったんや! ありがとうクソ一休!」

 

クソ一休もクソ新右衛門のコンビも3回戦敗退。
心の中で思う。
だからお前らはあかんねん。
先輩に怒られても食らいついてくるぐらいの気概見せて意地でもプロ行かんと。
ネタ考えてる暇あんねやったらプロ行かんと。

 

その日を境に僕の脳は、

 

『プロなら問題ない』から『プロ行かんと勝てない』

 

になぜか変換されたのでした。

 

準々決勝の前にも同じ店に行きました。
プロによる最高のもてなしでフィニッシュ。

 

準決勝進出。

 

準決勝の前にも同じ店に。
プロならではの究極のテクニックによりフィニッシュ。

 

決勝進出。

 

プロ効果による破竹の快進撃によりとうとう自身初の決勝進出まで果たしてしまいました。
僕は震えが止まりませんでした。
まさかM-1と風俗にこんなにも密接な関係があったなんて。しかも大好きなM性感店。
お笑い界と風俗業界を繋ぐ架け橋になるであろう大発見。
その架け橋のど真ん中を渡るエロ一休。

 

「オレがM-1グランプリだ!!!」

 

気がついたら一人部屋でヤバすぎる言葉を叫んでいる自分がいました。
しかしながら仕事やネタ合わせの忙しい合間を縫って、何とか時間をみつけては風俗に行った努力がついに報われた瞬間でした。

 

そしてついに決勝前夜。
いつもの店のいつものコースを予約。

 

「これを遂行すれば明日オレ優勝してまうやん! 賞金の1000万でまた店来いってか! なんぼでも行ったらあ!」

 

そんな妄想を膨らませながらプロからの至福のサービスを受ける。
しかし、決勝前夜のプレッシャーなのか、はたまた昼間にしてしまったオナニーの影響か、プロのサービスを受けながらも中々フィニッシュを迎えない。

 

60分にセットしたタイマーが鳴る。

 

焦る僕。

 

プロの手が激しく動く。

 

焦れば焦るほどフィニッシュから遠ざかっていくような感覚。

 

鳴り止まないタイマー音。

 

プロの顔にも焦りの色。

 

そして僕はとうとうプロに言った。

 

「ごめん! 自分でやってみるからとりあえず上乗ってくれへん?」

 

突如飛び出したドMの性癖。

 

びっくりしながらもすぐさま上に乗るプロ。

 

「乳首触って!」

 

もはやSにすら見えるMの要求。

 

言われるがままに乳首を触るプロ。

 

いつものオナニーよりも激しく動かす僕。

 

そしてなんとか無事フィニッシュ。

 

まだ乳首を触り続けるプロに対して最後に僕がオチ台詞を言う。

 

「もうええわ」

 

60分間のプロとの漫才終了。
「ごめんな、オレ体質的にめっちゃイキにくいねん。風俗来てもいかんこと多いねん」
という僕の優しい嘘が部屋に虚しく響き渡る。
そして漂う一抹の不安。

 

翌日のM-1グランプリ決勝戦。

 

結果は、4位。

 

「やっぱりそうか」
敗因ははっきりしていました。
それは、今まで3回戦、準々決勝、準決勝と、全てプロの技によるフィニッシュ。

 

決勝前夜だけ自分の手によるフィニッシュだったからです。
それ以外に敗因は考えられません。

 

コントばっかりやってきた芸人にしてはM-1で4位は大健闘の立派な結果だという声もあります。
しかし、あの日僕がしっかりとプロの技でフィニッシュを迎えていたら、全く違う結果になっていた。そう思うと悔しくてしょうがないです。
そういう意味では期待してくれてたファンの方々や、相方に本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 

「来年は絶対にプロの技でイク!!!」

 

打ち上げからの帰り道、僕はそう誓いました。
そして戦友でもある準決勝敗退のニューヨークの屋敷に今語った事実をありのまま伝えました。
すると、

 

「え? ちょっとマジで引いてんすけど? いや、マジでマジで。M-1をなんや思てんすか? とりあえず全漫才師に謝ってくれません? これバレたら多分来年M-1出禁になると思いますよ? DVDにもあんたらのネタ収録されへんと思うし。予選勝って行ったんもたまたまっすよ? ほんで決勝で負けたんは明らかに実力ですよ? そもそもM-1と風俗に何の関係もないから。あるわけないですやん。あほなんすか?」

 

という非常に辛辣な意見が返って来ました。
僕は彼に言いました。

 

「能やん!!」

 

なんやこの終わり方?



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