ファンにはたまらない! 30年間愛され続けてきた『聖闘士星矢』の記念原画集! 単行本未収録である秘蔵のカラー原画も多数収録!

マンガ

公開日:2017/2/22

 私事になるが当方、漫画家・車田正美先生の大ファンである。信者、といってもいい。私が車田漫画に初めて出会ったのは『リングにかけろ(現『リングにかけろ1』)』であるが、これはファン層の最初期にあたるだろう。先生には数多くのヒット作があり、時期によって出会いの作品は異なるのだろうが、それでもおそらく最もファンを獲得したタイトルは『聖闘士星矢』であろうと思われる。

 この作品は車田漫画で初めてアニメ化され、大ヒットとなった。しかし私が本当にスゴイと思ったのは、コミックの第1巻を読んだときである。実は第1巻の発売前からすでにアニメ化が決まっており、それも十分スゴイが、本当にスゴイのはカバーの折り返しに書かれたコメント文である。曰く「最初からメジャー路線をねらってはじめたものです」と。つまり先生は、この大ヒット作を「狙って」生み出したということだ。そしてこの流れには布石がある。『星矢』の連載が始まったのは1985年末なのだが、実は1985年初頭に、ある漫画が終了した。それが『男坂』だ。この作品が半年ほどで「未完」(いわゆる打ち切り)となっており、そのリベンジの想いが強く込められた「メジャー路線」狙いなのである。ちなみに『男坂』だが、なんと連載終了から30年ぶりに『週プレNEWS』というサイトで連載が不定期で再開。熱い車田ファンはどこにでもいるのだと改めて思い知った次第だ。

 話が逸れたが、そういう経緯で描かれた『星矢』であるから、その人気も当然ロングランとなる。作品生誕30周年を迎えた2016年でも、他作者によるスピンオフ作品だけでなく、先生自らによる正当なる続編『NEXT DIMENSION冥王神話』も『週刊少年チャンピオン』で不定期連載されている。そしてその30周年を記念して刊行されたのが『聖闘士星矢30周年記念画集 聖域-SANCTUARY-』(車田プロダクション:監修/宝島社)だ。

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 原作版の画集としては以前、集英社より発行された『宙(SORA)』があり、カラー原画はそちらにも多く掲載されているが、本書で注目すべきは別にある。それは1色モノクロで掲載されている「単行本未収録原画」だ。

『週刊少年ジャンプ』本誌で連載を読み、さらにコミックも購入する熱心なファンならばご存じだろうが、連載時に掲載されていたページが、コミック収録時に削られている場合がある。左右のページを調整したり、話の流れを円滑にするなどさまざまな理由があるが、車田先生の作品は結構それが多い。理由は見開きなどの大ゴマを使って次週の引きにするため、ページ調整でオチやすいのである。ただ大ゴマとなれば作家も気合を入れて描くため、未掲載となるには非常に惜しいクオリティだ。そういう原画をこの画集では多数収録している。ファンにとっては大変嬉しいところではなかろうか。

 また本書では先述した『NEXT DIMENSION冥王神話』で描かれたカラー原画も掲載されている。連載中の本編はフルカラーで製作されており、原画はすべてデジタル着色。当然ながら『週刊少年ジャンプ』連載当時はデジタル技術は発達しておらず、着色は手作業だった。画集ではデジタルとアナログ、両方の原画を手軽に見比べることができるので、その違いを感じてみるのもオススメだ。

 現在も車田先生は『男坂』と『NEXT DIMENSION冥王神話』の執筆で多忙な毎日である。さらに以前のインタビューでは「新作を含め描きたいものがたくさんある」という主旨のことを語っていた。つまり今後も車田漫画が描かれ続けることは確実であり、新作を待つ楽しみを味わえることは、ファンにとってこの上ない喜びであるに違いない。

文=木谷誠