人工知能が「同僚」となる未来で私たちに求められるものとは?

社会

2017/2/14

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    『AIが同僚』(日経トップリーダー、日経ビッグデータ:編/日経BP社)

 人工知能(AI=Artificial Intelligence)の活用が本格化し、注目を集めている。昨年、日本で開発中の人工知能「DeepZenGo」が、トッププロ棋士に勝ち星を挙げたュースを耳にした時には、驚き感動しつつも、「人工知能が人間を超える日も近いのかもしれない…」と少し不安にもなった。実際に人工知能の進歩は目覚ましく、ビジネスや医療など様々な分野での活用・実用化が進められている。

 そうなると、「人工知能に仕事が奪われてしまうのでは?」という懸念が生じるのは当然だろう。このトピックを扱う記事や書籍を見かけることは多い。しかし、不安を抱きながらも、人工知能がどのように活用されているのか、実はよく分かっていないような気がする。そして、この分からなさこそが、私たちの感じる不安の原因ではないだろうか。

 そこで、オススメしたいのが『AIが同僚』(日経トップリーダー、日経ビッグデータ:編/日経BP社)だ。本書では、人工知能は私たちのライバルではなく、心強い同僚となり得ると指摘。そのために私たちに求められるものや、職場における人工知能の実用化の具体例などが紹介されている。

■人工知能の実用化例

〈アスクル〉

 2014年9月、アスクルは個人向けインターネット通販サービスのロハコにおいて、顧客からの問い合わせ対応に、人工知能を使ったチャットボット「マナミさん」を導入した。こうすることで、サービスデスクの受付時間外でも問い合わせに対応できるようになり、導入から約2年後には、顧客からの問い合わせ全体の約4割をマナミさんが対応するようになったそう。実際に試してみたところ、ロハコのトップページからマナミさんへの問い合わせが可能になっていた。質問を入力(または選択肢から選択)すると、内容を絞り込むためにマナミさんからいくつか質問され、最終的に回答が示される。それでも解決しない場合は、「お問い合わせフォーム」への入力を促されるようになっていた。基本的な質問であれば十分に対応できそうだし、FAQの一覧から探すよりも手間が省けて便利だと感じた。

〈ハウステンボス〉

 長崎県にある巨大テーマパークのハウステンボス。この場所で、ロボット16種類182台が稼働していることをご存じだろうか? 2015年7月にオープンした新型宿泊施設「変なホテル」で、ロボットが働いているそうだ。ホテルに向かう途中では芝刈りロボットが作業をし、ロビーではピアノの演奏や館内の案内をするロボットが宿泊者を出迎える。宿泊客は、ロボットの音声案内に従ってチェックインを行い、カードキーを受け取る。荷物を一緒に運んでくれるロボットも使用可能で、カードキーに自分の顔を登録すると、顔認証でドアを解錠できるようになるとか。まるでSF映画のような光景だが、これは現実なのだ。

 人工知能は、他にも様々な場面で活用され始めているが、決して万能ではない。そして、与えられた問題を解くことは得意だが、解くべき価値のある問題を見つけることはできない、と本書では強調されている。そのため、何を人工知能に任せるのか、人間が優れた部分はどこなのか、業務においての見直しが必要になる。そのうえで、人工知能という「同僚」との協業がうまくいけば、深刻な問題となりつつある人材不足を解消しながら、業務のパフォーマンスを向上させることだって可能になるのだ。

「人工知能に興味はあるけれど、よく分からない」という方には、ぜひ手にとっていただきたい一冊。説明も分かりやすく、具体例も豊富なので、ITに精通していなくても参考になりそうだ。

文=松澤友子