Twitterで話題騒然! 中毒性抜群な「いっさいはん」の行動にハマる人が続出中!!

文芸・カルチャー

2017/1/20


『いっさいはん』(minchi・さく・え/岩崎書店)

 1歳半(1歳6ヶ月)。それは、歩くスピードが徐々に速くなり、小走りもできるようになるお年頃。そして周囲のさまざまな物事に興味を持ち始め、なんでも自分でやってみたくなり、挙句失敗してしまう。当人たちからすればすべてが初めてのことで、泣いたり怒ったり笑ったりと毎日が大忙し。そんな彼らの日常の1コマを切り取ってみたら、一体どんな世界が見えてくるのだろうか。

 『いっさいはん』(minchi・さく・え/岩崎書店)は、著者の実体験を基に、1歳半を迎える子供の日常をあるあるネタ満載で切り取った絵本。SNSでイラストがアップされるやいなや、その愛おしすぎる1歳半の行動が反響を呼び、今回の書籍化が実現。どこか不可思議さを醸し出す小さい子どもならではの食事風景や、親の手を離れて自由に行動を起こす様子などが、ほんわりとした懐かしさを感じるイラスト満載でつづられている。

 著者は、チャットモンチーの4thアルバム『YOU MORE』でジャケットイラストを手掛けたminchi(ミンチ)。画材のひとつ、アクリルガッシュを使用した幻想的な作品を国内外で発表してきたが、絵本の制作は今回が初めての挑戦だという。しかし著者の絵本は、子ども向けのものとはひと味もふた味も違う。繰り返し読めば読むほど、そのイラストから放たれる家庭的なあたたかい色味に心が惹きこまれ、1歳半の愛らしい行動から目が離せなくなる。中毒性抜群のそんな絵本なのだ。

 中でも個人的にイチ推しなのは、「だっこも たいへん いっさいはん」。膝の上でだっこをしてもらっている最中に突然立ち上がる1歳半は、そのままお母さんへ頭突き! そして痛がるお母さんを見て泣く! その時のお母さんの痛がる様子が、“あるある”と共感を誘うと同時に、子どもの泣く声まで聞こえてきそうだ。ちなみに1歳6ヶ月の平均体重は、男の子でおよそ8.7~12.5kgぐらい。その全体重とまではいかなくとも、立ち上がるだけの力を込めた頭突きが当たるのだから……うーむ、1歳半の破壊力たるや恐るべし。おとなしく座っていてほしいという願いは、子どもの泣き声にかき消されていく。

 その他にも本書では、予測不能な行動を巻き起こす1歳半の行動が次々と登場し、その好奇心と無邪気さをもって、読む者の母性や父性を刺激してくる。しかもそれは、子どもがいるいないに関わらず。現実では日々の忙しさや仕事のストレスから、街中で小さい子どもが元気に走ったり泣いたりしていても、それを見落とすことが少なくないだろう。しかし、本書で登場する“いっさいはん”の姿は、疲れた心を癒し、和ませてくれる。そこには単にイラストや行動がかわいいというだけでなく、“血の通った1歳半”のリアルな姿があるからであり、私たちはまるで自分の子どもを見ているかのように愛おしさを感じるのだ。

 子どもの幼いころの思い出や、疲れた心を癒してくれる愛らしさ、故郷を懐かしむ気持ちなど、読む人によって本書から思い描く風景や、抱く気持ちはさまざまだろう。『いっさいはん』に出てくる子どもは、これからどのような成長を遂げていくのか。わが子を見つめるような気持ちで、あっという間に過ぎていく“いっさいはん”の瞬間を見逃さないでほしい。

文=椋鳥