独自の5項目でランキング!「本物の温泉力」がわかる温泉マニア必読の日本の名湯ベスト100!

暮らし

2017/1/7


『本物の名湯ベスト100』(石川理夫/講談社)

 世界屈指の“温泉大国”である日本。そんな温泉地について、わたしたちはどれだけその本物の情報を知っているだろうか? そこでおススメするのが、『本物の名湯ベスト100』(石川理夫/講談社)だ。日本温泉地域学会会長を務める著者は、温泉執筆、メディア出演のかたわら、共同湯や温泉文化などの研究に携わる。

 そんな著者が、5つの指標で客観的に温泉を評価した本書。これまでの「名湯○○選」や「名湯の宿ベスト○○」といった名湯選び、温泉ランキングなどの書籍には、問題があると著者はいう。

 1つ目は、多くの人が温泉地選びというよりは、温泉宿選びに偏っている点だ。「温泉宿=温泉地」ではない。2つ目は、温泉のセレクション本が、どのような基準、根拠をもって選んだのかわからないこと。3つ目は、選ばれた名湯(宿)というけれど、それを裏付ける肝心な温泉そのものの基本データすらきちんと記載されていないこと。

 そんな状況を「そのままにしてはおけない!」と著者は、(1)源泉の質(2)源泉の提供・利用状況(3)温泉地の街並み景観・情緒(4)温泉地の自然環境・観光、温泉街として町が機能している見どころ、保養・湯治のための滞在プログラム・メニューの充実(5)温泉地の歴史・文化・もてなし、といった指標を用い温泉地をランキングにし、100位から1位という順番で紹介している。

 本書の醍醐味は何といっても、自分の好きな温泉地や行ってみたい温泉地が何位にランクインしているかを想像しながら読むことだろう。また、本書の「本当の温泉力」でランキングすると、意外や意外、誰しもが知っているような有名な温泉がランク外であったり、低かったりすることにも驚かされる。

 ランキング以外にも、共同湯・共同浴場に関するコラムなどもあり、知られざる温泉の魅力に気づかされる。自然湧出からはじまり、「神から恵み」としてその地域の人々が守り続けてきた共同湯は、地域住民が管理運営し、当番制で清掃していることが多いという。そのため常に新鮮な源泉が保たれた結果、本来の源泉の湯の香りが存分に楽しむことができ、名湯と呼ばれるところに多く存在する、と著者はいう。

 さらに温泉地にまつわる歴史上のエピソードも多く紹介されている。
日光湯元温泉には、「日光山温泉寺」という寺があり、お寺の境内に湧き出る「薬師湯」で参籠入浴ができる。その歴史は奈良時代後期にまで遡り、お寺と温泉の古くからの結びつきを知ることとなる。また、徳川家康が湯治に訪れ、気に入ったとされる熱海温泉。三代将軍家光の時には熱海から江戸城まで運ばせたという話は有名だ。

 その他、耳馴染みのない「温泉霊場」という宗教性や聖地性を帯びた温泉にも触れており、温泉マニアにはまさに興味津々の内容だ。そして巻末にある、全国名湯マップと、5つの指標ごとのベスト30を見比べながら、行ってみたい温泉地を探してみるのもよいだろう。

 この本は、まさに温泉通のための一歩先を行く一冊である。以前行ったことのある温泉地でも、また新たな発見があるだろう。

文=澤 ゆか