絵本で落語入門! 人気落語家たちによる「古典と新作 らくご絵本」シリーズが、立川談春の『夢金』でついに完結!【全10冊を紹介】

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

 当代随一の落語家たちによる噺が絵本化された「古典と新作 らくご絵本」シリーズ(あかね書房)が、2017年2月3日発売の『夢金』で完結した。一作目の『ねっけつ! 怪談部』が出た2015年、ダ・ヴィンチニュースでは作者の林家彦いち師匠にインタビューを敢行、落語と絵本には共通点や親和性があることなどをお話しいただいた。

約2年にわたって出た10冊のシリーズ、タイトルを振り返ってみたい。

『ねっけつ! 怪談部』(林家彦いち:作、加藤休ミ:絵)

世界の辺境を冒険する熱血派、林家彦いち師匠による新作落語。怪談話を語る「怪談部」の新たな顧問となった、「ダメだダメだ!」が口癖の流石(ながれいし)先生。熱血指導で部員たちに怪談話を練習するように言いつけ、ひとり校内を見回りしていると次々に化け物が現れるが、一切ひるまない流石先生は……

『ろじうらの伝説』(柳家喬太郎:作、ハダタカヒト:絵)

新作落語を得意とし、ウルトラマンにも造詣が深い柳家喬太郎師匠による新作落語。たけしの父親の命日に集まった幼馴染の3人。子どもの頃の都市伝説で盛り上がり、地元の路地裏に現れていた「かぜひくなおじさん」の話に。通りすがりに「かぜひくぞ」と言ったあとに消えてしまうおじさんの正体とは……

『ふどうぼう』(林家たい平:文、大畑いくの:絵)

いつも明るく快活な落語で会場を沸かせる林家たい平師匠による古典落語。ある長屋に越してきた芸人の夫ぶどうぼうかえんと妻おたきさん。しかし3年後に夫が客死。おたきさんに惚れていたきちこうは、大家から借金を肩代わりすることで結婚を勧められるが、それを面白く思わない仲間たちがいたずらを仕掛け……

『王子のきつね』(柳家三三:文、原マスミ:絵)

古典落語の名手として人気の柳家三三師匠による古典落語。舞台は江戸の外れ、王子。人を騙そうと化けた母狐だったが、それを見た男が騙されたふりをして逆に罠にハマってしまった。母狐は命からがら逃げ帰ったが、お稲荷さんの使いである狐をひどい目にあわせて祟りがあってはたまらない、と人間たちは……

『りきしの春』(春風亭昇太:作、本秀康:絵)

『笑点』の司会でもおなじみの春風亭昇太師匠による新作落語。力士になりたい小学生、たかのつめ。たくさん食べて四股を踏み、立派な体格に成長したたかのつめは、ちゃんこを食べて授業中は居眠り、相撲言葉を使って移動はすり足と、どんなことも相撲に置き換えてしまう。ついに怒った先生の言葉に……

『ぬけすずめ』(桃月庵白酒:文、nakaban:絵)

正統派古典落語に独自の滑稽さを織り込む語り口で人気の桃月庵白酒師匠による古典落語。小田原の宿に泊まっていた一文無しの絵描きが、宿賃の代わりにと衝立てに描いた5羽のスズメ。次に自分が来るまで絶対に売ってはならない、と言い残した絵からスズメが飛び出したからさあ大変! 宿屋は大繁盛して……

『とのさまと海』(三遊亭白鳥:作、小原秀一:絵)

個性的な新作落語を生み出す三遊亭白鳥師匠による新作落語。下手なのに釣り好きな殿様のため、家来が釣具屋から借りてきた秘伝の竿。実は初代の骨で作られ、その魂を宿したもので、持っている人にはその声が聞こえるという竿だった。小物は相手にせず大物ばかりを狙う殿様のため、竿は大物に目をつけ……

『モモリン』(立川志の輔:作、いぬんこ:絵)

独演会のチケットがなかなか取れない、現代落語界を代表する立川志の輔師匠による新作落語。ゆるキャラコンクールで優勝して、なんとか図書館を建設したいと考える市長。試しに市のゆるキャラ「モモリン」をかぶってみたところ、取れなくなってしまう。大事な来客はあるし、コンクールも始まり大ピンチに……

『だんご屋政談』(春風亭一之輔:著、石井聖岳:絵)

若手No.1真打、春風亭一之輔師匠による新作落語。いたずらばかりするので父親に何も買ってもらえず、ようやく買ってもらっただんごも蜜をすべて舐められてしまったきんぼう。ブチギレして店の蜜壺にそのだんごを突っ込んでしまい、すったもんだの挙句、大岡越前守のお裁きを受けることに。その裁定は……

『夢金』(立川談春:文、寺門孝之:絵)

ドラマ『下町ロケット』での演技も記憶に新しい実力派、立川談春師匠による古典落語。雪の夜、ある船宿に娘を連れた侍がやって来る。船を出せという申し出を受けた船頭のくまこう。欲深いくまこうは小遣いをたくさんもらえるかもしれないと言われて船を出すが、予想だにしなかった緊迫した展開となって……

そして独特のタッチとセンスで描かれた、10の噺の世界を描き出す絵にも注目。ちなみに『ろじうらの伝説』の柳家喬太郎師匠は、オチの絵を見てその仕上がりのあまりの素晴らしさに、自分の作品なのに感動してしまったそうだ。

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お子さんはもちろん、大人もグッとくる「古典と新作 らくご絵本」シリーズは、第1期の5冊(『ねっけつ! 怪談部』~『りきしの春』)と、第2期の5冊(『ぬけすずめ』~『夢金』)がセットになったボックスもあるので、プレゼントにも最適。落語の奥深い味わいを絵本で気軽に楽しんでもらえたら、「落語は難しくない、楽しい!」と感じていただけることうけあいだ。

文=成田全(ナリタタモツ)

■『ねっけつ! 怪談部』林家彦いち師匠のインタビューはこちら
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