世界中の飲兵衛たちはどんな料理を食べてる?『世界入りにくい居酒屋 異国の絶品グルメ図鑑』

食・料理

公開日:2017/1/1

『世界入りにくい居酒屋 異国の絶品グルメ図鑑』(NHK『世界入りにくい居酒屋』制作班/パルコ)

 最近、個人的に見出だした経験則があるんです。「美味しいものをたくさん知っている人は、大抵、酒飲み」。SNSで飯テロやってくる友人知人が、おおよそ飲むんですよ。みんな、下戸の私には知らない世界を持っているなあと…“大人の遊園地”を知っているんだなと! アルコールとは縁のない人生が確定している私にとっては、なかなか覗く機会のない、酒場という空間。そこではどんな美食が供されているのか…下戸でも食いしん坊な人間としては、気になるんですよねえ。

『世界入りにくい居酒屋 異国の絶品グルメ図鑑』(NHK『世界入りにくい居酒屋』制作班/パルコ)は、NHK・BSプレミアムの人気番組『世界入りにくい居酒屋』の内容をまとめた1冊です。その名の通り、世界各国にある飲み屋さん、しかも地元の人でないと辿り着けない名店を訪れ、そこに集う飲兵衛たちと触れ合いながら店の看板メニューを紹介する、この番組。独特のガヤガヤ感は書籍でもそのまま。フルカラーの誌面には賑やかな写真が敷き詰められ、現地の熱気が伝わってくるようです。

 お店や飲食物の間に紹介されている、店主や常連客の名言もまた味なもの。例えば…

advertisement

「人生は短いから、この店で自由と喜びを思う存分に楽しんでほしいんだ」
ベルギー・ブリュッセルの居酒屋『ル・プティ・パレ』の店主フレッド

「ダイエットや健康のために、バターやクリームを使わない料理を作るくらいなら、薬局をやったほうがマシ」
フランス・リヨンの居酒屋
『カフェ・デ・アルティザン ル・ブッション・ド・ミュリエル』の店主ミュリエル

「1杯、2杯と飲むたびにもっと幸せになるよ」
イタリア・ナポリの居酒屋『アンティカ・カプリ』の客

「神様だって酒を飲むとしたらきっとテキーラを選ぶさ!」
メキシコ・グアダラハラの居酒屋『ラ・フエンテ』の客

 嗚呼、これぞまさに“大人の遊園地”の光景ではありませんか! やっぱり飲兵衛さんのほうが、人生、楽しそうな気がします。

 紹介されている名物料理の一部については、番組プロデューサーであり、食べること大好き! お酒大好き! という村上恵美子さんによる、再現レシピも掲載されています。これらのレシピのコンセプトとして掲げられているのは、「雑に作って、おいしい」ということ。調理手順も「マッシュルームを適当にスライスします」「安い白ワインを豆とショートパスタが浸るくらいドバドバと入れます」などなど、家庭科の先生が見たら卒倒しそうな適当さ加減で綴られています。

 さて、私も食いしん坊代表として、収録されているメニューにトライしてみましたよ。挑んだのは「マデイラの万能ソース」。これはポルトガル・マデイラ島の居酒屋「タスカ オ フリカ」――日本語で「おなかピーピー」の意(なんて名前だ…)――の人気メニュー、タラの素揚げに掛けられていたソースを再現したものです。用意するのは、イタリアンパセリとにんにく、ワインビネガーにオリーブオイル、赤唐辛子はお好みで。材料をざくざく切って、パパっと和えるだけの簡単レシピですが、なかなかどうして旨いんですよ、コレが。食欲をそそるパセリの青みとにんにくの香り、そして、そんな個性派をまとめあげるオリーブオイルが、いい仕事をしています。

「万能ソース」の名の通り、お魚以外にも様々な料理に合うようです。ボイルした豆類や芋類のほか、ソーセージやゆで卵なんかに合わせて、おつまみにも。見た目にも鮮やかなので、ご馳走気分を盛り上げてくれるはずです。ちなみに私のおすすめは、冷奴の薬味として使うことです。そこへ醤油を垂らせば、お豆腐が一気にエスニックな表情に生まれ変わりますし、パセリの代わりに大葉で作れば、グッと「和」に寄った風味に。レシピ自体がシンプルなので、アレンジへの意欲も湧きますね。

 会食の機会も多い年末年始。居酒屋メニューに飽きたらこの本を片手に、お口の中だけ海外旅行パーティー…なんていうのも、盛り上がるかもしれません。

文=神田はるよ