所要時間5~20分、主材料3つ! 早いだけじゃない、「おいしさの工夫」いっぱいの時短レシピ【作ってみた】

食・料理

公開日:2017/1/16

『暮しの手帖のクイックレシピ』(暮しの手帖社)

 どんなに忙しくてもご飯を作り、おいしく食べたいものだ。とはいっても、下準備に時間をかけたり、鍋でじっくり煮込んだりする料理は日によっては避けたくなるもの。わがままだけど「おいしくて時間のかからない料理」を求めてしまうのだ。

『暮しの手帖のクイックレシピ』(暮しの手帖社)では、10人の実力派料理家が時間や気持ちに余裕のない日でも、簡単においしく作れるレシピを提案してくれている。基本の調味料を使い5~20分ほどで作れるというスピード料理は、無理なく手早くが基本。おまけに主材料は3つまで。そんなシンプルで工夫に満ち溢れた料理を、実際に作ってみることにした。

■ひと口目からうなる味!「鶏肉とエリンギのクリーム煮」


 1品目は、大庭英子さんのレシピ「鶏肉とエリンギのクリーム煮」。作り方は3~4cm角に切った鶏肉に塩・こしょうをふりかけ、薄力粉をまぶしてフライパンで焼いていく。焼き色がついたらバター、エリンギを加えしんなりするまで炒める。白ワインを入れフタをして蒸し煮にしたあと、牛乳・塩・こしょうを加えたら完成。

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 久しぶりにひと口目から「う~ん」とうなってしまう味だった。鶏肉はふっくらとした口当たり、皮は香ばしくとろみのついたクリームとマッチしている。きのこの風味もしっかりしており、15分で作った料理とは思えないおいしさだ。このメインおかずには、焼きたてのバケットとよく冷えた白ワインを添えても良いだろう。ぜひレストランにいる気分で味わってほしい1品である。

■新定番にしたい上品なおいしさ「ブリのバルサミコ照り焼き」


 2品目は、冷水希三子さんのレシピ「ブリのバルサミコ照り焼き」。15分で完成させるべく、付け合わせのほうれん草から調理していく。まずフライパンにほうれん草を入れ、バター・水を加えやわらかくなるまで蒸す。できあがったら器に取り出しフライパンを拭き、次にごま油を熱し、薄力粉をつけたブリを焼いていく。両面きつね色に焼けたら、日本酒・しょうゆ・バルサミコ酢を加え、煮詰めたらできあがり。

 定番の甘辛いブリの照り焼きとは異なり、さっぱりした甘さが特徴である。ブリの油と酢の酸味のバランスもとても良く、上品な照り焼きという言葉がぴったりだ。また、バターと水でシンプルに仕上げたほうれん草はふっくらしており、口に入れるとじゅわっとバターの風味が広がる。温かいうちに食べたい1品ではあるが、冷めても十分においしい。ということは、お弁当のおかずにも適しているといえるだろう。

■こってりみそ味がからむ!冬のごちそう「煮込みうどん」


 3品目は、ワタナベマキさんのレシピ「煮込みうどん」。作り方は鍋にごま油を熱しごぼうを炒め、香りが出てきたら豚肉を加える。肉の色が変わったら塩を振り、日本酒・水を加えひと煮立ちさせ、さつまいもを入れて煮込む。最後にみそとうどんを加え3分待ったら完成。細ねぎを散らし、七味唐辛子をかけていただく。

 グツグツ煮込んだ汁気の少ないうどんには、こってりみそ味がからんでいる。さつまいもは甘くホクホクとした食感、ごぼうの香りも合わさって冬のごちそう感満載である。今回は迷わず冷凍うどんを使ったが、きしめんにすると煮崩れしにくく口当たりもなめらかに。また使うみそを変えれば、新たな味に出会うことができるのだ。

 本書で紹介されているレシピは、どれも簡単なのに手抜きに見えず、きちんとおいしいのがお約束。しかし魅力はそれだけではない。料理家たちが教えてくれるクイックアイデアや、落語家や文筆家などによる食にまつわるエッセイには心温まるものがある。そのせいだろう、いくつかのレシピが誰かの得意料理となり、いつかその家庭の定番となるかもしれないと思うと、熱いものが胸に込み上げてくるのだ。

 この本は、心を豊かにしてくれる料理手帖である。忙しい日こそ、ゆっくりページをめくってほしい。

文=くみこ