東京女子×上京女子 vol.2 「逃れられない“東京のカルマ”」

文芸・カルチャー

2016/12/17

 独身アラサー女子が抱いている不安や葛藤を、東京生まれ東京育ちの東京女子と地方から上京してきた上京女子、それぞれの視点から描いた山内マリコさんの小説『あのこは貴族』(集英社)。その発売を記念して、東京で働く独身アラサー女子を集め「東京女子VS上京女子」の座談会を開催した。

 交友関係や地元への愛着、恋愛や結婚に対する価値観、今後のキャリアプランなどの話題で大いに盛り上がった今回の座談会。その様子を5回にわたってレポートするこの連載。第2回目のテーマは「東京のカルマ」についてだ。

 交友関係や地元への愛着、恋愛や結婚に対する価値観、今後のキャリアプランなどの話題で大いに盛り上がった今回の座談会。その様子を5回の連載にわたってレポートする。

▶ 第1回はこちら(東京女子×上京女子 vol.1「女の友情は物理的距離で壊れる!? 」

 住む場所が変わることで人間関係が変化してきた上京女子に比べ、同じ地にとどまっている東京女子のほうが、固定化したコミュニティに縛られているのではないかという意外な事実が垣間見えた前回。そこから話題は、東京という街が抱える”不自由さ”に広がった。

東京は思っていたより普通の街だった

──東京女子が固定化したコミュニティに縛られていることを思うと、一般的な「東京は多様性があって自由」というイメージはちょっとズレているのかもしれませんね。上京女子のみなさんは、東京に対するイメージって上京する前と後で変わりましたか?

上京Dさん(以下、上京D):自由って意味で言うと、電車やバスで行きたいところに行けるのはいいなって思っていました。地元だと、どこへ行くにも車だし、遠いし。実際住んでみて、やっぱり便利な場所だなって。

上京Eさん(以下、上京E):私は、高校生くらいのときまではキラキラした街だなってイメージがありました。原宿とか渋谷とか、すごくオシャレだなって。でも実際住んでみると、地元と比べて決定的に違うところはなかったですね。

──上京してとくに驚くことはなかったわけですね。ちなみに、地元に戻りたいっていう気持ちはありますか? それともずっと東京にいたい?

上京D:地元に戻るつもりはないです。ただ最近、東京に飽きてきて神奈川に引っ越しました。

上京E:私も地元には戻りたくないと思っています。狭いコミュニティが根強く残っているのが嫌で……。地元以外なら東京じゃなくてもいいんですけどね。

上京Fさん(以下、上京F):私は熊本が大好きなので、いつかは戻りたいですね。ただ40代までは仕事をバリバリやりたいので、都市部の方がいいかな。50代でアーリーリタイアして熊本に帰る予定です。

──逆に東京女子のみなさんは、東京を離れるって想像できますか? たとえば急に地方に転勤になるとか。

東京Bさん(以下、東京B):うーん、悩んじゃうな。私、祖母のころからずっと同じ地域に住んでるんですね。三代同じ小学校に通ってて。だからそこから離れるってぜんぜん想像つかないかも……

東京Cさん(以下、東京C):私は無理だなって思います。地方に行くとなんでも東京と比べちゃうので。いまの利便性がなくなると生活できるか不安です。

東京Aさん(以下、東京A):実はこの夏、仕事の関係である島に一か月住んでたんですけど、本当に衝撃的でした。移動手段が船しかないし、その船もぜんぜん来ないし、天気が悪いと欠航するし。慣れもあると思うんですが、住むのは難しいかもしれない……。

──上京女子が場所にとらわれないのに対して、東京女子は東京という街に縛られてる感じがしますね……!

上京F:それ思いました! 東京ってなにか「カルマ」みたいなものがあるのかもしれない……。

一同:東京のカルマ!(笑)

東京女子は「東京のカルマ」に縛られている!?

──「東京のカルマ」なんて名キーワードが飛び出したところで、次は「家」について話を聞かせてください。東京女子と上京女子の大きな違いって「いつまで実家暮らしをするか」ってところにある気がしていて。

東京B:実は私、まだ実家に暮らしてます。

東京C:私もです。

──そうなんですね。一方、上京女子は東京に出てきたら否応なしにひとり暮らしをしなくちゃならない。そこに対してなにか思うことってありますか?

上京D:実家暮らし、うらやましいですよね。家事やらなくていいのが。

上京E:お金も貯まりそう。上京したてのときは家賃の負担がかなり重かったです……。

東京A:私、いまはひとり暮らしをしているんですが、社会人になって5年目くらいまでは実家にいました。ある程度貯金もあったし、家賃補助が出るようになったタイミングだったので、あまり苦労はしなかったかな。

──東京女子はなかなかひとり暮らしに踏み出すタイミングがつかめないのかもしれないですね。ちなみに実家暮らしのおふたりはひとり暮らしをする予定はあるんですか?

東京C:いつかはしたいなと思ってはいるんですが……。まだ具体的には考えてないです。

東京B:結婚とか転勤とか、なにか理由があればするかもしれないですね。でもいずれは家を継いで管理していかないといけないって意識があるので、実家こそが自分の家って感覚かも。

──上京女子のうち3人中ふたりが地元に戻るつもりはないとおっしゃってましたが、将来実家をどうしようかって考えてますか?

上京D:自分が住むことはないですね。遺してもらえたら売るだけかな。

上京E:姉が地元に住んでいるので、なんとかしてくれるかなって感じで。あまり考えてないですね。

──東京女子のみなさんはいかがですか?

東京A:弟と財産分与の話とか、します。でも私、実家とは別に自分の家がほしいんです。ていうか、いまほしいものって言ったら家くらいしかない。

──家ですか! それはまた大きな買い物になりますね。

東京A:住む場所としてっていうか、概念としての家っていうのかな……。たぶん、心の拠り所がほしいんですよ。

東京C:それはわかります! ただ、私は土地がほしいです。家は劣化しますからね。

上京F:そんなこと考えたことなかった……! 家は賃貸でよくないですか?

上京E:わたしもそう思います!

──上京女子のみなさんは家を持つみたいなことにこだわりがないんですかね?

上京F:私なんかずっとシェアハウスに住んでますもん。家具も家電もついてるので身ひとつで転々とできるのが気楽で。

上京E:シェアハウスいいですね! 帰ったら誰かいるって安心感ありそう。私もずっと東京にいると決めているわけじゃないし、ほかの場所に住むこともあるかもしれないし、今のところどこかに定住するってイメージわかないですね。

東京B:その身軽さ、すごくうらやましい……! あらためて振り返ってみると、東京を離れるなんて今まで考えたこともなかったです。

東京A:たしかに。やっぱり私たち「東京のカルマ」にとらわれているのかも。

 さまざまな人々が訪れては去り、一見多様で自由な街に思える東京。しかし、そこで生まれ育った東京女子にとっては「カルマ」とも呼べるしがらみが存在しているようだ。ただ今回の対談然り、自分を客観視する対象として、多様な環境のもとで育った人と出会える場所でもある。それこそ東京という街の魅力なのだろう。

 次回のテーマはいよいよ、東京女子と上京女子の「恋愛と結婚」について。はたして「東京のカルマ」が、恋愛や結婚にも影響を及ぼすのか迫る。

取材・文=近藤世菜

『あのこは貴族』(山内マリコ/集英社

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『あのこは貴族』(山内マリコ/集英社)

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