止まったボールが打てない理由とは? ゴルフが「上手い人」と「下手な人」の明暗をわける「Aスウィング」は何がスゴイのか?

スポーツ

2017/1/21


『デビッド・レッドベター「Aスウィング」』(デビッド・レッドベター/ゴルフダイジェスト社)

 「プロ」の条件とは何だろう? 様々な意見はあるだろうが、ひとつ共通するのは「安定したクオリティの仕事ができる」こと、すなわち“アベレージ”ではないだろうか。

 それはスポーツの世界でも同じだ。その日の気分次第でパフォーマンスに差が生まれ、結果が大きく左右されるようなアスリートは、どんな競技でもトップに登り詰めることはできないだろう。

 なぜそんな話をするかといえば、世界的なゴルフ・インストラクター、デビッド・レッドベターの著書、タイトルにもなっている新理論『Aスウィング』(ゴルフダイジェスト社)のポイントが、そこにあるからだ。

 ゴルフには様々な理論、スウィングアドバイスがあるが、「Aスウィング」のポイントは非常にシンプルだ。スウィング時における細かな手の動きなどの解説はあまりない。どういった体の動きをすれば、スウィングにおけるパワーの源である体の回転運動(ピボット)とクラブの動きがうまくシンクロし、効率よくボールにパワーを伝えられるか、という話である。それができれば自然とスウィングは理想的な動きになるという理論だ。

 なんだそんなこと、と拍子抜けする人もいるだろう。しかし、そんなシンプルなことがうまくできないのがゴルフというスポーツ。レッドベターは本書の中で、ゴルフの難しさを止まっているボールを打つ点だと述べている。野球やテニスなどをしている人間からすれば、動かないボールを打つ方が簡単に見えるかもしれない。しかし、動いているボールは、準備の時間がない分、ほぼ、反射で打たなければならない。それは、練習を重ねて身につけた正しい動きを、余計な考えに惑わされることなく反射的に出して打てるとも言える。「体が覚えている」という動きと言えるかもかもれない。

 翻ってゴルフはどうか? 受け身、すなわち動いているボールに合わせて打つスポーツではない。ボールが止まっている故に、自らの決断でボールを打ちにいかねばならない。止まっているボールを打つまでは十分な時間がある。それは雑念が生じる時間でもある。「練習したよいスウィングをするぞ」という過剰な思いが、手でクラブの動きを加減する動きにつながる皮肉。ある意味、自分のペースで動ける余裕が、スウィングを狂わせるのだ。日常的に練習に取り組めないアマチュア、愛好者であれば余計にそうだろう。

「Aスウィング」はそうした狂いを極力なくす、いや気にせずにすむスウィングである。意識するのはクラブの動かし方ではなく、体全体の動き。それができれば、クラブは勝手に理想的な動きをしてくれる。まさに「体で覚える」がごとく。

おさえたいポイントはココ!(128-129ページより)

 レッドベターはゴルフのスウィングは「リピーティング(再現性)」と「コンシステンシー(安定性)」が大事だと述べている。「Aスウィング」は、「安定してよいスウィングを再現できる」方法を追求した結果、レッドベターがたどりついた「体が理想的なスウィングを覚える」理論なのだ。それはまさに「安定したクオリティの仕事ができる」プロに近づく理論ともいえよう。

 本書では「Aスウィング」をするための体の動かし方のみならず、その体の動きを安定して行うための準備、たとえばアドレスやグリップのコツも図解入りで丁寧に解説されている。室内でも、ボールがなくてもできる「7分間練習プラン」はプロのように時間のない愛好者には最適だ。

 巷に溢れる様々なゴルフの理論、アドバイス、練習法。それに振り回されているようならば、このシンプルな理論を試す価値は大きいだろう。

文=長谷川一秀