『深イイ話』でも大反響! 社会部22年、初の女性警視庁キャップ。下川キャスターの報道人生とは?

ビジネス

2017/2/15

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    『テレビ報道記者』(下川美奈/ワック)

 先日、日本テレビの『深イイ話』に、キャスターの下川美奈(しもかわ・みな)さんが取り上げられていた。ぐでんぐでんに酔った姿なども放送されていて、かなりバラエティ寄りな見せ方をされていたが、日本テレビの社会部デスクとキャスターを兼ねる下川さんの日常は、かなりの激務。常に二つ以上のことを同時進行させ、テレビ番組で読むニュースの原稿も生放送の直前に変更になったりと、ものすごく忙しそうだった。

 けれど、その様子は「ブラック」「絶対自分には無理」というネガティブな感情ではなく、とてもポジティブな気持ちを与えてくれた。下川さんがすごく輝いて見えて、バリバリ働いている女性、カッコイイ! という爽快な気持ちにさせてくれたのだ。

 この番組がきっかけで、『テレビ報道記者』(下川美奈/ワック)を読んでみた。

 本書は、下川さんが自らペンをとり、報道人生を綴った一冊。新卒で日本テレビに入社し、警視庁クラブ、国税記者クラブ、ニュース番組のディレクターなどを務めて、社会部デスク兼キャスターとして活躍している現在に至るまでの、下川さんの半生が詰まっている。

『深イイ話』を見た時も思ったが、私はずっと、下川さんのことをアナウンサーだと思っていた。情報番組の中でニュースを読み上げる姿が印象的だったので、「タレント寄りではなく、ニュースを担当する真面目なタイプのアナウンサーなのか?」と勘違いしていた。

 本書によると、私と同じように下川さんをアナウンサーだと思っている視聴者も多いようで、以前、ニュースの中で「三階(さんがい)」を「さんかい」と読んでしまった際には、「あのアナウンサーは正しい日本語を知らないのか」といったような苦情をもらったこともあるとか。

 元々、政治に興味があり、政治部の記者になりたかったという下川さん。だが、新人の頃から関わってきたのは事件や時事ネタなどを幅広く扱う社会部。「警視庁クラブ担当」と内示が出た時は、「警視庁なんて絶対嫌だ」と号泣してしまったそう。

 のちに社会部の「遊軍」(現在は機動班)になった時、2000年に開催されたシドニー・オリンピックでのエピソードも載っている。行きの飛行機で風邪を引き、シドニーでは38度の熱に苦しみながら取材をした。その時に同行した先輩女性記者が「きつかった」こともあり、「私の中で一番辛かった経験の一つ」だという。

 下川さんは女子マラソンで金メダルを取った高橋尚子さんの監督、小出(こいで)氏の番をやっていたそうだが、沿道で高橋選手を一緒に待っている際、小出監督はすごくお酒臭く、「この監督で大丈夫かな」と正直思ったそうだ。

 しかし、高橋選手が走って来ると、小出監督も併走し始める。それがめちゃくちゃ速くて、番記者は誰もついて行けない。「やっぱり監督だ」と、当然のことながらも、驚いたとか。

 また、下川さんが入社した頃のビッグトピックが「オウム」だったため、オウム真理教に関わる様々な事件について、当時の報道がどのように動いていたか。さらに、2008年に起こった「秋葉原無差別殺傷事件」における「誤報」問題について、「報道規制」をはじめとする報道と事件の関わり方などにも言及されている。

 事件を通し、当時のことを思い出しながら、「テレビ局はこんなことを考えて、日々スクープを挙げているのか」ということも分かるし、「警察」と「報道記者」の関わり方も、うかがい知ることができる。

 さらに、働く上での「女性と男性の違い」といった仕事論にも触れられていた。「女性を売り物にするつもりがなくても、男性が多い中にあっては、女性ということだけで目立ちます」。男と女は平等だが、「違うところがある」と認識した方が楽だし、便利。自分のためにプラスになる、とのこと。

 男性社会の中でたくましく、カッコよく生きてきた下川さんの言葉には重みがあった。これは報道記者だけではなく、男性社会の業種で働く女性全般に言えることではないだろうか。

 下川さんの経験や失敗談、知られざる報道の世界が詰まった、彼女にしか書けなかった本書。『深イイ話』で、どうして下川さんが輝いて見えたか、分かった気がした。

文=雨野裾