続々オープン予定の大型テーマパーク、成功のヒントは「USJ」にあり

業界・企業

公開日:2017/2/21


久々となる大型のテーマパークオープン、その要因は大阪のテーマパークにあり

 約10年ぶりぐらいではないでしょうか? いわゆる大型のテーマパークが新たにオープンするのは。2017年4月1日「レゴランド®ジャパン」が愛知県名古屋市に、ムーミンと北欧のテーマパーク「メッツァ」が2018年秋「メッツァビレッジ」、2019年春「ムーミンバレーパーク」と相次いで埼玉県飯能市に誕生予定なのです。規模が大きいテーマパークとしては2006年に登場した「キッザニア東京」以来といっていいと思います。

ムーミンと北欧のテーマパーク「メッツァ」イメージ©MoominCharactersTM

 それにしても、このレゴランドやムーミンのテーマパークにせよ、現在、日本で人気を二分するテーマパーク、東京ディズニーリゾートとユニバーサル・スタジオ・ジャパンにせよ、いずれも海外で誕生し、すでに成功したものが日本にやって来たというパターンです。これは、表参道や銀座などに“日本初上陸”の売り文句とともに出店されたスイーツやハンバーガーなどの店が話題となり、すぐに行列ができる近年の現象と、どこか類似している気はします。つまり、日本人は“海外からやって来る”ものが大好きなんですね。

 ただ、それだけでもないんです。10年くらい新しいテーマパークができなかったのに、2017~2019年にかけて次々とオープンする要因は、ここ5年くらいのユニバーサル・スタジオ・ジャパンの画期的ともいえるブレイクが大きな要因となっているのです。

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日本の遊園地・テーマパークの歴史-その1 東京ディズニーランドの衝撃

 1960~1970年代、日本において、家族やカップルの遊びの定番といえば「遊園地」でした。現在も人気の高い「富士急ハイランド」「ナガシマスパーランド」「よみうりランド」などの遊園地が開業したのは1960年代。乗り物を楽しむ遊園地が全盛だった時代です。そして1983年、遊園地業界に大革命が起こります。「東京ディズニーランド」の開園です。その“夢と魔法の王国”のアトラクション、ショー、パフォーマンス、そしてサービスといった、全コンテンツのレベルの高さに、日本の遊園地は衝撃を受けることになったのです。

 ちなみに、いまは当たり前に使われている“テーマパーク”という言葉は「東京ディズニーランド」が開園したとき誕生したものです。テーマパークの定義は“あるテーマを持ってつくられたパーク”で“乗り物より見る・体験するなどのショー・アトラクションが中心”といったところでしょうか。さて、この大テーマパークに日本の遊園地は絶叫マシンや世界一のアトラクションといった“乗り物”で対抗していきます。これはある意味“乗り物をテーマとしたテーマパーク”ともいえる遊園地においては、王道の対抗策だったと思います。しかし、今度は時代が遊園地を取り残してゆくのです。

 

日本の遊園地・テーマパークの歴史-その2 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの躍進

 最先端の情報社会と化していく1990年代から2000年代、日本の家族や若者の遊びは多様化していきます。遊園地やテーマパークだけでなく、パソコンやゲームなど、それぞれの趣味趣向で、もはや「初めてのデートといえば遊園地」という時代ではなくなってきたのです。2000年代、遊園地は冬の時代でした。2002年「向ヶ丘遊園」「横浜ドリームランド」、2003年「宝塚ファミリーランド」、2006年「神戸ポートピアランド」「奈良ドリームランド」と、それなりの規模と人気もあった遊園地が次々と閉園していったのです。

 そんな中「東京ディズニーランド」は絶好調。2003年には「東京ディズニーシー」も誕生し、2パークを含めた周辺エリアを「東京ディズニーリゾート」と名付け、多数のホテルや商業施設なども増え、まさに“一人勝ち”状態が数年前まで続いていました。

「東京ディズニーシー」オープンと同じ年に大阪に誕生した「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」は、オープン時、話題になりましたが、最初の数年は入場者数も伸びず、正直「失敗だったか……」と囁かれ始めていました。しかし2010年代に入った頃から、大規模な屋外コースターを導入したり、ファミリーエリアを新設したりとリニューアルが続き、入場者数も上昇傾向へ。そして2014年に誕生したハリー・ポッターをテーマとしたエリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」の大ヒットもあり、現在では「東京ディズニーリゾート」とともに、2大テーマパークと呼ばれる存在にまで躍進したのです。

 このユニバーサル・スタジオ・ジャパンのブレイクにより、冬の時代、一人勝ちの時代を乗り越えたテーマパーク・遊園地業界は、元気と活気を取り戻しました。これが「レゴランド®ジャパン」「メッツァ」がオープンできる環境になった要因がユニバーサル・スタジオ・ジャパンにある、という所以なのです。

 

“テーマ”をいったん離れる勇気とそれでも“テーマ”を忘れないこだわり

 そして、今後のテーマパークが成功していくためのヒントも、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン躍進にある気がします。コースター導入やファミリーエリア新設は、ある意味“映画テーマパーク”であることを離れ「ウリとなる屋外コースターがほしい」「ファミリー層が遊べるエリアがほしい」という、来園する人の要望に応えた結果といえます。つまり、いったんテーマへのこだわりを捨て、世の中のニーズを取ったわけです。

 ただし、ここで重要なのは“いったん”という部分。ニーズに応えるのはいいことですがテーマを忘れてしまうと、いったいココは何のテーマパークなのかがブレてしまい、長いスパンで見ると致命傷になりかねないのです。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、ニーズに応えながら、本来のテーマど真ん中である、映画『ハリー・ポッター』シリーズの、こだわりにこだわり抜いたテーマエリアを完成させたのです。これが「さすが映画のテーマパーク」という評価になり、パークに対する信頼度が増していったのではないでしょうか。

 これからオープンする「レゴランド®ジャパン」「メッツァ」。どちらも“テーマ”ははっきりしていますし、キャラクターも人気があり、ヒットの可能性は十分あります(特に、個人的にメッツァには大きな期待をしています)。“テーマ”にこだわることはテーマパークの大事な部分です。ただ、こだわり過ぎて世の中のニーズを軽視すると、人はパークに来てくれなくなります。みんなが行きたいと思う「こだわりの」「来園者の声を忘れない」素敵なテーマパークになることを願っています。

文=citrus TVチャンピオン4代目遊園地王・佐々木隆