『ヒミズ』で大注目の二階堂ふみは、ロリータ少女だった

更新日:2013/6/18

映画『ヒミズ』を観て、ぶっ飛ばされた。スクリーン上の二階堂ふみの存在感は圧倒的だ。過激でピュア。その原点になった本が12歳の時に出会った嶽本野ばらの『鱗姫』(小学館文庫)だった。

「私、野ばら様って呼ぶくらい、好きなんです。当時2000円のおこづかいの中から頑張って『ゴシック&ロリータバイブル』って本を買ったら、野ばら様の詩が載ってて。それで小説も読みたくなって、初めて読んだ野ばら様の小説が『鱗姫』でした」
 
 美しい肌を奇病に脅かされる美貌の乙女・楼子。耽美でグロテスクな世界観にひきこまれた。
「もともと理科室でホルマリン漬けとか眺めてるような子でしたから。私、沖縄出身なんですけど、沖縄にロリータってホントいないんですよ。だからロリータが好きとか、何が好きとか言えなくて。だけど、『鱗姫』を読んだら“自分はこれです”って思うものを貫きたいと思って。そこからはもう、フリッフリの日傘で学校行って、古着をロリータにリメイクして、そういうひとつひとつの作業が自分の中の美学だなあって」

 映画『ヒミズ』(製作・配給/ギャガ 2012年1月14日より公開)では主人公の住田(染谷将太)に思いを寄せる茶沢を体当たりで演じている。
「オーディションの時、思わず泣いちゃったんです。茶沢をやりたい気持ちが大きすぎて」
 
 いつだって想いのほうが先走る、叩きつけるような若さと切なさを、彼女はスクリーンでも体現している。
「リハーサルの時は園監督から4点!って言われたんですよ。だから現場に入る前は本当に怖かったんだけど、入ったら現場が愛で溢れてて、みんなが本気で、すごく楽しくて。なんか私、怒られてたらしいんですけど、怒られてる気が全然しなかった。監督も優しくて……なんて言ったら怒られそうですけどね、優しくなんかねーよって(笑)」

 父親に殴られ、母親に見捨てられ、住田は叫ぶ。「こんな定番の不幸話じゃへこたれねーぞ! オレは必ず立派な大人になるんだ」。容赦ない現実に追い詰められる彼らを園子温はまさに〈今の物語〉として撮りあげた。

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 「クランクインの前に震災があって、園監督の台本がもっと力強いものに変わってたんです。どのせりふも魂がこもってて、すごく好きでした。住田を愛することで、茶沢も普通のちょっと変わった乙女だったのが、女になっていく。あのあと二人がどうなるかなんてわからないけど、観た人を包みこむようなものがそこにはあると思います」
 
ヴェネチア国際映画祭では、染谷将太とともにマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人俳優賞)を受賞。上映会場ではエンドロールが終わった瞬間「スミダ、ガンバレ!」の歓声と拍手が8分間鳴りやまなかった。
「やばかったですね。国も違うし、言葉も違う人たちが観て、感動して、その言葉を発してくれたことに、おおーってなって。ここから何章あるかわからないけど、ここがまた新たな原点になる、第2章がパカーッと開いた感じがして、うれしかった」

(ダ・ヴィンチ1月号「あの人と本の話 二階堂ふみ」より)