『ONE PIECE』84巻 サンジの壮絶な過去が明らかに!

マンガ

更新日:2017/2/28


『ONE PIECE』84巻(尾田栄一郎/集英社)

 サンジ奪還のため、ビックマムが治める「トットランド」に乗り込んだルフィ一行。しかし「四皇」一味の実力に苦戦し、サンジどころかビックマムにすら会うことができず、苦戦を強いられている。ビックマムに捕らえられてから、あまりに不憫なサンジ。ところが『ONE PIECE 84』(尾田栄一郎/集英社)では、さらに壮絶なサンジの過去が描かれていた――。

 サンジの父親であり、「ジェルマ王国」国王であり、「ジェルマ66」総帥であるヴィンスモーク・ジャッジは、最高傑作を作り上げた。レイジュと、イチジをはじめとする4つ子兄弟の、5人の子どもたちだ。研究の粋を集めた科学の力によって、血統因子を操作し、人間の力を超えた存在として生まれたのがこの5人。しかし、日に日にある変化が起き始める。イチジ、ニジ、ヨンジは順調に成長。幼少期にして成人男性並みの発育をみせる超人ぶりを発揮していた。ところがサンジだけは一向に育たない。血統因子を操作したものの、サンジだけは人間のままだったのだ。

 人間のままのサンジは兄弟からいじめられた。殴られ続けた。そしてジャッジからは、さらなる仕打ちを受ける。ジャッジはサンジを「将来性0」であると確信し、「何という無駄な存在」と言い捨てる。サンジを“生まれなかったことにしたい”と、地下牢に幽閉してしまうのだ。閉じ込められたサンジは泣き叫んだ。

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 「出して…くだざい お父さん!!! ごめんなざい…!!! よわく生まれでごめんなざい…!!! 助けて!!! お父さん助けて!!! おどうさーん!!!」

 国土を持たない「ジェルマ王国」は、ついに「東の海(イーストブルー)」へやってくる。戦争をするためだ。閉じ込められていたサンジは決断する。「コックになりたい」。サンジはレイジュに言った。「イーストブルーでにげだせば…!!! もう二度とお父さんのかお…!!! 見なくてすむよね!!!」。泣きながら訴えるサンジにレイジュも涙を流した。そしてレイジュは牢の檻を壊した。レイジュも血統因子を操作されていたが、彼女には感情があったのだ。逃げるサンジ。しかし、ジャッジに見つかってしまう。怯えるサンジにジャッジが放った言葉は…「助かるよ」だった…。

 84巻を読むと、これまでのサンジの言葉をふと思い出す。麦わらの一味に入って様々な場面で残してきたサンジの言葉だ。

6巻で、ゾロとミホークの決闘を見て「簡単だろ! 野望を捨てるくらい!」と思わず叫んだサンジ。
7巻で、ゼフが全財産をかけて建てた海上レストランバラティエを守るため、死のうとしたサンジ。
19巻で、クロコダイルに「Mr.プリンス」と名乗ったサンジ。
42巻で、CP9カリファに敗北し、ナミに「…たとえ死んでもおれは、女は蹴らん…!」と言い切ったサンジ。

 このときサンジは何を思っていたのだろう。25巻で仲間に初めて「北の海(ノースブルー)」生まれであることを告白したサンジ。「育ちはな。まァどうでもいいさ」と笑顔で話しているが、その胸中では何を思っていたのだろうか。

 84巻を読む限り、「ビックマム編」はこれからが本番だろう。相手はあの「四皇」と「ジェルマ66」。今まで奇跡を起こし続けてきた「麦わら海賊団」だったが、果たして今回も奇跡を起こせるのだろうか。ルフィはサンジを助けだすことができるのだろうか。

文=いのうえゆきひろ