コネや有力な血縁がなくても出世しまくった「島耕作の仕事論」とは?

仕事術

2016/12/21

『島耕作も、楽じゃない。仕事・人生・経営論』(弘兼憲史/光文社)

 日本一有名な課長であろう漫画『課長 島耕作』(弘兼憲史/講談社)の主人公・島耕作。もっとも彼は部長、取締役、社長と着々とサラリーマンロードを駆け上がり、現在は『会長 島耕作』(と『学生 島耕作』)が連載中である。起業や転職ではなく、左遷や海外勤務などを乗り越えながら組織の中で頭角を現しトップに上り つめていく様は、大企業で働く多くのサラリーマンの夢でもあるのだろう。

 このシリーズの連載は1984年に始まったというから30年以上も続いているわけで、島耕作がスーパーサラリーマンなら著者の弘兼憲史氏もまたスーパー漫画家である。本書『島耕作も、楽じゃない。仕事・人生・経営論』(弘兼憲史/光文社)は、ふたりのスーパーマン、島耕作と弘兼憲史の仕事のやり方について、弘兼氏本人が明かしたものだ。

 第1章は「島耕作の仕事論」として、島耕作の人物分析がされている。島は大手電機メーカー「初芝電器産業」に勤務するいちサラリーマンから出発する。特にコネや有力な血縁があるわけでも、すごい技術をもっているわけでもない。それがどうやって出世街道にのることができたのか。

 仕事ができることはもちろんだが、それだけでうまくいくとは限らないのが世の中だ。『取締役 島耕作』の中でこんなセリフを島が言う。「人生の5割は自分の力で変えられるが 残りの5割は他力の部分だ おれはその残りの5割で運が良かった」

 他力にはタイミングや時世などもあるが、周囲の人間の力というのも大きい。第1章で取り上げられているのは島耕作のコミュ力である。例えば「会社は人間観察の場所と捉えよう」の項では、学校では自分と同質の人間としか出会わない、だからそれが全てだと思ってしまうと、世の中を取り違えてしまう。会社に入り、自分とは違った背景の人間と出会い理解することが大切であるし、のちにそこから得られることがある、としている。確かに、私の経験でも大学に変わった人というのはたくさんいたが、会社に入ってからの方が驚かされたことは多い。

 “オヤジ転がし”も大事なテクニックのひとつだ。島耕作シリーズは、弘兼氏が新卒で入った松下電器産業(現パナソニック)での経験がベースとなっているが、弘兼氏がそこで自身に課していたのは「飲みに誘われたら断らないこと。」もちろん、中にはこんなオヤジとは飲みたくない、というような、ネチネチ嫌味をいい周囲からも敬遠される人もいたが、そういう人たちにこそ自分から誘ったという。

 なぜなら、そんな嫌われ者でも出世しているからにはどこか人よりも優れているはず。それを見極めたかったといい、そしてたとえ嫌な人間であっても付き合ううちにいいところが見えてくることだってある、といっている。

 気の合う人間とだけ仕事をする、あるいは付き合う ことなどできない。それを前向きに捉えるかどうかで人生は変わってくる。どんな嫌な人間でも、しっかりと付き合う ことで、プラスに働くことがあるのだ。

 弘兼氏が決めた島の行動規範は、群れないこと、人を馬鹿にしないこと、人を地位でみないこと、人を大切にすること、くよくよと悩まないこと、などだ。どれもサラリーマンというより人としてごく当たり前のこと。だが、“超一流”と言われる人間ほど人として当たり前のことを徹底している人が多いという。

 だからなのか、本書に出てくる島の仕事論は特別なものではないし、誰もがやろうと思えばできることでもある。しかし人は、有頂天になったり、ラクをしたくなったりするものだ。当たり前のことを当たり前にやるのは難しい。それができるのが島耕作なのかもしれない。

 なお、島はいつもセクシーな女性にモテるが、その辺のところは言及されていない。が、島の行動規範を徹底したなら、同性にも異性にも好感度が抜群であることは間違いないだろう。

文=高橋輝実