国同士の対立を背負った、絶対にバレちゃいけない恋物語はどうなる!?  いま話題の、孤島の寄宿学校を舞台に生まれた新たな“ロミジュリ” 『寄宿学校のジュリエット』

マンガ

公開日:2017/1/16

『寄宿学校のジュリエット』(金田陽介/講談社)

 世界でもっとも有名な恋物語『ロミオとジュリエット』。ベタで王道な作品は、それゆえに愛され語り継がれるもの。いま、孤島の寄宿学校を舞台に生まれた新たなロミジュリが話題を呼んでいる。その名も『寄宿学校のジュリエット』(金田陽介/講談社)。犬塚露壬雄(ろみお)とジュリエット・ペルシア、敵対する国を代表する二人のリーダーが争いの翳で純愛を育む学園ラブコメだ。

 舞台となるダリア学園には、二つの寮が存在する。東和国(とうわこく)出身の生徒が住む「黒犬の寮(ブラックドギーハウス)」と、ウェスト公国出身の生徒が住む「白猫の寮(ホワイトキャッツハウス)」だ。今日も今日とて仲間を引き連れ対決する露壬雄とジュリエットだが、露壬雄の本当の目的は「誰にもジュリエットを傷つけさせない」こと。本作はその想いがジュリエットに届くところから始まるのだが、この露壬雄が、黒犬一の強さを誇る荒くれ者のくせして、まあ、乙女。すぐ泣くし、会えないと拗ねるし、恋人同士のジンクスにはふりまわされ、記念日にもこだわりまくる。感情表現が苦手なジュリエットに比べ、よほどヒロインの風格だ。

 ではジュリエットがただクールなだけかというと、もちろんそうではない。一人娘のジュリエットは、女であるがゆえに財産も爵位も継げず、一家の終焉を待つのがいやで、世界のルールを変えようと懸命にひとり戦い続けてきた。「お前と一緒にいられるなら世界なんて変えてやる!!」という露壬雄の叫びは、孤高に生きてきた彼女にとって何よりうれしい愛の告白だっただろう。
 理由がなくても必要としてもらえる、そのままの自分を愛してもらえる喜びを知った彼女は、少しずつ、露壬雄に負けないくらいの想いをその胸に宿していく。そんな彼女を通じて読者も露壬雄に恋していくのだが、一方で彼女がときどき見せるデレは反則なまでにいじらしく、読む者はみな陥落させられてしまう。要するに、本作のヒーローとヒロインは、どっちも負けず劣らずかわいいのである。

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 もちろん、国を背負った二人の恋が前途洋々であるはずがない。ジュリエットの親友で公国の第一王女・シャルトリュー、露壬雄に忠実な黒犬で彼に想いを寄せる蓮季、ジュリエットの地位を狙うチャラ男のアビや、その右腕でもある怪力少女・ソマリ、露壬雄を敵視している一方、男装のジュリエットに正体を知らず恋してしまったアウトローの丸流(まる)など、周辺をにぎわすキャラクターもさまざまだ。3巻末では露壬雄の兄であり、犬塚家の当主、そして寮全体を取り仕切る藍瑠が登場し、露壬雄は学園追放どころか勘当の危機に……。初々しい純愛模様が繰り広げられる一方、二国間だけでなく仲間内でも勢力抗争が渦巻いており、物語は息つくまもなく展開していく。

 高すぎる壁を二人の愛がいかに超えていけるのか、世界をどう変えていくのか…。戦い続ける二人の先行きを期待したい!

文=立花もも